高校生のための観光文化学〜「旅」に彩られた観光都市・京都から紐解く〜

高校生のための観光文化学 高校生のための観光文化学

”観光を1つの事象としてとらえる”観光文化コースの 学びとはどのようなものでしょうか。
当コースで教鞭をとる平竹耕三教授が解説します。

1959年京都市生まれ。82年京都大学法学部卒業。経済学博士。京都市文化芸術政策監、ロームシアター京都(京都会館)館長などを経て現職。著書に『自治体文化政策まち創生の現場から』
(学芸出版社、2016年)など。

「観光」はどのようにして生まれたのか?

「ツーリズム(Tourism)」という言葉が登場したのは1811年のこと。言語の初出を記したオックスフォード英語辞典には「Tourism=愉しみのための旅行」という記載が残っています。

18世紀の中ごろから始まった産業革命などの近代化に伴い、交通インフラの整備が進み、娯楽としての旅、自分の知らない場所を見に行く「観光」を楽しむ市民層が生まれました。

その意味では観光という概念が誕生し、商品として売買されるなどの市場が生まれたのは比較的最近。近代社会になってから生まれた慣習であると「学問的」には言われています。

京都は日本最古の「観光都市」だった⁉

ただし「観光」をどのように捉えるかで、歴史的な起源も変わってきます。「知らない場所に行って新たなものに出合う」ことが観光の本質だとすれば「観光」という言葉が出来上がるずっと前から、人は無意識に観光を行ってきたとも言えるのです。

特に信仰を介した巡礼や参詣は、多くの人々にとってその役割を果たしてきました。例えば伊勢参りや四国遍路など、旅先での出会いや驚きを記した書物はいくつもあります。

中でも神社仏閣が多く、歌に詠まれる名所も多い京都は、古の時代から人々は様々な目的でこの街を訪れてきました。いわば”日本最古の観光都市”と言えるでしょう。

北野天満宮

天暦元年(947年)創建の歴史を持つ北野天満宮。
文化学部には「勅祭・北野祭の古儀復興」をテーマとしたゼミも。

江戸時代のガイドブックと現代のスマホの共通点は?

こうした観光都市としての京都の特徴は当時のガイドブックから紐解くことができます。江戸時代後期に刊行された京都の地誌、『都名所図会(みやこめいしょずえ)』は写実的な絵が大きく描かれ、ビジュアルに訴えたものだったので、多くの庶民にも好まれました。

『都名所図会』に描かれた音羽山清水寺や銀閣寺、神泉苑などに足を運び、解説に記された有名な歌や歴史に思いを馳せる、という楽しみ方はスマートフォンを片手に名所を巡る、現代の観光客の姿と重なります。

銀閣寺

銀閣寺

『都名所図会』に描かれた銀閣寺。大きく配置した庭園や訪れる人までが描かれている。
画像提供:国際日本文化研究センター

賀茂の競べ馬 (上賀茂神社)

賀茂の競べ馬 (上賀茂神社)

『都名所図会』に描かれた上賀茂神社の賀茂の競べ馬の様子。
京都産業大学のキャンパスは、上賀茂神社の神体である背後の神山にある。
画像提供:国際日本文化研究センター

音羽山清水寺

音羽山清水寺

『都名所図会』に描かれた音羽山清水寺。多くの僧や旅人が描かれ現代と変わらず賑わう様子がわかる。
画像提供:国際日本文化研究センター

刀剣女子から茶の湯まで「好き」を学びに変えていく

また昨今では「刀剣女子」「聖地巡礼」という言葉が流行し、ゲームコンテンツやアニメ作品とコラボした展示を見たり、舞台になった場所に行くといった旅のスタイルも一般的になりました。

同じく文化学部京都文化学科で教鞭をとる村上忠喜先生もおっしゃっていますが、歴史をたどると宇治のお茶が千利休によって天下一のお茶になり、豊臣秀吉が臣下を引き連れて茶摘み見物をしたことにも通じます。茶の湯という当時、最も関心のあるコンテンツの生産の場の一つを見に行こうというわけです。そういったことも観光の走りと言えるかもしれません。

こうして資料を探し考察を重ねると、観光の原点の一つは人々の興味関心や「何かを好きになる」気持ちであることが分かります。

ならばこの観光の本質を現代の観光業界に置き換えて考えてみる、といった発想もできるでしょう。美術館や博物館といった観光施設の、これからの在り方を考えるヒントにもなるはずです。

観光文化を知ることで、見つけられることとは?

人類は太古の時代から生きるために居住地を変え、あるいは交易を行うために旅を続けてきました。必然的に、旅先で新しいものに出合う「観光」も同時に行われたことでしょう。その成果や記録は世界各地に点在しており、人類と旅や観光は切っても切れない関係であることを物語っています。

「文化」とは人類の営みの集積ですが、現代でもわかりやすく見えている部分は冷たい海に浮かぶ氷山の一角ようにほんのわずかです。この観光文化コースでは人類が作り上げた文化の本質をとらえる活動を、その”ほんのわずか”に見える「旅」や「観光」という視点から紐解きます。

その先に、どれほど巨大な文化の本質やその蓄積が見つけられるのか、ワクワクしませんか。ぜひ一緒に探究していきましょう。

高校生へのメッセージ

高校生へのメッセージ

京都というまちは懐の深いまちです。ここで学生生活を送れる皆さんはとても恵まれています。学生時代は、学問や友人との交友も大切ですが、自分を見つめ、社会のあり方を考え、社会人としての人生をどう歩むかを問い続ける時間でもあります。京都産業大学の学生となった暁には、京都にどっぷり浸かって、自分に肥やしをあげてください。

 

観光文化コース

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