週刊現代(3月3日号)こんなことで鶏肉と鶏卵を食べて安全なのか
「鳥インフルエンザの闇ワクチン蔓延を警告する」の記事について

 平成19年2月26日 京都産業大学

 平成19年2月19日に発売された、週刊現代(3月3日号)に本学鳥インフルエンザ研究センター長大槻公一教授が社会に対し、鳥インフルエンザを正しく理解していただくため、好意で取材を受けたにもかかわらず、全体にわたり発言していない誤り・誤解・ミスリードが多く、社会に対していたずらに不安を煽る内容となっています。これは許しがたい問題であり、ここに本学としての見解についてご説明いたします。

 なお現在、発刊元である株式会社講談社の週刊現代編集部に対し、本学および大槻センター長への謝罪および記事の訂正をもとめる申し入れを行っています。

 

記事に対する本学の考え

 この記事は、あたかも大槻センター長が一人称として登場し、投稿あるいは語っているような構成となっていますが、センター長は、原稿を書いてはおらず、ましてや一人称の記事になるという説明は取材の際何も聞かされていない上、了解も取られていませんでした。

 取材した記者に対して、微生物学的な基礎知識がないことから、大槻センター長は、記者が理解できるように具体性をもって時系列で解説に努めました。しかし、発言していない内容が書かれていること、事実が誤認されていること(例えば、業界のワクチン使用の強い要望の出されたのは3年前であった。)、不活化ワクチンと生ワクチンとの混同が随所に出ていること。また、闇ワクチンの問題は2年前の過去のトピックにもかかわらず、過去と現在が混在する構成になっていることから、この記事は事実とは異なる非科学的な記事であるといわざるを得ません。

 大槻センター長がこれまで実施してきた鶏病研究からかけ離れた内容であることから、京都産業大学はこの記事の内容を容認することはできません。

 

根本的な記事の問題点および事実と異なる点

1 農林水産大臣の献金問題について

 大槻センター長は、取材時に、この問題について執拗に聞かれています。

 大槻センター長は、「違う世界の話はわからない。」、「政界のことはまったく知らない。」と、最後まで回答を拒否したにもかかわらず、あたかも教授が発言したかのような大臣批判および業界批判が記事となっており、虚偽の記述がなされているといわざるを得ません。

 

2 「鳥インフルエンザの闇ワクチンが蔓延しており危険である、という警告」について

 記事では、鳥インフルエンザの闇ワクチンが蔓延しており危険であると書かれていますが、現在我が国では、生ワクチンは、認可が下りておらず、使用はできません。(*1)また、不活化ワクチンの場合でも、高病原性鳥インフルエンザが大発生して、摘発淘汰が不可能になった場合に限り、都道府県知事の許可が下り、行政の指導の下に慎重に使用されることになっており、闇ワクチンが蔓延するような環境にはありません。したがって闇ワクチンについて警告する必要性がまったくなく、この発言は一切しておりません。

(*1)ワクチンとして接種されたウイルスが、鶏から鶏への感染を繰り返す恐れが多分にあり、その結果、ワクチンウイルスが変異を起こして、鶏に対して激烈な病原性を持つ強毒の高病原性鳥インフルエンザウイルスに変ってしまう危険性が高いことから、生ワクチンは、日本では認可が下りていません。

 

3 闇ワクチンを見過ごしている行政への批判について

 記事では、闇ワクチンから人の新型インフルエンザウイルスができる恐れがあるとし、それを行政が見過ごしていることへの批判が書かれています。

 しかしながら、闇ワクチンから人の新型インフルエンザウイルスのできるメカニズムがまったく述べられておらず、ましてや前述したように国内の養鶏界には闇ワクチンなるものは存在していません。したがって、記事に述べられているような恐れはどこにもないうえ、このような状況で行政を批判する材料はまったくなく、この発言は一切しておりません。

 

4 「ワクチン推進派には業界においても政界においても闇の部分がある、という指摘」について

 現在、業界を始めどこからもワクチン接種を要望する強い意見は聞かれておらず、また、積極的なワクチン接種を推進している団体もありません。宮崎県および岡山県の発生事例においても、早期発見とすばやい初期対応がなされており、ウイルスの封じ込めが成功しているからです。「ワクチン推進派には業界においても政界においても闇の部分がある」という趣旨は、事実とはまったく異なっており、この発言は一切しておりません。

 

最後に

 本学では、平成18年10月1日付けで、鳥インフルエンザ研究センターを設置し、本学の建学の精神に照らして、地域のみならず人類全体の健全な生活維持と幸福に寄与するという使命のもと、鳥インフルエンザ撲滅を目指した対策の確立を当面の目標とした取り組みを行っています。

 今後は、本研究センターにおける研究活動や関係諸機関との連携を通じて、広く社会や国民の皆様に対し、鳥インフルエンザに対する正しい知識や情報の提供などを行うとともに、食の安全と安心を確保できる施策の実現を目指し、社会貢献を果たしていく所存です。

 皆様のご理解とご協力並びにご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。