ピリピリ・チクチク痛いのは要注意!帯状疱疹
幼少期に9割の人が水痘(水ぼうそう)にかかったことがあると言われています。水痘が治った後も、ウイルスは体内の知覚神経節にずっと潜んでおり、ストレスや病気等による免疫低下時に再活性し、帯状疱疹を発症します。水痘と帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)という同じウイルスが引き起こす病気です。

代表的な症状
- 神経痛のような強い痛みが、皮膚に起こる
- ピリピリ、チクチクした痛みや焼けるような痛み
- 水ぶくれのある赤い発疹ができる
- 上半身に症状が多くみられる
- 症状は約1ヶ月程度続く
帯状疱疹になりやすい要因
免疫機能が低下した場合に発症することが多い
- 加齢(患者の約7割が50歳以上)
- ストレスや疲労
- 抗がん剤や免疫抑制剤の使用
- エイズ(後天性免疫不全症候群)などの感染症になった時など
帯状疱疹の後遺症
帯状疱疹後神経痛
後遺症として多くの人が悩むのが、帯状疱疹後神経痛(PHN)です。通常、皮膚症状が治ると痛みも軽減していきますが、ウイルスによって神経が傷つけられることにより、皮疹が治った後も、続く痛みがPHNです。
- 50歳以上の患者の約2割がPHNに移行
- 短い人では数ヶ月、長い人では数年間症状が継続
- 通常の痛み止めの薬が効きにくい時は、神経ブロックの注射が有効なこともある
その他の後遺症
- 神経が傷つくことによって起こる症状
例)視力低下、難聴、腕が上がりにくいなど - 発疹の痕が残る場合もある
- 治療が遅れると、発熱や頭痛などの全身症状が現れることもある
治療法
症状が現れたら、すぐに病院へ!
ウイルスの増殖を早い段階で抑えることが重要となります。主に、抗ウイルス薬の処方がありますが、発疹が出て3日以内に内服を開始することが望ましいとされています。また、症状に合わせて鎮痛剤、軟膏が処方されます。重症化した場合は、入院して点滴で治療を行う場合もあります。
帯状疱疹の感染力
日本では、年間1,000人当たり5人程度、70歳以上では1,000人当たり10人以上の発症率となっています。水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は感染力が強く、「空気感染、飛沫感染、接触感染」の経路から感染します。帯状疱疹は水痘より感染力は低いですが、発疹出現の3日前から唾液中にウイルスが排泄され、空気感染を起こします。皮疹が痂皮化(かさぶた)するまで接触感染は起こります。
帯状疱疹をワクチンで予防しよう!
帯状疱疹のワクチンは、50歳以上が対象
2016年に承認された「乾燥弱毒生水痘ワクチン」と、2018年に承認された「シングリックス®」の2種類があります。アメリカの予防接種勧告委員会(ACIP)は、帯状疱疹および関連合併症の予防には、乾燥弱毒生水痘ワクチンよりも乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(シングリックス®)が望ましいとしています。
2つのワクチンの比較については次の表を参考にしてください。
2023年6月より、免疫機能が低下した人など、帯状疱疹を発症するリスクが高い18歳以上の方も、シングリックスが接種可能になりました。
帯状疱疹ワクチン比較表
乾燥弱毒生水痘ワクチン (乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」) |
乾燥組換え帯状疱疹ワクチン (シングリックス®筋注用) |
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承認時期 | 2016年3月 | 2018年3月 2020年1月~発売開始 |
ワクチンの種類 | 生ワクチン (ウイルスの病原性を薄めたもの) |
不活化ワクチン (病原性をなくしたウイルスから作ったもの) |
効果・効能 | 水痘及び 50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防 |
帯状疱疹の予防 ※水痘の予防接種には使用できない |
接種回数 | 1回 皮下注射 | 2回(2ヶ月間隔) 筋肉注射 |
費用 (病院により異なる) |
8,000~9,000円程度 | 20,000円×2回 |
対象年齢 | 50歳以上 | 50歳以上 免疫機能低下など発症リスクの高い18~49歳(2023年6月~) |
発症予防効果 | 60歳以上…50% | 50歳以上…97.2% 70歳以上…89.8% |
神経痛予防効果 |
66.5% | 70歳以上…85.5% |
効果持続 | 3~11年 | 9年以上 |
副反応 | 微熱、発疹、接種部位の腫れ、発赤など 7% |
疼痛78.0%、発赤38.1%、 腫脹25.9%、筋肉痛40.0%、 疲労38.9%、頭痛32.6% ※ほとんどが7日以内に消失 |
禁忌 |
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※生ワクチンではないため、免疫機能の低下した患者(造血幹細胞移植者等)においても接種可能 |
2014年に小児水痘ワクチンが定期接種化されて以降、水痘の患者数は激減しています。そのため、高齢者が水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)に接触する機会も減り、VZVに対する免疫機能が強まる「ブースター効果」を得る機会が減少しています。高齢化に伴い、これからは帯状疱疹の患者数が増加することが予想されます。規則正しい生活を送り、免疫機能を低下させないように努めましょう。50歳以上の方はワクチン接種についても検討し、帯状疱疹を予防するようにしましょう。