財団法人日弁連法務研究財団の認証評価を受けて

 本研究科は、平成20年3月31日付で自己点検・評価報告書を作成し、認証機関である、財団法人日弁連法務研究財団に提出いたしましたところ、同財団が定める法科大学院評価基準に適合していない分野がある旨の評価を受けました。

 この結果は、本研究科にとって誠に遺憾なことでありますが、本研究科の組織をあげて見直す良い機会となりました。評価に関し異議がないとは言えませんが、頂戴いたしました評価結果を真摯に受け止め、ご指摘を受けた事項はもとより、適合すると評価いただいた事項につきましても、更に一層の改善・充実を行って参る所存です。

 なお、不適合と評価された項目につきましては、認証機関の評価報告書にも記載があるとおり、平成20年4月1日着任以降、以下の内容(平成20年4月1日〜9月20日までの進捗状況)で改善を進めており、そのほとんどを解消していることはご理解いただいており、そのことは、日弁連法務研究財団の評価報告書にも記載されていますので、来年度、再評価を受けることにしたいと考えております。

 関係者の皆様および入学試験合格者ならびに本研究科に進学を考えていただいている皆様におかれましても、ご安心いただきますようご報告いたします。 

平成20年10月17日
京都産業大学大学院法務研究科長
藤岡 一郎

京都産業大学大学院法務研究科評価報告書 日弁連法務研究財団(PDF)

第1分野 運営と自己改革

1−2−1 自己改革

(評価基準)自己改革を目的とした組織・体制が適切に整備され機能していること。

1.本学法科大学院の改善状況

(1) 組織・体制の問題点

自己改革を目的とした組織体制は,内部では自己点検・評価委員会,FD委員会,教員評価委員会,研究科会議,そして第三者評価を担う外部評価委員会,学生の組織する院生会がある。しかし,自己点検・評価委員会をはじめ各委員会の活動の不活発さ,外部評価委員会での評価を改革に活かすことの不十分さなど,十分に自己改革を推進してきたとはいえない現状があった。
専門職大学院設置基準の第一条で定められているとおり,「設置基準より低下した状態にならないようにすることはもとより,その水準の向上を図ることに努めなければならない。」のであり,しかも,法務研究科に託された,より良い法曹人を養成するという趣旨に応えられるよう,日々,FD活動も含めて自己改革せねばならないことは当然のことである。 本学における自己改革が不十分となった主因は,(1)自己点検・評価報告書の作成は大学の4年毎の作成時期に合わせており,1年毎の作成ではないために,継続的な改革の意識を徹底させることができなかったこと,(2)実務家教員と研究者教員との連携が不十分であり,議論はどちらかと言えば研究者教員が中心となっていたこと,(3)記録の整備が伴っていなかったこと,(4)教員には情報の共有化が十分に図られていない部分があったこと,(5)諸活動に消極的な教員が存在していたこと,(6)学生に対する組織的対応が十分ではなかったことなどが挙げられる。

