設置の趣旨等(抜粋)

教育研究上の理念、目的

本学の建学の精神は「将来の社会を担って立つ人材の育成」にある。経済学研究科においても、経済学の立場から経済現象に関する理論および応用を教授研究し、もって高度な研究能力と専門職業人としての広い視野と深い学識を有する人材を育成することを目標としている。経済社会の急速な変化と多様性の進展にともない、大学を卒業した社会人も生涯学習の一環としてより高次な教育・研究の場で自己研鑽する必要性が高まっている。このため社会のさまざまな分野で活躍し、問題意識を明確に持った社会人が、働きながら研究をさらに積む場として、通信制大学院開設の要望は大きくなっている。今回の経済学研究科(通信教育課程)経済学専攻修士課程設立計画はこうした社会の動きに対応しようとするもので、このことは現実の経済問題と大学での研究を関連付ける産学連携の一つの形でもあり、有為の人材を社会に還元することにつながり、本学の建学の精神を具現化する目標に合致した取り組みである。

今次計画の経済学研究科(通信教育課程)では、社会人を対象として、通信教育を通じて、現在の経済社会における諸問題を経済理論と実証分析の両面から教授研究し、高度な判断力と実践力を涵養しようとするものである。そのため社会人の研究ニーズに合致した重要テーマとして、中小企業・農業・労働の各分野と環境問題、さらには財政・金融と公共経済、そして国際分野における交易・金融と経済体制をはじめとした様々な課題をとりあげ、これらを分析・研究する経済学関連科目を中心にカリキュラムを編成する。経済学は現実と理論を結びつける学問であり、上記分野に関連した中小企業論・農業政策・労働経済学・環境経済学・経済政策論・財政論・公共経済学・金融論・金融計量分析・国際経済論・国際金融論・経済体制論等の各講義科目およびこれらをグループ化した研究分野別演習科目は、現在の経済が内包する主要な課題を考察するための最適な手法を提供してくれるとともに、これら科目間の相互学修・理解により経済社会の動きを体系的に把握・分析することの出来る分野である。さらにこうした研究科目は、ペーパー上の理論展開をベースに情報通信技術を利用した質疑応答で指導教育を行なうことにより、社会での課題解決に貢献しうる論理構成力と分析力を養成し、実践力を身につけることができるなど、通信教育に適した領域である。通信教育はまた、時間と空間を越えていつでも・どこでも・マイペースで学ぶことが出来る生涯学習の長所を有しており、現場の第一線で活躍する多忙な社会人の再教育にマッチした教育方法でもある。こうした現実経済と密接に関連した分野で、通信制教育方法を通じて社会人を再教育することにより、受講者の個人的能力が向上するに留まらず、その効果は広く経済活動の場に還元され、経済社会の発展に寄与すると共に学問の進歩に貢献することが期待される。

教育課程の編成の考え方及び特色

本研究科では、経済社会で活躍しながら解決すべき課題を持ち、そのための研究を目指す社会人を対象としている。このため、教育研究の中心は現在の経済社会における諸課題を解決するための教育課程を編成することにあり、経済政策およびその関連分野の科目を中心とした構成とする。本学の経済学部では、2020年度から「現代経済」「ビジネス経済」「地域経済」「グローバル経済」の4つのコースを展開するが、今次経済学研究科(通信教育課程)設立計画では、通信教育課程の特性に配慮しつつ教育目標を達成するため、履修モデルの中から現実の経済を分析研究するのに適した経済政策関連科目を中心に横断的に採り上げ、理論展開と政策効果の実証分析についてさらに高度でかつ体系的に研究できる教育課程を編成する。具体的には現在の経済社会問題の中から、中小企業・農業・労働・環境・財政・公共経済・金融・国際経済・国際金融・経済体制の分野を中心に網羅的にカリキュラムを編成し、理論的検討とともに実証分析を目的とした通信制による教育課程を開設する。教授研究科目の構成としては、分野別に経済政策、財政・金融および国際経済の学科目にグループ化し、それぞれ授業科目を配置する。すなわち経済政策関連テーマの下に中小企業論・農業政策・労働経済学・環境経済学とこれらを総合する意味での経済政策論等を、財政・金融関連テーマの下に財政論・公共経済学・金融論と金融計量分析等、国際経済関連テーマの下に国際経済論・国際金融論・経済体制論等それぞれ開講し、これら科目を中心とした講義と演習から授業は構成される。さらに学習の効率性を高めるために理論経済学基礎共通科目として、ミクロ経済学基礎およびマクロ経済学基礎の2科目を開講して、導入教育支援を行なう。

