三田 貴

MITA TAKASHI
国際関係学部 国際関係学科 教授
学位
Ph.D. in Political Science
専門分野
政治学(未来学)、オセアニア地域研究、国際協力論、共生社会

研究テーマ

太平洋諸島のグローバリゼーションと国家建設

高校生に向けた研究内容の紹介

植民地化と脱植民地化に翻弄されてきた太平洋の島国の人々は、不平等な国際関係の下敷きになりつつも、したたかにそして力強く生きています。私は未来学(futures studies)という手法を軸に、「どうやったら小さな国が自立できるの?」「小国がグローバル経済飲み込まれないようにするには?」「海面水位が上昇して生活域が浸水してきているけど、どうする?」「どのような観光開発が望ましいの?」「生活習慣病をなくすには?」といった課題を、当事者の人々と一緒に考えています。

ゼミナール/研究室のテーマ

グローバル化と国際協働・共生-未来学からめざす課題解決-

未来学の手法で社会課題の解決策を探る。

共生社会をどう実現するか? その思考実験を行う研究演習です。「コロナ禍の太平洋の島国の望ましい観光開発は?」「ネパール女性の人権を守るには?」といった世界が直面する諸問題から、学生が関心のある研究課題を選択します。その解決策を未来学の手法で探っていきます。未来学とは政治学の一分野。いわゆる一般的な右肩上がりの成長を予測するだけではなく、過去・現在・未来の各時点で何が起こるのか、良いことも悪いことも含む複数の未来像を描き、そこから望ましい未来像を検討して対策を考えます。重要なのは、過去から現在までのトレンドを浮き彫りにし、また多面的に捉えて単一ではない未来像を描くこと。2年かけて1つのテーマに取り組み、最終的には論文にします。社会で生きる課題解決能力が身に付きます。

Column先輩の学び

国際問題に切り込む上で、過去・現在・未来の視点に立つ「未来学」の手法を用いるのが三田ゼミの特長。あらゆる可能性を突き詰めて考えるのが好きな私にぴったりのゼミです。物事を多角的に見る力が養われました。

国際関係学部 国際関係学科 3年次
島﨑 駿丞さん

※掲載内容は取材当時のものです。

ゼミ/卒業研究の紹介

ゼミでは「グローバル協働・未来学」をテーマとして、日本を含む世界の人びとが直面する社会的課題に関し、「当事者」の境遇や視点を重視しながら具体的事象や世界の構造を探究します。課題の改善・解決に向けて未来学(Futures Studies)を用いて、グローバル協働(global collaboration)と共生のあり方を探ります。未来学は政治学の一分野で、過去から現在にかけてのトレンドや変化要因を特定し、「成長」「崩壊」「統制」「転換」といった未来像を複数描くことで問題を分析し、未来につながる政策を立案するものです。堅実な対応策だけでなくイノベーションにつながる新たな発想を生み出すトレーニングの場でもあります。この分析手法を身に着けることで、社会に出てからも活用できる、課題解決の方向性や政策の提案ができるようになります。

プロフィール

中学生時代にパラオに居住して以来、40年余りに渡ってパラオと深いかかわり合いを持ってきました。1980年代にパラオに滞在した時、パラオは「非核憲法」と「独立」との間で揺れていました。脱植民地化のプロセスを肌で感じながら、一つの国の未来について関心を持つようになりました。それ以来、オセアニア地域における社会的課題に関心を持ち、研究に加えて、在外公館で外交や開発に関わる実務にも従事しました。これまでの大学教員生活では、アジア・オセアニアにおける体験型学習の機会を数多く企画し、学生と共に学習してきました。研究では、当事者性を重視し、よりよい未来のための方策を検討します。教育活動では、学生に「教える」(知識を伝達する)のではなく、未来を変革に導くリーダーとなる学生のキャパシティをいかに引き出すかということに関心を持って取り組んでいます。学生とともに、時には一緒にフィールドに出て、課題や解決策を発見し学びを進めることが何よりも楽しく意義ある活動だと感じています。

高校生へのメッセージ

私は小学校を卒業してすぐに、英語も現地語もわからないまま外国(パラオ)に暮らすという経験をしました。多文化共生という言葉もまだない時代でした。日本人学校もない場所です。10代前半のこの経験をきっかけに、自分とパラオとの強くて長い関係が生まれました。いま、日本の大学で学ぼうとする皆さんも、機会を見つけて海外に出かけたり、日本にいる外国から来た人々とたくさん交流して視野と受容度を広げてほしいです。グローバル化が様々な形で進む中、人々がお互いに影響し合い、世界をより良くする方向で協働することができれば、社会は変わっていきます。学生の皆さんが、この広大で多様で魅力に満ちた世界の中で、違いがあることを受容し尊重し楽しむことができるグローバルシチズンとなり、社会の課題を解決することに羽ばたいていけるよう一緒に歩みましょう。