マスクとコミュニケーション 2023.02.07

マスク着用の是非

今年5月8日より新型コロナウィルスが5類に分類されることがニュースで報じられている。いよいよ様々な行動制限が法的拘束力を持たないようになるが、最近の話題の中心はマスクのようだ。JNNの世論調査(固定・携帯電話による聞き取り、全国18歳以上1167人)では、マスク着用について「屋内外問わず外す」10%、「屋外では外すが、屋内では着ける」31%、「屋内外問わず着ける」33%、「まだ決めていない」が22%であった。

マスクの着用に関しては、感染が蔓延した当初からその是非が様々に報じられてきた。学校や交通機関などで「マスク警察」なる人々が現れた時もあった。富岳というスーパーコンピューターによってマスク着用時のシミュレーションがなされ、ウレタンマスクや布マスクから不織布マスクへと舵が切られた時期もあった。マスクのことを「顔パンツ」と称する若者も多いようだ。

ただ海外ではマスクの着用が原則不要となって長く、最近訪れたロサンジェルスでもマスクをしている方が違和感を感じる場面もあった。今年5月に開催される予定のG7広島サミットに向けて日本も急速にマスク着用に関する「当たり前」が変化していくのだろう。こうした動きは科学的知識がどのように「真実」として変遷し、社会や個人がそれをどう扱い対応していくのかという点では非常に興味深い社会的現象とも捉えられる。

学生たちの学びと関心

話は変わるが本学部の1、2年の英語必修基幹科目にはEnglish for Academic Purposesという社会科学を英語で学ぶクラスがある。人類学、社会学、心理学、経済学など様々な視点を学び、社会現象に関して議論していく授業である。そのトピックの中には、文化やコミュニケーションなど社会的現象を扱うことがある。授業の課題の中には、学生が自由に興味のある社会事情に関して、社会科学の視点から分析し発表を行うグループプロジェクトがある。ここ最近、必ず取り上げられるのがマスクとコミュニケーションの関係だ。

あるグループは、顔の印象とコミュニケーションの関係について調べ、特に保育場面でのマスク着用によって子供たちの発達や言語習得に及ぼす影響について発表を行った。他のグループは、マスクを着用しながらも日本特有とされる「おもてなし」サービスのあり方について検討し、顔写真の掲載や非接触でもオンラインでコミュニケーションをとる方法を紹介した。また友人や恋人など社会関係の形成がマスクによって阻害されている可能性を議論したグループもあった。マスクの着用と日本の「同調圧力」について議論し、歴史まで遡ってなぜ私たちが他者と同調する必要性を強く感じるのかについて考察したグループもあった。それぞれ最新の研究結果を検索したり、自分たちでアンケートを実施したり、これまでの心理学や社会学の理論を参照しつつ興味深い発表を行ってくれた。

逆境を力に

昨日当たり前だと思っていたことが今日変化する。新型コロナ蔓延を期に、この2、3年私たちは身をもってそんな社会変容を経験してきた。学生たちは、その中で様々に思い悩みながら何がベストかを探っているように思う。そうした模索の中に、どんな場面でも生き抜いていけるコミュニケーション力を見いだして欲しい、いやこんな時期だからこそ見いだしていけるはずと思う今日この頃だ。

川島 理恵 教授

異文化コミュニケーション、医療社会学、会話分析

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