学生は、各自の研究課題テーマに合致した分野の教員の演習科目を入学時に一つ選択し、2年間にわたって同一教員から一貫して体系的指導を受けるとともに、この演習科目に合致した講義2科目(特論A・B)を1年次に受講し、基礎を固める。以上の演習・講義科目を必修科目として中心に位置づけ、他の教員の関連する分野の講義科目を選択履修し、これらを有機的に組み合わせ学修することにより、自己完結的に通信教育課程研究科における広い意味での「経済政策」関連の研究目的を達成することができるよう、最適に編成されている。

養成する人材像

本研究科は、社会人(大学卒業後、社会において2年以上の勤務経験を有する者)を対象として、現実の経済活動から得られた問題意識を中心に、通信教育による経済政策およびその関連分野の教授研究を通じて学識を広め・分析力を高めて、課題を解決することにより経済社会の発展に貢献しうる有為の人材を養成することを目的とする。

受講生のほとんどは社会の第一線で働きながら課題をかかえて学びかつ成長・発展を目指す社会人であり、たまたま現状で就業していない場合であっても、これまでの社会での経験を生かして問題意識を深めてスキルアップを計り、生涯学習の一環として生きがいを見出し、学習効果を再び社会に還元しようとする者である。本学の課程を修了した後は、鋭い問題意識と高い経済分析・的確な判断能力を備えて就業による経済活動と社会貢献を目指し、引き続き社会で活躍することが期待される人材であり、こうした意識と意欲の高い社会人を対象として経済学研究科(通信教育課程)において再教育を行なう。

経済社会においては全ての行為が構成員間の経済関係に影響を与え、この意味で経済学が教授研究対象とし、かつその成果を現実社会で活用できる範囲は広く深い。本通信教育課程研究科では、狭義の経済政策分野である中小企業論・農業政策・労働経済学・環境経済学等これらを総合する意味での経済政策論をはじめ、財政・金融分野である財政論・公共経済学・金融論と金融計量分析、さらには国際経済分野である国際経済論・国際金融論・経済体制論など、現実の経済問題と密接な関連を有すると同時に研究成果を実社会に還元することに効果的な科目を中心として、広い意味での「経済政策」関連のカリキュラムが構成される。これら科目の基礎分野は学部授業としても開講されているが、教科書と板書による学部レベルでの一方的受講にとどまることなく、研究科において専任教員とさらに高度な問題意識を共有しつつ一対一での密接な双方向通信を利用した指導教育により、受講生の問題意識に応え、経済分析・政策対応能力を向上させることが出来る分野である。

しかし経済社会で活躍している人の中には、必ずしも大学で経済学を学んだ経験を有しない場合もある。本計画の経済学研究科(通信教育課程)は、経済学研究者を専門的に養成するのではなく、生涯学習の一環としてあるいは企業内の再教育・研修等リカレント教育に代わるものとして、専門性を一層向上させ高度な学識と的確な総合判断力を持って経済活動の現場での課題解決に生かすことのできる職業人の育成に重点を置いている。このため経済学部出身者だけを対象とするのではなく、導入教育支援を充実することにより広く門戸を開放し、大学院での経済学を通じた再教育により経済分析能力を向上させ、社会人としての実体験とノウハウを生かして、経済社会の発展に寄与する専門的職業人としての人材を養成することを目的としている。

自己点検・評価

経済学研究科(通信教育課程)の教育水準を維持し、有為な社会人を育成し、教育成果を社会に還元するためにも、自らその研究教育等について点検し、評価を行っていく。自己点検・評価および第三者評価については大学院学則第1条の2に基づいて、既存の通学制大学院研究科と同様、自己点検・評価を行なう。すなわち経済学研究科(通信教育課程)において、研究科長を中心に自己点検・評価委員会を設立し、この委員会において自らの諸活動の点検・評価を行なう。自己点検・評価する主な項目としては次のとおりである。

