「図書館書評大賞講演会」で芥川賞作家 羽田 圭介さん講演

2017.06.23

講演会の様子1
6月23日、Lib.コモンズ(図書館ホール)にて「図書館書評大賞講演会」が開催されました。この講演会は、京都産業大学図書館書評大賞への応募促進を図り、読書の素晴らしさを伝える一助となるよう毎年開催されています。今年は『スクラップ・アンド・ビルド』で第153回芥川賞を受賞した作家、羽田圭介さんが講演されました。Lib.コモンズ(図書館ホール)の定員を上回る200名を超える来場者で、熱気に包まれた講演会となりました。


羽田さんは「思考を発酵させるための蓄積」と題して講演されました。

最初に、小説家になるきっかけのエピソードが語られました。勉強が嫌いだった子供の時分に、中学受験のため通っていた塾の国語担当講師から勧められた本を読み始めたことが、読書習慣が身につくきっかけであったことも語られました。この読書習慣は、自分の思考を発酵させるために必要な蓄積をもたらしたそうです。

また、羽田さんは、『黒冷水(こくれいすい)』や『スクラップ・アンド・ビルド』を執筆された際のエピソードから、「自分の原稿(思考)は手元に残しておかない。」「とにかく自分のベストを尽くして一瞬で書き上げる。」「そして、編集者(他人)から客観的な意見を聞くことが大事。」「編集者(他人)からの客観的な意見を全部受け入れないこともあるが、意見を突っぱねる過程で自分の頭が整理されてくる。」「他人の思考を介して物事を進めていくことも、すごく大事。」ということもおっしゃいました。つまり、思考を発酵させるには、自分一人で行うだけではなく、他人の思考を介して発酵させていくこともできるということです。

思考を発酵させることによって、自分と他人との間で差異が生まれます。そこで、羽田さんは、間違った選択を恐れるため何事においてもインターネット上の情報を調べてしまう風潮から、自分の思考が周囲との間で画一化されてしまうことで、この差異が見いだせなくなってしまうことを心配されました。そして、自分の思考を発酵させることにより得られるこの差異を建設的に組み合わせ、ここからオリジナリティーを見出すことの重要性を語られ、更に、思考を発酵させるための蓄積を最も手軽に得ることができる術は読書であり、積極的に読書することを勧められ、講演を締めくくられました。


最後の質疑応答では、参加した学生たちが積極的に質問をし、羽田さんは冷静かつ丁寧に答えてくださいました。


【記事 山本 一心(図書館職員)・写真 天笠 洋一(図書館職員)】
講演会の様子2
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