理学部の諏訪 雄大 准教授が超新星ニュートリノについての主著論文を出版

2021.01.28

成果

理学部宇宙物理・気象学科の諏訪雄大准教授は、原田了氏(東京大学)、中里健一郎助教(九州大学)、住吉光介教授(沼津工業高等専門学校)と共同研究を行い、超新星ニュートリノに関する解析的な研究成果をまとめ、新しい主著論文をProgress of Theoretical and Experimental Physicsから出版しました。

掲載論文

題 目:Analytic solutions for neutrino-light curves of core-collapse supernovae
    (重力崩壊型超新星爆発におけるニュートリノ光度曲線の解析解)
著 者:諏訪雄大、原田了、中里健一郎、住吉光介
掲載誌:Progress of Theoretical and Experimental Physics, 2021, 013E01 (2020年10月23日オンライン公開)
    https://academic.oup.com/ptep/article/2021/1/013E01/5936538
    (オープンアクセスのため、どなたでも閲読可能です)

背景

太陽の約10倍以上の重さを持つ星はその一生の最後に大爆発を起こすことが知られています。超新星爆発と呼ばれる、星の生涯のグランドフィナーレです。爆発するために莫大なエネルギーが必要となりますが、このエネルギーは星の中心部(コア)が急速に重力収縮することで解放される重力エネルギーを源泉とします。実は、この重力エネルギーのうち爆発に使われるものはわずか1%ほどしかなく、残りの99%は別のエネルギーに変換され宇宙空間に放出されることがわかっています。このエネルギーを運ぶのは、ニュートリノと呼ばれる素粒子です。

人類が史上初めて観測した太陽系外からのニュートリノが、まさに超新星からのニュートリノでした。1987年のことです。当時の装置の規模と超新星が遠方で起こったことにより、観測されたニュートリノはわずか20個ほどでした。現在の観測装置を用いて銀河系内の超新星ニュートリノを観測することができれば、数千個のニュートリノをつかまえることができると考えられています。また、日本で建設が進んでいる次世代のニュートリノ観測装置が完成すれば、さらに10倍の数のニュートリノが検出されると期待されています。超新星ニュートリノは理論と実験の両サイドで急ピッチで研究が進行している、非常にホットな研究分野です。

研究概要

通常、超新星ニュートリノを計算するには複雑なニュートリノ輻射輸送方程式を数値的に解かなくてはいけません。つまり、式の解を数式で表すのではなく、コンピューターで数値データとして式を満たすデータを作成するのです。しかし、数値計算で得られるのは広大な可能性のなかのとある1ケースだけで、他のケースを計算するには多数の数値計算が必要となりあまり現実的ではありません。一方、式の解を数式で表せれば(これを解析解といいます)、様々なケースを数式で扱うことができ、具体的な値を代入することで様々なケースをわずかな計算で求めることが可能になります。

この論文で諏訪准教授らのグループは、複雑な式に物理的、数学的に適切な近似を施すことで簡略化し、さらには解析的に解くことに成功しました。また、この解析解をかつて諏訪准教授のグループが行った数値計算(紹介記事)と比較することで、解析解が数値解を見事に再現することを示すことができました。この解析解は、近い将来に銀河系内で超新星爆発が起こった際に、観測データを物理とつなぐために非常に有用なものだと考えられます。

参考

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