(2)組織・体制の改善

1. 内部組織

このような昨年度までの実態を改善するために,今年度(2008年4月1日)から,従来の多くの各種委員会を整理統合し,特に,自己改革を強力に推進するために,研究科長と主要な委員会の委員長,そして広報担当者をメンバーとする運営委員会を設置した。同委員会は,多様な意見のボトムアップ,決定事項のトップダウンの要として位置づけており,法務研究科の中心的機能を担うものである。同委員会の設置に伴い,本年度からは,同委員会で議論して作成した成案を研究科会議に提示し,さらに論議を尽くしたうえで機関決定している。
なお,上記のような同委員会の性質に加え,自己改革の効率的な進展を実現するため,運営委員会の設置からしばらくの間,同委員会に,自己点検・評価委員会,および教員評価委員会の機能を伴わせる扱いをとってきた。
しかしながら,自己点検・評価委員会の機能は,独立した立場から法務研究科の他のシステムを評価する点に求められる。また,教員評価委員会の機能も,独立した立場から法務研究科の教員を評価する点に求められる。この点に照らすと,自己点検・評価委員会および教員評価委員会は,運営委員会から独立させることが組織上望ましい。そこで今回(現地調査時),この旨の指摘を受けたことを契機として,自己点検・評価委員会および教員評価委員会を,それぞれ独立の委員会として設置し活動している。
もっとも,年度途中の新たな委員会設置であり,また,本学のように小規模な法科大学院においてはスタッフの人数が限定されているため,適切な人員配置を行うとすれば,全委員会について改めて人選を行わねばならず,これは組織上の大きい混乱を伴う。そこで,今年度についてのみ,自己点検・評価委員会および教員評価委員会のメンバーは,暫定的に運営委員会のメンバーが兼務することとしたうえ,次年度については,改めて人選から検討しなおすことにした。
次に,2008年度からは,各種委員会のメンバー選定に際して,研究者教員と実務家教員のバランスにも配慮している。すなわち,原則として主要な委員会には必ず実務家教員を一人配置し,実務家としての観点からの意見が反映できるようにしている。委員会の開催日程についても,実務家教員の出席を容易にするために早期から調整を図り,どうしても日程調整できない場合には,必要に応じてメール会議を開催している。加えて,今年度からは研究科会議の開催時間を変更したうえ,主要な委員会をその前後に開催するなど,実務家教員の参加・参画しやすい工夫を行っている。
また,運営委員会における主要な議論内容は,各委員長から所属委員会を通じて研究科会議全員のメンバーに伝わるシステムにしているので,各課題について情報共有・課題共有は,昨年までとは異なって,深まりつつある。その結果,研究科会議における全体の議論に入る前に,論点が整理されているため,法務研究科会議における議論が充実したものになりつつある。
たとえば,FD委員会は,授業内容および授業方法の改善を図ることを目的とした組織であり,その目的を達成するための組織的な研究及び研修にメンバーを参画させ,教育の改善に向けたあらゆる課題に対処させ解決を図るための牽引車としての役割を果たすべき組織である。したがって,FD委員会活動が,効果的に法務研究科の全メンバーをリードできるようなシステムでなければならないといえる。そのため,本研究科では,FD委員会の活動内容及びその趣旨を,継続的に運営委員会に報告し,運営委員会においてもその趣旨の理解を徹底したうえ,たとえば教務委員会の活動においても,その趣旨を踏まえた活動が行われるよう配慮している。この点に関しては,どの委員会も同様の体制となっており,有機的連携に留意した組織構成になっている。
もちろん,顔をあわせての審議は重要であり,運営委員会以外の各委員会は定例の会議を月に一回開催し(原則的に第4週の水曜日,あるいは翌月の第一水曜日),運営委員会は原則的に第2週の水曜日,そして第3週の水曜日に法務研究科会議を開催し,実質的な議論とその段階的な機関決定を容易にしている。各委員会が活発に活動することが,このシステムの出発点であるので,その点でも要となる各委員長が参加する運営委員会の役割は重い。

2. 第三者評価を自己改革に活かす改善

本研究科は,独自の外部評価委員会を設置しており,これまで研究科長と教員が参加し,年に数回の意見交換を行っている。同委員会は,「京都産業大学法科大学院外部評価委員会規程」に基づき,本研究科が社会的使命を果たすことができるよう,本研究科の教育の充実等に関する検証,提言,報告等を行う機関である。運営にあたっては,開催時期にもよるが,授業評価アンケート,入試統計,定期試験結果,新司法試験合否結果等の資料を提供する一方,同委員会からの要望に応えられるよう,学生,新司法試験合格者からの意見聴取や授業参観の場を提供してきた。
しかしながら,本研究科の運営に対する第三者からの意見を適切に反映する点において,このシステムは十分とはいえなかった。その理由のひとつに,外部評価委員に手渡すペーパーベースの資料が膨大なものになり,とても全部を熟読していただくことができない状態に陥っていた点にある。
そこで,外部評価委員会の活動を,効果的に本研究科の自己改革に結び付けるために,今年度から運営委員会のメンバーが外部評価委員会開催時に参加させていただき,事前にあるいは開催当日に要望のあった資料などをお渡ししたうえで,直接に各課題について口頭での説明を行うとともに外部評価委員からの評価を聞き,各委員長が自己の委員会の議論にその評価を反映することとした。
また,従来は,学生に対し,問題が起こればその都度担当委員が対応していたにとどまるが,その欠点を補うために,今後,院生会に対する組織的対応として院生会との定例的会合を予定している。
さらに,授業や施設等に対する学生の評価を得る手段として,各種のアンケートが各委員会で実施されているが,各委員会レベルでの分析に止まらず,運営委員会そして研究科会議での分析を通じて,学生との相互の自己改革を進めるとともに,その結果を公表している。たとえば,教務委員会・FD委員会の行っている授業評価アンケートとそれに対する教員の評価や,成績に係る講評などをTKCを使用して公表している。

