日本語を使ってさまざまな人とコミュニケーションを!
2023.05.19
日本語を母語としている人の数は?
日本語を母語とする人の数は約1億2,500万人で、世界第8位です。この数は日本の人口とほぼ同じ数です。しかし、日本に住んでいる人の中には日本語を母語としていない人もいますし、日本語を母語としていて日本以外のところに住んでいる人(海外在留邦人約134万人)もいます。
そして、日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒が少なくとも約1万人はいると言われています。これらのことから分かるように、国籍と母語とは必ずしも一致しません。
日本語を第二言語や外国語としている人の数は?
次に、日本語を第二言語や外国語として使っている人の数です。これは、約1,000万人で、正直言ってそれほど多くはありません。
第二言語や外国語として日本語を使っている人の中には、さまざまな人がいます。しかし、全体像を示すデータがほとんどなないので、具体的なことは推測するしかありません。
まず、日本国内ですが、2021年末現在、約279万人の外国籍の人が日本に在留しています。(ちなみに、中国籍の人が約72万人で第1位、以下、ベトナム籍の人約43万人、韓国籍の人約41万人の順です。)これは、日本の総人口の約2.2%、つまり、100人に約2.2人が外国籍の人ということを意味しています。(そして、2070年には約939万人、総人口の10.8%に拡大するとのことです。)
これらの人の多くが生活者として日本語を使っていると考えられます。(もちろん、ここには、日本語を使っていない人、そして、日本語を母語としている人も含まれています。)
この中には、日本語学校や大学、地域日本語教室など、さまざまなところで日本語を学習している人がいます。その数は2021年11月末現在、約12万人です。(ちなみに、中国籍の人が約4万8,000人で第1位、以下、ベトナム籍の人約2万5,000人、フィリピン籍の人約6,00人の順です。)
続いて、海外ですが、2021年現在、約380万人が日本語を学んでいます。(ちなみに、第1位は中国で約100万人、第2位はインドネシアで約71万人、第3位は韓国で約47万人です。)国・地域によって状況は大きく異なりますが、全体としてみると、約47%の人が中等教育機関(中学校や高校)で日本語を学んでいます。
そして、海外在留邦人や日本にルーツを持つ外国籍の人の中には、継承語として日本語を学んでいる人が一定の割合でいると考えられます。加えて、これらの数には入ってこない、例えば、過去に日本語を学んだ経験がある人、恒常的に日本語を使っているわけではないがいつでも日本語を使うことができる人が当然多くいると考えられます。
コミュニケーションで何語を使うのか?
母語話者同士によるコミュニケーション場面のことを「母語場面」、母語話者と非母語話者によるコミュニケーション場面のことを「接触場面」といいます。
母語場面では、なんらかの理由で母語以外の言語を使うこともあるでしょうが、やはり母語を使うのが最も効率的で便利でしょう。では、接触場面ではとうでしょう。「接触場面」では、①その場面にいる誰かの母語(他の人にとっては第二言語や外国語)を使う、②全員が使える母語以外の言語を使うという選択肢が考えられます。以下、わかりやすくするために、日本語を母語とする人とベトナム語を母語とする人のコミュニケーションのケースで話を進めていきます。
①では、日本語を使うケースとベトナム語を使うケースが考えられます。日本語を母語とする人がベトナム語が使えるのであれば、ベトナム語を使うケースも考えられますが、ベトナム語が使える日本語を母語にする人よりも日本語が使えるベトナム語を母語とする人の方が多いと思われますので、日本語を使うケースが多いでしょう。
そして、この場合、日本語を母語とする人が相手の日本語能力に合わせて日本語を調整する、つまり「やさしい日本語」を使うことになるでしょう。
②では、いろいろな言語を使うことが考えられますが、やはり英語を使うのが現実的だと思われます。ただし、この場合、2人とも英語が使えることが大前提となります。しかし、英語が使えないケースも十分想定できます。
英語を母語とする人は約3億7,000万人で世界第3位(ちなみに、第1位は中国語で約9億2,900万人、第2位はスペイン語で約4億7,000万人です。)、第二言語や外国語として英語を使っている人は約11億人で世界第1位(ちなみに、第2位はアラビア語で約2億7,000万人、第3位はヒンディー語で約2億6,000万人です。)で、両者を合計すると約14億人です。
世界の人口は約80億人ですから、世界の人口に占める英語話者の割合は多く見積もって20%程度ということになります。また、日本に在留している外国人に対して行われた調査ではありますが、「日本語を日常生活に困らない言語」とした割合は約63%(ちなみに、英語は約44%)、「外国人が希望する情報発信言語」の第1位は「やさしい日本語」で76%(ちなみに、英語は68%、日本語は22%)という結果になっています。
参考
- Ethnologue 2022, 25th edition
- 2022年版「出入国在留管理」日本語版(出入国在留管理庁)
- 令和3年度国内の日本語教育の概要(文化庁)
- 「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和3年度)」の結果(速報)(文部科学省)
- 海外在留邦人数調査統計(外務省)
- 2021年度 海外日本語教育機関調査結果の概要(国際交流基金)
- 日本の将来推計人口(令和5年推計)(国立社会保障・人口問題研究所)
- 在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン(出入国在留管理庁 文化庁)
日本語を使ってコミュニケーションを!
英語を使っている人が多くいて、特にビジネスや学術の世界、そして、観光などで英語が便利なことは確かですが、「外国人なら誰でも英語が話せる」や「英語が使えなければ、外国の人とコミュニケーションができない。」というのは明らかに言い過ぎです。
いろいろなところに日本語を使うことができる人がいるわけですから、日本語を母語とする人が日本語をうまくコントロールすることで、「接触場面」で日本語を使うことが可能です。そして、その方が効率的で便利なこともよくあります。みなさん、「母語場面」だけではなく「接触場面」でも積極的に日本語を使ってみてください。
外国語学部 アジア言語学科 日本語・コミュニケーション専攻