  1. 経済学研究科(通信教育課程)の理念・目的・教育目標を実現するべくカリキュラムを編成しているが、実際に学生を受け入れて授業した結果、さらに効果的な教授教育を実現するために、最適な授業科目構成となっているかどうかについて、常に検討することが必要である。学生の興味ある研究対象を有機的に学べるように履修モデルが提示できているか、就学の目的意識を明確にして研究水準を効率的に高めて行くことができるように科目構成が配置されているか、教員の指導は適切か等について、アンケートも含め学生の声を聞き、学生の評価に基づいてカリキュラム編成に反映できる体制とする。
  2. 通信制教育を初めて実施するところから、施設・設備等及び情報インフラに関する点検は必須であり、ヘルプデスクへの質問を集中把握することをはじめとして、教員も常に学生からの声を吸い上げ、自己点検・評価小委員会にフィードバックする体制をとる。具体的には通信教育課程研究科の全教員が参加する「メーリングリスト」を組織し、常に情報を共有して必要な場合はいつでも研究科会議を開催し、大学の情報機器整備計画とも連携して必要な対策をとることができる体制とする。
  3. 社会人を教育するのが目的である本通信教育課程研究科は、まず学生の主体的学修と教育効果の測定について、レポート提出の期日とその質的水準、合格率と優・秀比率および退学・留年者比率(留年者の不足単位数)などすべての項目で統計を作り、分析評価する。また、教育の成果が卒業後の社会における活躍にどのように貢献しているかに関して、アンケートを中心として卒業生および雇用主に自己点検・評価調査を行い、必要と認められる場合は、授業内容・教育方法・授業時間その他、改善のための措置をとるなど今後の教育に反映させる。
  4. 管理運営や事務組織に関する事項については、自己点検の一環としてヘルプデスクに問題・対応策ノートをおき、情報を集約してシステムに起因する課題発見を容易にする。これら情報は月例の研究科会議で報告され、取られた措置については自己点検・評価報告に反映される。
  5. 将来の改善・改革に向けた方策としては、学生のニーズが更に多様化し変化することも予想され、上で触れた自己点検・評価の結果によっては、将来的に開講科目を追加・変更するとともに単位互換制度導入の必要性も検討しなければならない。こうした可能性も含めて、研究科長をトップとした実効性の高い自己点検・評価小委員会を構成し、常に将来構想の模索に生かしていくことが重要である。

以上の内容および結果は自己点検・評価小委員会により自己点検・評価報告書としてまとめられ、本学に既に設置されている自己点検・評価委員会に点検・評価結果を上申する。そして大学全体としての点検評価に関する調整・総括を行い、大学の自己点検・評価として報告書にまとめ、本学ホームページで学内外へ公表を行い、第三者評価を受ける。認証評価については大学基準協会を予定しており、積極的に評価に協力し、評価結果に従う所存である。

京都産業大学大学院学則第1条の2

  1. 本大学院は、教育研究水準の向上を図り、前条の目的及び社会的使命を達成するため、教育研究活動等の状況について自ら点検及び評価を行い、その結果を公表するものとする。
  2. 本大学院は、教育研究活動の状況について、一定期間ごとに第三者評価(文部科学大臣の認証を受けた評価機関による評価)を受けるものとする。
  3. 第1項の点検及び評価並びに前項の第三者評価の実施については、別に定める。

教員の資質の維持向上の方策

通信制を通じた教育・研究指導の内容・方法と条件整備については、全教員にとって初めての経験であり、当初、試行錯誤の過程を経ることが予想される。このため全教員による通信教育課程『FD研究会』を随時開催するとともに、FDメーリングリストを立ち上げて常時、教員間の活発な意見交換を行なう。通信教育課程研究科の教員全員が参加することにより『FD研究会』やメーリングリストを通じて、成功例・失敗例の報告とともに学生のニーズや共通の問題点を話し合い、教員の資質向上とニーズに合った教育内容の維持・発展を図る。定例の研究科会議開催の機会も利用して、月一回以上は一堂に会して情報交換を行なうと共に相互のスキルアップを図る努力を続ける。本学では授業相互評価アンケートをセメスターに一回実施しているが、当研究科でもこのタイミングを利用して、必要に応じて学生・教員へのヒアリング・アンケート等による補足調査を実施し、取り組むべき課題を把握する。調査対象分野は、学生の研究科への導入時から就学時および修了後の広い範囲に及び、この結果、ハード面の整備あるいはソフト面の充実が必要となった場合には直ちに対応できるよう、『FD研究会』は自己点検・評価委員会と重なる公的な恒常的組織として構成し、システムの向上に努める。

教員の研究活動と研究体制に対する点検・評価についても、『FD研究会』において共通の経済政策を中心テーマとした研究成果の発表と勉強会を開催し、お互いの研究の有機的関連と現実経済社会への対応について、常に問題意識を共有する。研究結果は京都産業大学社会科学系論集で発表されるが、ディスカッションペーパーについても通信制経済学研究科ホームページで随時公表する。

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