(3)各種記録の整備

自己改革を行ううえで各種記録は必須であり,今年度から従来にもまして記録の整備に配慮し,情報・課題・実施の共有化を進めている。各種委員会をはじめ民事法・刑事法など各分野の打ち合わせや研究会などに関する活動記録・議事録は,少なくとも今年度のはじめからは適切に整備しており,自己評価の資料として役立てるとともに,次のステップを検討する際の手がかりとしても用いている。

2.今後の課題

自己改革に関する規定,とくに大学院法務研究科自己点検・自己評価委員会規程なども整備したが,これをいかに現実の取り組みに転化させていくかが今後の課題である。具体的には,次のとおりである。(1)各教員および組織全体でのFD活動に向けた継続的努力をより一層実質化する。(2)大学全体で行う4年に1度の自己点検・評価報告の機会だけではなく,今後,毎年,独自に点検と評価を行い,その結果をホームページで公表する。(3)そのために,自己改革に係る活動記録の整理・保管とその活用をより一層推進する。(4)これまで以上に,情報公開を心がけ,公開可能な情報のうち,各種の改善に役立つと思われる情報は原則として学生のみならず学外に発信し,第三者評価を積極的に活用する。

第5分野 カリキュラム

1.問題点

 本研究科においては,近年,通常の授業を十分に理解できない学生に対するサポートを目的としていくつかの科目を増設した。しかし,以下の4点が問題との指摘を受けた(現地調査時)。

(1)現行カリキュラムの展開・先端科目群に,実質的に法律基本科目に属すると評価されうる授業を9科目(企業法II,民法演習II,刑事法総合演習,民事手続法特論,民事法総合演習II,民事法特論,公法演習I,公法演習II,公法実務演習)設置している。
(2)「随意演習」ないし「随意科目」という名称で,無単位のボランティア授業が行われ正規の科目に準じたものとなっている。
(3)民法や憲法などの2クラス開講している基本科目において,学生に双方のクラスへの出席を認めている科目が存在している。
(4)法律学の初学者を対象として4月はじめに実施している入学者向けガイダンスにおける導入講義は実質的にみれば,学生に登録単位以上の授業の受講の機会を与える結果になっている。

2.結論の略記

 上記の4点の問題点に対する結論を略記すれば以下の通りである。

(1)については,従来,これらの科目は,内容的に法律基本科目で扱う範囲を超えているとの認識に基づいて,本研究科では,展開・先端科目に位置づけてきたものであるが,内容的に基本科目と重なる部分があり,カリキュラム全体で本来要請される整合性を欠く状態となっている以上,適切な科目設置ではないと結論した。
また,(2)については,これらは,授業の内容を充分に理解できず単位を取得できなかった学生,あるいは単位を取得したが充分な理解を達成できなかったと考える学生に対し,復習の機会を与えることを目的として作成した非正規の授業である。したがって,受験対策を目的とするものでは全くなく,未修者中心の本研究科においては,未修者に対するサポートの必要性を痛感し,教員個々の善意によって開講してきたものである。また,現在の時間割に掲載(手書きによるものである。)していることについても,時間割を組む上で,1枚の用紙で熟慮できる方が学生にとっては好都合であろうという配慮から,掲載することにしたものである。 しかし,それぞれの配慮が,正規の科目に準じる扱いを受けるとの誤解を与え,結果的には,学生に登録単位以上の授業の受講機会を与えているおそれがあると結論した。
さらに,(3)については,このような機会の付与は,学生からの要望に基づくものであるが,実質的には学生に登録単位以上の授業の受講の機会を与える結果になっていると受け取られるおそれがあると結論した。
(4)についても,法律学の完全な初学者に対して,法律学の基礎を身につけてもらうための機会であり,本来の授業とは異なるものであると考えたが,しかし現在ガイダンスの一部に位置づけた導入講義は2日半にわたっており,このようなガイダンスは,実質的に見れば,学生に登録単位以上の授業の受講機会を与える結果となっていると受け取られるおそれがあると結論した。
そこで,設立時の原点に立ち返り,これらの科目をいったん廃止することを機関決定した。

