理学部 米原教授と東京大学などの共同研究グループが、雪線付近にある海王星質量程度の系外惑星の存在を明らかにしました
2019.11.06
内容
2017年11月1日未明(日本時間)、日本のアマチュア天文家である小嶋正氏(群馬県)が牡牛座方向に偶然、未知の増光現象 Kojima-1 を発見しました。
その後、この現象が太陽系外惑星(以後、系外惑星)の発見に有効な重力マイクロレンズ現象(図1)と判明、理学部 米原厚憲教授、ならびに、この現象の発見当時、米原厚憲教授が研究指導を行っていた理学部学部生・理学研究科大学院生ら(*1)のグループは、本学神山天文台の荒木望遠鏡に搭載された撮像装置(ナスミスイメージャー)を用いて、この現象の追跡観測を行いました(図2)。得られた観測データや、東京大学の福井暁彦特任助教らのグループが国立天文台岡山観測所の望遠鏡などによる追跡観測から、Kojima-1 を引き起こした恒星Kojima-1Lや系外惑星Kojima-1Lbの特徴を正確に測定することに成功しました。
観測データの詳細な解析から、Kojima-1 Lは地球から約1600光年先にある太陽の約0.6倍の質量を持つ恒星であること、またKojima-1Lbはその恒星から太陽・地球間と同程度離れた半径を公転している、地球の約20倍の質量(海王星質量程度)を持つ惑星であることが判明しました。
重力マイクロレンズ法による系外惑星探査は地球から遠く離れた恒星周囲の、恒星から比較的離れた半径を公転している系外惑星を見つけるための強力な手段であり、天の川中心方向について精力的に探査が行われてきました。今回の観測でその特徴が明らかになった系外惑星系は、重力マイクロレンズ法を用いて発見された恒星周りの系外惑星の中では、これまでで最も地球に近いものになります(図3)。
なおこの系外惑星が公転している半径は、ちょうど雪線(*2)付近に位置していることから、惑星の材料が豊富で、惑星が活発に形成されたと期待される場所にいる系外惑星を発見したことになります。一方でこの雪線付近では、その他の系外惑星発見手法も含めて、系外惑星を発見することが難しく、未だ十分な探索が行われていません。今回の発見を足がかりに、雪線付近で一体どのような惑星が形成・進化していくのかが明らかになり、惑星形成の理解が更に進むことが期待されます。
米原厚憲教授は、「学生達の精力的な観測がこのような興味深い発見につながり、大変嬉しく思います。これまで、神山天文台の荒木望遠鏡を用いて、天の川銀河中心方向の重力マイクロレンズ現象を用いた遠方の系外惑星探査のための観測を行ってきましたが、まさか同じ手法で、全く反対方向のこんなに近くに系外惑星があることを明らかにするとは思っていませんでした。まさに灯台下暗し、正直驚きました。また、次の面白い発見につながる観測ができるよう、今後も学生達と一緒に取り組みたいと思います。」と語ってくれました。
本研究の詳しい内容については、以下の本学プレスリリースをご覧ください。
脚注
*1:当時、久保田百合子さん、山田達也さん(2017年度大学院理学研究科博士前期課程修了)、大槻千紘さん、塩谷葵さん(2018年度大学院理学研究科博士前期課程修了)、安達美咲さん、山下一彬さん(2018年度理学部卒業)、西海拓さん、西出朱里さん(現在、大学院理学研究科博士前期課程2年)の8名が、実際の観測に携わりました。
特に山田達也さんは、この現象が修士論文のテーマと深く関連していたことから、本学神山天文台で取得した観測データの解析において、主導的な役割を担いました。
*2:恒星から離れた所では、恒星の光が十分に届かないため宇宙空間の水が液体のままでいることはできず凝結してしまうので、水は氷として存在することになります。このように、恒星の周辺で水が凝結してしまう境界のことを指します。
氷は固体なので、惑星が形作られていく際に、岩石などと同様の惑星の材料となると考えられます。
図
Kojima-1(光源星)がKojima-1 L (レンズ星)による重力マイクロレンズ現象を強く受けていない時の画像が左、重力マイクロレンズ現象を強く受けて普段より明るく見えている時の画像が右。
挿入図は惑星系Kojima-1Lを拡大した想像図。