リーダーのコミュニケーションから国際関係を見る
~国際関係学部教員によるNews解説ワークショップ~

2021.07.26

「国際関係学部教員によるNews解説ワークショップ」は、国際関係学部の教員が、専門分野に関するニュースやトピックスを学生に分かりやすく解説する昼休みのイベントです。今回のテーマは「リーダーの『演出』を学問する」。主要7カ国(G7)サミットや会談などで行われた「リーダーのコミュニケーションの取り方」から、国家間の関係性を読み解くことができると紹介。リーダーが演出するコミュニケーションの取り方は、私たちの普段の会話やグループディスカッションなどに生かすことができそうです。
(学生ライター 国際関係学部3年次 渡辺 美琴)

今回の担当は、コミュニケーション学・会話分析が専門で、コミュニケーションができるロボットやAIの開発にも携わっておられる川島 理恵准教授です。

はじめに、ノンバーバル行為の分析について紹介されました。米韓首脳会談で、韓国のムンジェイン大統領が米国のハリス副大統領と握手をした後に、その手を拭ったというシーンを例に解説されました。この行為はメディアでも取り上げられ、レイシズム(人種主義)だと批判を受けた行為です。

私たちはコミュニケーションを取るときに、通常と異なるような動きによって行動に「よどみ」を感じると、不自然に感じてしまうのだそうです。例えば、友達に「おはよう」と言ったときにあいさつが返ってこなかったら、相手の機嫌が悪いのか、または聞こえなかったのかと考えるのではないでしょうか。このように私たちは常に、沈黙や行動のよどみに対して何らかの解釈を加えようとしているのです。このことから、先に紹介のあったムンジェイン大統領の行為は問題があるのではないかと判断されたわけです。

次に、会話のコミュニケーション分析について紹介されました。G7サミットにおける写真撮影時の英国リーダーたちの振る舞いが紹介されました。会議後のぎこちない雰囲気の中でエリザベス女王が「Are you supposed to be looking as if you are enjoying yourself? (楽しんでいるようにするべき?)」と発言しました。イギリス王室の代表として振る舞うべきエリザベス女王が、サミットの写真撮影=堅い雰囲気という前提をわざと崩すような質問をすることで、逆にホスト国の代表としてその場の空気を和ませることに成功したといえます。その場でどう振る舞うべきかということを理解した上での発言であり、場を楽しいものにする「リーダーの演出」が成功した事例だと、川島准教授は解説されました。

「コミュニケーションによってその場における関係性が決まり、それに基づいて社会制度がつくられて社会ができあがっている。人と人とのコミュニケーションが社会を形づくっているということに魅力を感じてこの分野の研究を始めた」と、コミュニケーション学を学ぶ面白さについて語られた川島准教授。普段から取り入れられるコミュニケーションのポイントとして「肩の位置を外に向けて開くこと」を意識するだけで周りの人が会話に参加しやすくなると紹介されました。コミュニケーションの取り方を考えることは、私たちが面接やグループワークを行う際など、さまざまなバックグラウンドを持つ人と関わるときの大きなヒントになりそうです。


コミュニケーションの取り方から国際関係を分析するというのは新たな視点でした。国際的な事柄を学ぶときには、政治や経済の関係性に目がいきがちですが、コミュニケーションの切り口から国と国との関わりを見ることで、政治や経済の面からは見えない側面が分かることに感動しました。
熱心に解説を聞く受講生
身振り手振りを使って解説される川島准教授
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