今週の学長のことば(2009年9月・10月)

 

2009年10月26日

複眼思考

子どもの頃に聞いた、川田晴久という軽音楽の歌手の有名な歌の一節は、いまも忘れがたい。「地球の上に朝が来る、その裏側は夜だろう」。人間の生活には喜怒哀楽がつきもの。耐えがたいほどの苦しみや悲しみも、かならず時間が癒してくれる。楽しみや喜びが必ずやって来る。若い頃、沈みがちな気分を自覚すると、いつも、地球の裏側は朝なんだと考えることで、自分を励まし、気分を立て直してきた。いわば「心の杖」だった。

 

2009年10月19日

生意気のススメ Part.2

安定感にあふれて見えるオトナにしても、若い頃には、激しく炎を燃やし、逸脱したこともある。逸脱や噴火の結果としての静謐(せいひつ)。太宰治が好んだ生田長江の短歌。「冷ややかに 水をたたへて かくあれば、人は知らじな 火を噴きし山の跡とも」。火山湖を歌ったもの。

 

2009年10月12日

生意気のススメ Part.1

自分はそうは思わない、という気持をどこかに持ちながら人の話を聴く。その結果が、ときに頓珍漢で的外れな発言になることを恐れてはいけない。若いときのそういう態度は決して生意気ではない。馬鹿なことを言ったという反省を重ねながら、少しずつ成長する。

 

2009年10月5日

とにかく前へ進もう

益川敏英先生のノーベル物理学賞の受賞は、日本の学術研究の誇りであるとともに、その率直で飾らぬ、人間味あふれる人柄によって、若い人たちに大きな励ましと勇気を与えている。不得手の克服よりも、強みに磨きをかけること。とにかく前へ進もうというプラス思考が大切なのは勉強に限ったことではない。

 

2009年9月28日

判断をくだす前に立ちどまる

判断の根拠となる情報は、とかく一方的なもの。立場や角度を変えると、別の見方ができる。反射的に鵜呑みにせず、一瞬立ちどまるだけでも思慮深くなる。

 

2009年9月21日

視角によって風景は変わる Part2

同じ道から見える風景であっても、見る角度を変えると、眺めが違う。入り組んだ道を、歩き慣れているのとは逆方向から歩いてみると、道に迷ったかと思えるくらいに眺めが違う。後ろを何度も振りかえり、視角を逆にして、見覚えのある風景かどうかを確認しながら歩いた経験が何度もある。

 

2009年9月14日

視角によって風景は変わる Part1

風景にしても、立つ場所や見る角度を変えると、眺めがずいぶん違ってくる。かつて、歌人の斎藤茂吉は、あるエッセイで、電車の先頭車両に立って眺める「突き進んでゆく風景」と、最後尾の車両にたって眺める「遠ざかる風景」とは、同じ電車から眺める風景でも、まるでちがう。それを眺める気分まで違ってくる。自分は先頭車両から眺める、突き進んでゆく風景が好きである、という意味のことを述べた。

 

2009年9月7日

ひとりで散歩を Part2

散歩は脳の働きの活性剤。歩きはじめて30分も立つと、滲み出る汗とともに、いろんな想いが頭を駆けめぐるが、それでいて、夜中に目ざめた寝床の中でのような、暗い考えに堕ちこむことはない。ウォーキングは頭の健康の素。