Series グランドデザインへの試み Part4

 創立50周年(2015年)に向けた中・長期ビジョン「グランドデザイン」により、さらに活力ある教育・研究機関へと改革を実施している京都産業大学。スローガン「パワーユニブ」に込められた理想と使命を、力強く語っていただきました。

 

創立50周年に向けて個性豊かな大学へ

大学の大改革ビジョン(京都産業大学 坂井東洋男学長)

「グランドデザイン」を制定

 今年、創立41年目を迎える京都産業大学は、50周年の節目に向けて大きな改革に踏み出した。その名も「グランドデザイン」。躍動感にあふれる個性豊かな大学を目指した、中・長期ビジョンのことだ。

 「社会状況や学生の意識が変化するなか、大学として普遍的に残すもの、改革すべきものをチェックする必要があると考えました。学内の教職員から意見を聴取して集めた約120の提言を基に、教職協働による部会を発足させ、その上に委員会を設けて改革案の議論を重ねました」と京都産業大学の坂井東洋男学長。

 その結果、建学の精神に立ち返る、一拠点の総合大学、社会の負託に応え得る大学というコンセプトを掲げ、「教育改革」「研究改革」「学生支援・社会貢献・キャンパス計画」「管理運営・財政改革」の四つの柱の中に、68のアクションプランが計画された。

 具体的には、今年10月に鳥インフルエンザ研究センターが開設されたのをはじめ、大学院マネジメント研究科に最短2年で修士課程とMBAを取得できる「デュアル・ディグリー・プログラム」を設置。来春からは経営学部に「ソーシャル・マネジメント学科」と「会計ファイナンス学科」を新設するほか、大学院経済学研究科に国内で初めて社会人を対象にした通信教育課程を設けるなど、新しいプランが続々と進んでいる。

 「所属している学部の壁を超えて、資格、技能につながる科目を学べる『テーマ別融合教育プログラム』を2007年度から立ち上げます。予定しているのは弁理士、司法通訳、学芸員など。08年4月には、学部・学科をそれぞれ新設する予定です。一つは、理学部コンピュータ科学科と工学部情報通信工学科を統合再編した情報系の学部。もう一つは、外国語学部に社会科学を融合した国際関係学系の学科です」

 京都産業大学が新学部や新学科を開設するのは、時代の潮流に乗るためではない。建学の精神にある、「社会が求める人材の育成」という姿勢を貫くのに必要な教育を行うためなのだ。

 「大学における教育は、研究なくしてありえません。熱心な教員の姿を学生に見せることこそ、真の人間教育だと思います。本学には優れた研究に従事するが教員が多いですが、より奮起してもらえるよう、研究支援金を積極的に出しています。経済的に研究活動をサポートするのは、それが教育に生かされるからです」

 

学生の満足度を高める様々な支援策を用意

 国際舞台で活躍できるよう留学支援も充実。交流協定を結んでいる世界の25大学へ留学できるほか、協定校以外でも学生が希望する大学については、安全性など留学先としての適否を調査した上で、認定留学として認めている。その上、在学したまま留学する学生には、外国留学支援金まで支給される。また、京都にいながら異文化交流を図れる国際交流会館を用意。居住空間も備わる施設で、日本人学生と留学生がともに暮らしながら、国際感覚を身につけることができる。

 さらにキャンパスも整備する。07年1月には人工芝でできた約1万1340平方・の球技場を、同年3月には室内野球練習場を新設する予定だ。

 「改革に取り組む理由の一つは卒業生のため。本学の学生もやがては卒業生になります。彼らが『京産大の卒業生です』と胸を張っていえる大学でなければいけません。光り輝く母校でい続けるために、私は学生に元気をつける、面白い大学にしたいと思っています。本学の強みは文系、理系合わせた7学部の学生が集まる一拠点総合大学であること。日常的に違うタイプの人間と交わることは、互いに良い影響を与えます。創立50周年を迎える15年には、志を持って何かに打ち込む学生であふれる、個性豊かなキャンパスになっていることでしょう」
 侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論から始まった大改革。京都産業大学のさらなる展開に注目したい。

 

現代GPに採択された学習と就業の融合プログラム
(キャリア教育研究開発センター 並松信久センター長)

現代GPに採択された学習と就業の融合プログラム

 改革を目指す京都産業大学は、キャリア教育にも力を注いでいる。その核となるのが、04年度現代GP(現代的教育ニーズ取組支援プログラム)に採択された「オン/オフ・キャンパス・フュージョン」だ。

 教室での学びと就業体験(インターンシップ)を融合する「コーオプ教育」の考え方を基に、大学主導型で4年間取り組む教育プログラムのこと。1年次に「話す」、2年次に「書く」、3年次には「プレゼンテーション」の能力を養い、各年次で毎年のように就業体験を行って、それぞれの将来を見つめ直す。4年次は就職活動と重なるためカウンセリングを実施して、内定企業や就職先に関連する企業などで就業体験が行われている。

 ユニークなのは、就業体験する企業や団体を基本的に学生本人が探し出すこと。企画書を作り、電話の掛け方などのビジネスマナーを学んで、自らが企業と連絡をとる。自主性が必要だが、関心のある分野の仕事を見られるまたとない機会だ。

 「もちろん、最初からすべてがうまくいくわけではありません。でも、失敗は成功のもと。そこで考えて何かに気づき、大学で学ぶことの重要性を確認することに意味があります。熱心な担当教員が学生をサポートしています」とキャリア教育研究開発センターの並松信久センター長はいう。現在、このプログラムに各学年で約120人が参加。社会の厳しさに触れながら自己成長を目指して積極的に活動している。

学生の可能性を見いだすきめ細かなキャリア教育

 キャリア教育を1年次からスタートさせるのも京都産業大学の特徴だ。入学してすぐに、自身の職業への関心や適性などを分析した「自己発見レポート」を全学生に実施し、4年間の過ごし方を考えさせている。

 その上、早い段階から将来の目標を見据えて学習できるよう、キャリア形成支援科目を1年次から開講。例えば、「チャレンジ精神の源流」では、人気を博したドキュメンタリーテレビ番組に登場した人物から、夢を成功させた感動体験が直接聞ける。「21世紀と企業の課題」なら、産業界で活躍する卒業生をゲストに招き、業界の今を学ぶことができるのだ。

 2・3年次には6種類ある国内・海外のインターンシッププログラムに取り組める。その一方で、将来の目標を見いだしにくい学生に対しては、キャリア意識を促す「キャリア・Re―デザイン」というプログラムを用意。学生一人ひとりに対してきめ細かなキャリア支援を行っている。

2006年12月10日 朝日新聞広告特集より