2025.07.10

ドイツ語海外実習のレポートが届きました

言葉を超えた多くの学び 益邑 ノアさん

私は、2025年2月末から約一ヶ月間ドイツのライプチヒにある語学学校での海外実習に参加しました。平日の午前は毎日ドイツ語の授業があり、最初はまだ習っていない文法や知らない単語に戸惑いましたが、先生方がいつも丁寧にサポートしてくださり、安心して学びに集中することができました。

週末にはさまざまな場所に足を運びました。
サッカーの試合をRed Bull Arenaに観に行きました。ドイツ人のサッカーに対する情熱は私の想像をはるかに超えていました。ビール片手に声援を送り、旗を振る姿が、スタジアム全体を熱気で包んでいました。
まるでお祭りのような雰囲気の中で、サッカーが人々の生活に根付いていることを肌で感じました。

試合の様子

また、美術館や博物館、教会、宮殿も訪れました。
特にポツダムにあるサンスーシ宮殿に一際心惹かれました。私の好きなドラマのロケ地ということもあり、訪れる前から楽しみにしていた場所の1つです。繊細で華やかな装飾に時間がたつのも忘れるくらい魅了されました。
BMW博物館では、さまざまな車種やバイクの展示を見学し、エンジンの仕組みを理解することによって、エンジン開発の技術とBMW発展の歴史にも触れることができました。日本とも共通する、ものづくりの奥深さがありました。

サンスーシ宮殿
BMW博物館

ドレスデンの聖母教会は、美しいバロック建築が印象的でした。第二次世界大戦で一度崩壊しながらも、市民の寄付によって再建されたという背景を知り、その姿にはただの美しさ以上の意味が込められているように感じました。
ミュンヘンのレジデンツは建物全体に漂う上品さと豪華な装飾がすばらしかったです。歴史的な空間を歩きながら、当時の暮らしがどのようであったか想像しました。
ベルリン大聖堂では、壮麗な建築に言葉を失いました。内部の装飾も美しく、階段を上って上部まで行くと、ベルリンの街を一望できる眺めが広がっていました。ちょうど夕暮れ時で、街を照らすやわらかな光に包まれながら、しばらくその景色を眺めていました。

聖母教会
レジデンツ

訪れた場所それぞれに異なる魅力がありましたが、今でもよく思い出されるのはライプチヒの街並みです。
どこか素朴だけれど、活気にもあふれ、歴史を感じさせるライプチヒの街は歩いているだけでも多くの事に気づかされました。

ライプチヒのVölkerschlachtdenkmal(戦争記念碑)を訪れたときは、その大きさと重厚さに圧倒されました。高くそびえる石づくりの建造物は、ただの観光スポットではなく、この地が経験してきた戦争の歴史を厳かに語りかけてくるようでした。忘れてはならないものがここにあると感じました。
ある教会では、窓の柵に花が差し込まれていたり、壁際にたくさんの花束やロウソクが置かれていたり、平和への人々の祈りが込められているようでした。
また、ライプチヒはバッハ、ワーグナーなどの偉大な音楽家と深いつながりのある場所です。彼らがこの地で過ごしたのだと思うと、もっと音楽に耳を傾けてみたくなりました。
ドイツの文化や歴史に直接触れることで、教室では学べない生きた学びを得ることができました。

差し込まれた花
Panorama Tower から見たライプチヒの街並み

さらに、現地では思いがけない出会いがいくつもありました。

少し気分が落ち込んでいたある日、学校近くのレストランに行きました。
地元の人が通うような、落ち着いた雰囲気のある小さな店で、とても優しいオーナーがいました。私の話に耳を傾け、「何かあったらいつでも言って」と連絡先とチョコレートを渡してくれました。
このことは、今でも心に残る温かい思い出です。

電車で隣になった初老のペーターさんとは、偶然同じ目的地だったことから会話が始まりました。
最初はドイツ語が全く聞き取れず焦りましたが、彼はずっと優しくドイツ語を教えてくれました。私の発音を丁寧に直してくれたり、列車のアナウンスが何を言っているのかを教えてくれたり、乗り換えも一緒に確認してくれました。私が話すことに戸惑っていると、「大丈夫だから自信をもって、もっと話して」と励ましてくれました。そして気がついた時には、自分から話すようになっていました。
ぎこちない会話になることを覚悟していましたが、思いのほか自然にやり取りができ、自信に繋がりました。

日々のルーティーンの中でも心に残る出来事がありました。
朝食を買いに通っていたパン屋で、つたないながらもドイツ語で話そうと頑張っていました。店員のお姉さんが笑顔で「また明日ね」とドイツ語で言ってくれた時は、自分がこの町に馴染めた気がして、とても嬉しく感じました。

ライプチヒ大学で日本語を学んでいる学生と友達になることもできました。
言語や文化の違いに戸惑う中で、彼らは相談に乗ってくれたり、生活面でも支えてくれたりと、とても心強い存在でした。日本とドイツの食や将来の事について話したり、ミニゲームをしたり、楽しい時間を過ごすことができました。
私にとってとても大きかったのは、レニーとの出会いです。彼の日本語のレベルの高さに驚きました。そして、自分もこんなふうに話せるようになりたいと強く思いました。今度は私が彼を驚かせられるくらいに成長したいです。彼は事あるごとに「大丈夫?」と声をかけてくれました。どれほどその優しさに支えられていたか分かりません。

多くの人の支えがあったおかげで、最初は不安で胸がドキドキしていた私も、最後には「まだ帰りたくない」と思うほど、ライプチヒでの日々がかけがえのないものとなっていました。

この実習を通して、私はドイツ語の知識を深めるだけでなく、「挑戦してみること」の大切さや、「人とのつながりの温かさ」を改めて実感することができました。うまく話せなくても、相手の目を見て伝えようとすること、勇気を出して一言声をかけること、そのような小さな一歩が、思いがけない出会いや人々の優しさにつながっていました。

また、思うようにコミュニケーションが取れず悔しい思いをすることが何度もあったので、ドイツ語をもっと話せるようになりたいという気持ちがより一層強くなりました。今回感じた悔しさをバネに毎日ドイツ語の勉強に励み、一歩一歩上達していきたいです。そして、さらに成長してドイツにもう一度留学し、もっと深くドイツの文化や人々と向き合いながら、新たな学びを重ねていきたいです。