鉄道車両の製造におけるサプライチェーンマネジメントについて、柿内康平さんが講義

2021.01.18

2020年11月17日、経営学部の授業「サプライチェーンマネジメント・ケース分析」にて、ゲスト講師を招き講義を行いました。今回は、本学経済学部の卒業生で、現在、川崎重工業株式会社で活躍されている柿内康平さんをお迎えしました。
「サプライチェーンマネジメント・ケース分析」では、商品を製造する際に原材料の調達から販売に至るまで、多くの部門や企業が関わる際に無駄のない流れを構築するためのマネジメントを行う“サプライチェーンマネジメント”を演習形式で学んでいます。

まず始めに、柿内さんが勤めている企業の業務である、鉄道車両の製造業務の特徴を話されました。鉄道車両を製造し、運営会社に引き渡すまでには1.5~2年の長い年月がかかると言います。売上は引き渡した時点で計上をするため、長い場合2年間は仕掛品として計上し、鉄道車両を製造する企業にはお金が入らない、つまり“キャッシュアウト”の期間が続くというのが特徴的だそう。そのような製造から引き渡しまでの流れの中で、鉄道車両製造におけるサプライチェーンに当たる部分は、「部品の調達から製造、完成車両の納入とこれらに付随する物流プロセスである」と柿内さんは話します。

また、鉄道車両の製造は個別受注生産のため、注文がないのに車両を作ることはなく、部品などの在庫を持たないことも特徴の1つだそうです。そのため、「必要なものを必要な時に必要なだけ」という考え方が重要です。ただし、この考え方が、製造する中で難しい課題を創出してしまうこともあると話します。「リードタイム不足」「設計変更の混乱による工程遅延」「他の業務にも影響する」の3点を挙げ、鉄道という特殊なものを製造する上での課題点を詳しく解説してくださいました。

次に、鉄道車両を製造する上での優先順位について説明がありました。「Safety(安全)」「Quality(品質)」「Delivery(納期)」そして「Cost(コスト)」の順番で考えることが重要だそう。コストを考える必要はあるものの、安全や品質を最優先することで、鉄道車両を製造する企業の社会的責任を果たすことにもつながると、過去の事故を例に優先順位の重要性を語りました。
さらには、サプライチェーンマネジメントには欠かせない、部品を製造するサプライヤーとの関係性も解説しました。個別受注生産として、それぞれの鉄道車両に必要な窓やいすなどの部品は、サプライヤーと共同で開発・改善を進めるため、頻繁に調整が行われ、協働の度合いが高いことも特徴の1つと話されました。


今回は経営学部の「サプライチェーンマネジメント・ケース分析」を取材しました。これまでも食品業界のサプライチェーンマネジメントを学んできたという受講生たちですが、商品のサイクルが全く違い、さらにイメージも持ちにくい鉄道車両という領域の話は少し難しかったかもしれません。それでも、実際に働く実務家の方からの講義により、知識の幅が広がったのではないかと思います。今回得た知識を参考に、学生たちには分析を頑張ってほしいです。

(学生ライター 経営学部4年次 千石 里絵)

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