井上 博之

INOUE HIROYUKI
情報理工学部 情報理工学科 教授
学位
博士(工学)
専門分野
組込みシステムセキュリティ、インターネットセキュリティ

研究テーマ

つながる自動車(コネクティッドカー)を中心とした組込みシステムやインターネットの情報セキュリティ

高校生に向けた研究内容の紹介

家電製品や自動車のような組込みシステム(IoT機器)やインターネット通信のセキュリティについて、脆弱性分析、攻撃手法、防御手法などの研究開発を行っています。特に、コネクティッドカーや自動運転車における車載ネットワークやそのコンピュータであるECUの情報セキュリティについて、実車両を使った評価や実験を行っています。また、MaaSのような移動体サービスの実現に必要な情報をリアルタイムに車両から取出しクラウドに送信・蓄積する方式や、その通信プロトコルやセキュリティ上の課題についても研究を行っています。

ネットワークにつながる組込みシステムのセキュリティの研究-組込みシステムやネットワークの安全性を高め、社会に貢献

家電製品には「映像を処理し再生する」「指示に従って温度を調整する」など特定の機能を実現するためのコンピュータシステムが搭載されています。それらは「組込みシステム」と呼ばれ、独自のハードウェアやOSを有しています。近年は組込みシステムの多くがネットワークに常時接続するようになり、テレビやゲームでも新たな機能や楽しみ方が生まれています。このように利便性が向上する一方、外部からの攻撃の防止、内部の情報を保護するセキュリティ対策が重要になっています。
私が専門としているのは、ネットワークにつながる組込みシステムのセキュリティについての研究です。例えば、自動車で使用されるシリアル通信プロトコル「CAN」には暗号化の仕組みがありません。そこでプロトコルを解析し、Linuxが動作する小型のシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」などを用いて積極的に攻撃を行うオフェンシブ・セキュリティという手法で脆弱性を探り、問題点と修正案を提案しています。また、車載Ethernetの新規格「10BASE-T1S」やサービス指向プロトコル「SOME/IP」などについても、今以上に安全に利用するための仕組みを研究しています。
この研究の醍醐味は、自身が考えたシステムや仕組みが社会で活用され、産業の発展に貢献できる点です。学生の皆さんにも、企業との共同研究や実車両・実機を使った実験を通して研究の楽しさを体感してもらいながら、情報セキュリティの専門的な技術・知識を基礎から着実に身に付けてほしいと思います。

ゼミナール/研究室のテーマ

組込みシステムのセキュリティ技術の研究開発

家電製品や自動車のような組込みシステム、いわゆるIoTシステムでは、インターネットに常時接続することが前提になっており、ネットワークを経由した攻撃の検知やその防御が大きな課題になっています。この研究室では、コネクティッドカーや自動運転車、IoTデバイスにおける脆弱性分析、攻撃手法、防御手法などについて、実機を使った実践的な研究開発に取り組んでいます。

ゼミ/卒業研究の紹介

研究室の特別研究では、家電や自動車のような組込み機器のハードウェアとソフトウェアの構造(アーキテクチャ)を理解するために、マイコンや組込みOSを使った実践的なゼミを実施しています。コンピュータ内部やネットワークの構造を深く理解することで、OSやクラウドのような基盤技術から、Web技術やAI技術のような応用技術まで原理が分かった上で使いこなすことができます。社会に出てからもTCP/IPやWebのようなネットワーク技術は変わることなく使われおり、身につけたスキルを基に色々な業種を選ぶことが可能になります。

プロフィール

就職した大阪のメーカにてUnixワークステーションのカーネルまわりやインターネットの通信機器の研究開発を行っていました。在職中に博士(工学)の学位をとり、しばらく東京のベンチャーでデータセンター間高速光ファイバーネットワークの立ち上げやネットワーク機器のコンサルティングなどを行っていました。その後、広島にて情報系の大学教員になり、縁あって京都に来ました。ソフトウェアとハードウェアの境界の実装、電子工作、車いじり、美味しいパンなどに興味があります。

高校生へのメッセージ

自動車や家電に代表される組込み機器の製品やそこに使用されるCPUをはじめとする電子部品においては、世界的に見ても日本企業が強い分野です。いまでは組込み機器がインターネットに常時接続すること(コネクティッド)が当たり前になってきており、そのセキュリティをどう守っていくかが重要な課題となっています。ネットワークの仕組みやプロトコルにも強いセキュリティ技術者は色々な分野で必要とされており、実車や実機を使いながらコネクティッドな機器(IoT機器)に触れつつ実践的な研究を一緒にやってみましょう。