2025年1月8日(水)に「数理科学科 学生向け談話会」を開催しました。
今回は今野 紀雄 氏(横浜国立大学名誉教授、立命館大学客員教授)を招き、「眺望絶景:量子ウォーク、そしてゼータ」というタイトルで講演いただきました。量子ウォークとは古典的なランダムウォークの量子版として2000年頃より本格的に研究が始まった比較的新しい対象で、現在では理論的側面のみならず量子ウォークの強相関電子系やトポロジカル絶縁体等への応用も研究されるなど、自然科学において大きく注目されている分野です。
講演はご自身の自己紹介から始まり、古典的な確率論に関するいくつかの話題を簡単な例を交えつつ復習がありました。続いて量子ウォークの発展の歴史に関する年表を示し、その発展の中で明らかになった量子ウォークの著しい性質である「線形的拡散性」と「局在化」について丁寧な説明がありました。
講演の後半では、ご自身が近年力を注いで研究している、量子ウォークの時間発展行列から定まるゼータ関数とその周辺についての解説がありました。終盤ではゼータ関数とランダムウォークの固有値との関係やそれに基づくリーマン予想の類似等にも広がり、今野先生が抱く壮大な夢について思う存分お話しいただきました。今回の談話会は対面で開催しましたが、大勢の学生、教員の参加があり盛況のうちに終了しました。今回の談話会により学生のさらなる学習、研究意欲の向上につながれば嬉しく思います。
談話会は、学内教員や研究実績のある研究者を招聘して定期的に講演会を行うことで、理学の最先端の研究内容に触れ、研究意欲の促進、教育・研究の質的向上を図ることを目的として実施しています。参加は教員だけでなく、学部生、大学院生、その他一般の方々も可能です。