【法学部】薬物乱用が「絶対ダメ」な理由、ちゃんと説明できますか?-きょうと薬物乱用防止対策推進事業

2022.09.09

きょうと薬物乱用防止対策推進事業の一環として、有識者による講義とワークショップのイベントが本学で開催され、講師の一人として法学部 成田 秀樹教授が登壇しました。成田ゼミの学生の他、京都府内の高校生などが参加し、薬物乱用について学びました。
「イベントの開催趣旨・概要」「皆さんに知ってほしい薬物乱用のこと」「成田教授の講義内容」につ いて、紹介します。

(学生ライター 外国語学部4年次 福崎 真子)

イベントの開催趣旨・概要

このイベントは、京都府、京都市、京都府警察本部、PTA、大学関係者、業界団体など約150の団体で構成される「きょうと薬物乱用防止行動府民会議(以下「府民会議」)」が主催するイベントです。府民会議は京都府民、特に青少年の薬物乱用ゼロを目指し、薬物乱用防止にかかる啓発活動や情報交換などで、府民一人一人の薬物乱用防止に対する認識を高めることを活動目的としています。

今回のイベントは、参加者が有識者の講義を通して薬物乱用について理解し、その未然防止の重要性を再確認することを目的に行われました。

成田教授と成田ゼミの学生7人の他、京都府警察本部少年サポートセンターの辻係長、京都少年鑑別所の黒川主席専門官、京都府薬剤師会 学校薬剤師部会の橋本会長、京都府内の高校生(京都府立朱雀高等学校、京都市立塔南高等学校、福知山成美高等学校)14人が参加しました。

皆さんに知ってほしい薬物乱用のこと

「薬物乱用」という言葉を聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。

「なんとなく、悪いことだって分かるけど…」
「どんな風に危険なのか、詳しく説明できる自信はない…」
「自分にはあまり関係のないこと…」

薬物乱用とは「薬物や薬品を本来の医療目的から外れて使ったり、医療目的でない薬物を不正に使ったりすること」をいいます。覚醒剤や大麻、コカインなどの違法薬物以外にも、市販されている薬を遊びの目的で使ったり、必要以上に大量に服用したりすること(オーバードーズ)も規制されています。

会場の様子 真剣に耳を傾ける学生

人々はなぜ薬物にはまってしまうのでしょうか。多くの場合、その原因は「人間関係」なのだそうです。「周りの友達が薬物を使っているのに、自分一人だけ使わないなんてできない」「せっかく仲間に入れてもらったのに、薬物使用を断れば縁が切れてしまう」などのしがらみが、薬物を使い始めたり、使い続けたりするきっかけとなることが紹介されました。

薬物乱用が厳しく規制される理由は、薬物が人間が生活していく上で最も大切な「脳」を侵してしまうからです。依存症や精神障害などによって一度ダメージを受けた脳は、決して元の状態には戻りません。「薬とは、自然治癒力のある健康な身体を取り戻すために使う物である」と、違法薬物と普通の薬物の違いについて詳しく説明がありました。

成田教授による講義 - 予防医学の視点の重要性

成田教授による講義では、犯罪や非行の対策を講じる上での「予防医学の視点の重要性」について説明がありました。

刑事政策で守られていた社会の安全が揺らぎつつある

はじめに成田教授は、「犯罪や非行が起きてしまった後、刑罰などで事後対処をする対策(刑事政策)によって安全が保たれていた社会が、現代になって揺らぎつつある」と考えを述べられました。その理由として、刑事政策と並ぶ社会安全のためのもう一つの柱として「家族や地域の人間関係」があり、昔はそれらが犯罪の誘惑から人々を守っていた(予防していた)ことを紹介されました。

講義を行う成田教授

「近年、世界的に地域社会での人々の繋がりが薄くなり、家族や友人関係の在り方が変化しています。犯罪や非行が起きてしまう前に先手を打つ『予防』という観点から、さまざまな対策を考える必要があるでしょう。国や地方自治体、警察に頼りきりでは本当の問題解決にはなりません。大学生や高校生、教育者も含め、私たち一人一人が『社会安全の担い手である』と自覚して『参加する』必要があります」と、参加者へ力強く語られました。

犯罪の予防方法を「予防医学の視点」から考える

薬物乱用への効果的な対策を考えるにあたって、予防医学の視点について説明がありました。

予防医学では、疫病を増減させる原因について、「保護要因」と「リスク要因」の2つに分けて整理しています。「保護要因を増やし、リスク要因を減らす」という視点で効果的な対策を考えるのです。成田教授は「この枠組みは犯罪や非行の対策においても同じく活用できると考えています」と述べ、詳しく解説されました。

保護要因(増やすべき) リスク要因(減らすべき)
疫病を予防したり減少させたりする要因 疫病にかかるリスクを増大させる要因

次に各要因の具体例を挙げ、社会全体の保護要因を増やし、リスク要因を減らすことで、犯罪や非行を予防していくことの重要性を強調されました。また、さまざまな要因が相互に影響を与え合って複雑化した結果として犯罪や非行が起こってしまうことから、複数の社会的問題に同時にアプローチすることの必要性を語られました。

保護要因(増やすべき)
犯罪や非行を予防したり減少させたりする要因
リスク要因(減らすべき)
犯罪や非行が起きるリスクを増大させる要因
ポジティブな目標を持つ仲間 子ども虐待の被害者・認知のゆがみ
愛情が満たされている家庭 不良仲間の存在
仕事 暴力団など背後にいる大人
結婚 発達障害など
親になる リスク要因

講義の後にはパネルディスカッションやワークショップが行われ、参加者はさらに理解を深めた様子でした。

府民会議による昨年のイベントの様子や、その他さまざまな取り組みについては、京都府のWebサイトで確認することができます。興味のある方はぜひご覧ください!
薬物乱用が私たちにとって身近な問題であることを感じていただけるのではないでしょうか。


薬物乱用防止に関する知識を一からおさらいできた他、自分の「なんとなく」な意識を「絶対」に変えることができた非常に良い機会でした。一人でも多くの人に「薬物乱用は危険である」という思いを持ってもらえることを願っています。

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