大平織物株式会社 社長 平井基之さん × 山田 幸代さん対談

※所属・肩書は取材時のものです。(2013年7月)
「Musubiwaza Story」第3回目となる今回は、西陣で創作ネクタイを製造している大平織物株式会社 代表取締役の平井基之先輩を訪ねました。
対談は堀川今出川にある西陣織会館をお借りしたのですが、対談前に「きものショー」を鑑賞し、西陣織の製織実演や展示されている史料の解説をしていただきました。

西陣は織物や帯ばかりだと思っていました。

西陣ではあらゆるものを作っています。
クールビズがきっかけで日本中のネクタイを取り扱う業者、メーカーともにおよそ8割が無くなってしまいました。世界で最高の技術を持ちながら、このような 状況で私が必死になってやりたいと思っていることは、「この伝統と技術を残していかなければならない。たとえ最後の一社になっても頑張ろう」ということで す。そういう強い思いをもって、仕事をしています。ネクタイ業界が悪くなればなるほど、頑張らないといけないと思うようになりました。

今の大学生に平井先輩のようなパワーを感じられないのですが、どのように思われていますか?

小さい時からあまり周りの人より突出するといじめの対象になったり、強い気持ちを持っていてもあまり表現すると他の人から特別な目で見られるので、遠慮して友達の顔色を窺うような習慣が身についているのではないかと思います。
私はそんな風にしているよりも「自分がこれだ!」と思ったら思いっきり表現すればいいと思います。表現するのが下手な人は、小さい時から自分を抑えて周り に合わせていくことがあまりに多くて、自分の熱い気持ちを表現するのが下手になってしまったのではないでしょうか。

遠慮してしまう習慣というのが最近の日本で多く見られると思います。私たちが大学の頃は、「自分がこうしたい」という熱い思いを持っている人が多く、しかも発信していくことが上手でした。大学自体もそうだったように思います。
先ほどお伺いして感銘を受けたのですが、ネクタイ業者が8割無くなる中で最後の一つになっても続けていこうとされる姿勢や、西陣織について平井先輩が自ら積極的に発信される行動力などとても大切なことですし、それこそが人を動かす原動力なのだと思います。
「むすびわざアンバサダー」として、学生たちにもそういった話を伝えていきたいと思っているのですが、平井先輩が学生の頃は周りにもそういった方が多かったのでしょうか?

私の友人で大学時代にフォークソングをやっていた人がいるのですが、今でもその当時の仲間と音楽を続けていて、大学を卒業してから一貫してずっと、誰にでも安く音楽を楽しんでもらおうという思いで活動されています。彼のそういう努力には敬服しますね。

私自身は大学時代にローバースカウト部を作りました。ローバースカウト部とはボーイスカウトの大学生版です。その当時はボーイスカウトやガールスカウトが世界で最も大きな青少年団体でした。
無人島にサバイバルキャンプへ行ったり、京都から直江津までキャンプしながら歩いて行ったりしました。心身を鍛えるためにそうやって野外に出て、色んな活動をしていたので、今でも月に1、2回は登山しています。

展示史料の見学
西陣織の製織実演
「きものショー」の鑑賞

学生に向けて激励のメッセージをお願いします。

自分が好きなことをずっとやり続けることが大事だと思います。先ほど話に上がりました私の友人は、自分を表現するのは下手ですが、学生時代からずっとギ ターを練習し、今ではギターを教えに行ったりしています。そして、彼の周りには大学の頃の友達だけではなく、音楽を通してたくさんの仲間がいます。
やはり、好きなことを一生懸命続けるということはそれだけでも仲間ができますし、人間関係が広がります。
確かに今の学生には表現することが下手な人が多いですが、一番大事なのは『熱い気持ち』だと思います。これだけはやっておきたい、やっていきたい、やり続 けたい、そういう気持ちを大切にして、できればうまく表現できればもっといい。発信方法はたくさんありますが、言葉で素直に表現できたら一番いいですね。
PAGE TOP