伊藤 舞 選手×山田 幸代さん対談
山田:リオデジャネイロオリンピック出場内定!おめでとうございます!! 女子アスリートで出場内定第1号とお聞きしました。出場が内定した瞬間の気持ちをお聞かせください。
伊藤:今回2回目の世界陸上出場だったのですが、1回目(韓国・テグ大会:2011年)は緊張して力を出し切れませんでした。今大会は「レース本番で準備してきたことを発揮する」という目標を立てていたので、まずは世界の舞台で力を発揮できたことが嬉しかった。それが結果的にオリンピック出場内定に繋がりました。
山田:とてもよくわかります。
私も2005年に世界大会で力を発揮できなかった経験があり、それがきっかけで海外へ飛び出して精神面を鍛えてきました。世界の舞台は国内で戦うよりも難しいと思いますが、どのような困難がありましたか?
伊藤:海外の大会はスタートまでの流れや競技場での準備など、国内の大会とすべて違います。レースでも国内ではペースメーカーがいるので安定してるんですが、世界大会ではいないので、予想外のスローペースのレースや給水で一気にペースアップしたりして、精神的にも肉体的にもプレッシャーが大きくなります。
山田:過去の失敗経験が今大会で生かせたんですね。 毎日の練習やレース前にするルーチンってありますか?
伊藤:今回が11回目のマラソンだったんですが、世界陸上テグ大会の時は3回目のマラソンで、しかも海外のマラソンは初めてでした。その時の失敗の経験からロンドン、ウィーンなど海外のレースを増やし、その経験を生かすことができました。レース前は特別なことをせず、毎日やっていることをいつも通りするように心がけています。
山田:マラソンは長い勝負になりますが、レース中はどんなことを考えてるんですか?
伊藤:大きなストライドで走ると後半に疲れが出るので、前半はできる限りピッチを小さくしてテンポよく走ること、そして蒸し暑いので給水をしっかり取ることを心がけました。
山田:今大会でもそうでしたが、伊藤選手といえば“粘りの走り”が特長ですが、どのようにして気持ちが強い選手になれたんですか?ターニングポイントがあれば教えてください。
伊藤:私のマラソンの原点は京都産業大学での4年間にあります。伊東先生の指導のもと、食事や睡眠などの生活も含めて、すべてをしっかりとやらなければ練習で走り切れません。大学では怪我が多かったんですが、それを乗り越えて4年間やり切れたことでメンタルが鍛えられ、社会人で競技を続ける自信を持つことができました。
山田:大学で伊東先生から指導を受けたことが、今のベースになっているんですね!練習を積んで自信をつけるために、どのようにして練習プランを立てますか?
伊藤:以前は、「練習すればするほど強くなれる」と思っていましたが、実はそうではないことに気づきました。調子が良くて練習をやり過ぎてしまって、怪我をしたんです。それからは、目標を達成するためには一喜一憂せず、調子が良くてもやり過ぎず、逆に悪い時にも落ち込まず、できるだけ波を小さくすることを心がけています。
山田:話は変わりますが、ラクロスのようなチームスポーツとマラソンのような個人スポーツの違いについて、マラソンは自分自身との孤独な戦いのようにも感じますが、私の考えとしては、実はマラソンもチームプレーだと思っています。伊藤選手はどのように感じておられますか?
伊藤:マラソンのレースは、いつもいろんな人にサポートしてもらってスタートラインに立つことができています。今大会でも、スタッフのみんなが喜んでくれているのを見て、その時に「心からよかった」と感じました。練習もチームメイトと一緒にしたんですが、その選手が別の大会で優勝したり、世界に目を向けてくれたり、刺激し合って良い影響を受けてくれると嬉しく感じます。
マラソンを続けているのは、確かに自分が成長するためということもありますが、多くの人に支えてもらっているから、今の自分があると思っています。
山田:最後に、伊藤選手のこれからの夢や目標と、京都産業大学の在学生へメッセージをお願いします。
伊藤:本当は大きな夢や目標を持った方がいいと思うのですが、私は小さな目標を積み重ねてきたことがオリンピックに繋がりました。だから、今の目標としては、オリンピックで活躍できるように、勝負どころでしっかりと力を発揮できるように準備したいと思っています。
私は4年間、京都産業大学で陸上を頑張ってきたことが自信になり、今に生きています。学生のみなさんも、一生懸命になれることを見つけて、頑張ってほしいと思います!
山田:オリンピックに向けて頑張ってください。みんなで伊藤選手を応援します!!