江州勢多川筋から鹿飛辺迄絵圖

写本彩色 天和3年(1683年)
掛幅装1軸 50.0×132.4cm
※ 標題は書店カタログによる
※ 見返し裏: 「六枚ノ内但シ此□ハ壱枚ナリ」, 「勢田川ヨリ鹿飛□至ル古□」の表記あり
※ 貼りこみあり

 琵琶湖(大津)から宇治田原(鹿飛渓谷)までの瀬田川を描いた絵図である。絵図の裏には「六枚ノ内但シ此□ハ壱枚ナリ」と記されている。交通を主題とした街道図とみられるが、河道内には寄州や岩などの障害物が描かれ、川幅の記載もある。上流の大日山付近の供御瀬は「歩行渡リ之場」(かちわたり)の記述がある。鹿飛渓谷上流(関津村付近)には「是ゟ川下石高ク舩下リ不申候」とあり、この付近までは川船の往来があったことが示されている。また瀬田川に流入する河川には土砂が堆積したようすが細かく描かれている。その多くが土砂の溜まった状況であり、大戸川(田上川)においても河道の半分が堆積している。
 制作年代については、絵図の裏には天和3年(1683)の書き込みが見られる。大戸川(田上川)合流部の八嶋は、その名の通り八つの島の原形を留めていること、石山村付近には児嶋が描かれていることから(「勢多川浚古繪圖」『琵琶湖治水沿革誌』)、河村瑞賢が指導した元禄12年(1699)の大規模な川浚え以前のようすと判断できる。

(引用・参考)
鈴木康久編(2022)『淀川水系 河川絵図集成』一般財団法人近畿地域づくり研究所