前原誠司(衆議院議員、民主党代表)氏が地方自治について講義

2005.12.24

 前原誠司(まえはら せいじ・衆議院議員、民主党代表)氏が12月24日、京都産業大学法学部開講の専門教育科目「地方自治未来論」(516教室)に登壇し、学生たちを前に「市民参加型分権社会について」講義した。

 前原氏はまず現代日本の国・地方関係にひそむ無駄と非効率を指摘した。例えば、府県並みの権限をもつといわれる政令市がなぜ府県の下に位置づけられているのか。また国からの補助金配分方式は、地方自治体にコスト意識を育ませない仕組みになっている。さらに国及び地方の公務員は、数も人件費も思い切って減らそうと思えば減らせるはずである。

 前原氏はこの現状を改めるべく「市民参加型分権社会」を対置する。それはまず全国の地方自治体を30万人規模の基礎自治体に再編成する。教育、福祉、インフラ整備など、地方が遂行してきた一切の役割をこの基礎自治体が果たすことになる。どうしても必要となる広域調整は道州レベルの調整機構に委ねるが、これはもう調整だけなので議会もおかない。国の役割も、外交・安全保障、マクロの経済調整、教育や福祉の基本理念提示などに局限される。

 基礎自治体へのこの徹底した分権で大丈夫なのか。前原氏は市民参画が実現するかぎり大丈夫だという。その実例として、コミュニティ・スクール化を実践する京都市の御所南小学校や、多くのボランティアを活用しつつ「やさしく、あたたかい、たしかな医療をめざす」諏訪中央病院を紹介した。また団塊の世代が定年を迎えることは、むしろ市民参加への大きな弾みとして活用すべきである。

 前原氏は今後は一人一人が豊かになり幸せになることを目標とする政治に転換すべきだという。財政再建や福祉負担をめぐって世代間対立が表面化する可能性がある。若い人々が政治に関心を持ち、公共への参加を実践してこそ、この危機を克服できる。「市民参加型分権社会」はそのための確実な道筋である。


※地方自治未来論:
平成17年度 秋学期開講(法学部専門教育科目)/担当教員:溝部英章 教授/配当年次:2年次生
単位数:2単位/開講日:木曜5時限/教室:5号館4階5407教室(通常)/受講生数:275名
ホームページ:/department/ju/tokushoku/chihoujichi.html
各地でそれぞれの立場(地方育ちの国政政治家、地方首長、地方議員、行政職員、経済人など)から、日本における「地方自治の未来」に関して重い責任と高い理想を持っておられる方々をお招きし、現場から見た地方自治の問題点と今後の方向性について、率直にかつ熱く語って頂こうとするものであり、今年で3年目になる。受講者は、毎回違った講師の方々から、それぞれ独自の地方自治論を学ぶことができる。
「市民参加型分権社会について」地方自治を学ぶ学生を前に講義する前原民主党代表
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