5−1−1 科目設定・バランス

1.はじめに

まず,展開・先端科目群で指摘された科目の廃止に伴う対応として,学生に対する2回の説明会と希望する学生との面談形式による履修相談会を開催し,学生と情報を共有するとともに学生に不安を与えないようにしたうえで,以下の(1)(2)の対応をとることにより,学生に対する不利益に配慮した。また,2009年度以降の基本方針として,(3)の対応をとる。

2.対応・改善

(1) 2008年度秋学期に開講予定であった公法演習T(2単位),公法演習U(2単位),公法実務演習(2単位)の3科目のいずれかの履修を予定していた学生に対しては,専任教員とチューターが,学習アドバイスを行うとともに,学生の自主ゼミをサポートする。

(2) 2008年度秋学期に上記3科目の履修を考えていた学生については,展開科目の単位取得の可能性が制限されてしまうため,今年度に限り,春学期に開講している「環境法」と「刑事学」を秋学期にも再度開講することで,履修選択上の不利益を解消した。(なお,本学の「刑事学」は,犯罪原因論と対策論を内容とするものであり,特に対策の中心となる刑罰について考察を行うことを目的としているので,展開・先端科目に配置している。)

(3) 2009年度以降のカリキュラムについては,以下の@Aの観点から基本科目の内容を再検討し,基本科目の授業において受講生が十分な理解を達成できるよう,対応を進める予定である。
1.基礎科目間の連携強化
2.学生の自主的な勉強会へのサポートの強化
  とくに1.に関しては,憲法,民法,刑法などの科目内において,取り上げる判例の数,内容,程度などの調整を図り,所定の授業回数内で最大の 効果を上げる授業方法を,まず各分野毎に検討中である。
また,法律基本科目については,新たに選択科目として企業法IIを設けたが,民法や公法についても,選択科目として,公法演習と民事法総合演習を設置することとした(ただし,単位数制限により,実際に学生が選択できるのは1科目のみ)。
次に,「先端的な法領域についての基本的な理解」を深めるための対策として,従来から,倒産法,知的財産法,経済法につき,講義科目の複数化や演習の設置などを行っている。2009年度はこの方向をさらに進め,消費者法の演習科目を設置し,講義科目との複数開講を行う予定である。展開・先端科目の重要性に鑑み,またこれら科目の充実に伴い,展開・先端科目の取得単位数を18単位以上とする。
以上のように,基本科目に関しては,授業外におけるサポート体制の充実と選択科目の設置によって,基礎的理解の達成とより深い理解の取得の機会を設けるという形で改善を図り,先端科目に関しては,科目数の増加や新たな科目の設置による内容の強化を行うことによって,本学の目指す法曹教育の更なる発展を実現したい。今後は,このような改革が成果を上げるかどうかを不断に検証し,継続的に改革を行う予定である。

5−1−2 科目の体系性・適切性

1.はじめに

まず,「法律基本科目の実質を有する科目である」との評価を受けた展開科目についての対応は5−1−1で扱ったので,ここでは従来設置していた無単位科目(刑法入門,刑事訴訟法入門,随意演習,2クラス開講の双方受講をみとめている科目の存在)についての対応を明らかにする。

2.無単位科目の設置経緯

 従来設置していたすべての無単位科目は,基礎的理解の不充分な学生に対するサポートの目的で行われていたものであり,無単位科目の履修を前提に履修体系が構築されていたわけではない。たとえば,「刑法入門」と「刑事訴訟法入門」は,2007年度までは学生の自主的な勉強会に教員が参加するという形で実施されていた。しかし,自主的な勉強会という形式の場合,あくまで学生のイニシアチブによって運営されているため,これに参加できない学生が生じるという不都合が見られた。そこで,できるだけ広く希望する学生に参加の機会を与える目的で,2008年度から設置したものである(なお,「刑事訴訟法入門」には成績評価を行う旨がシラバスに記載されているが,無単位科目である以上,成績評価は行わないし,出席も任意である。この記載は,教務委員会と担当者(学部教員)の間の連絡ミスによって生じたものである)。
 実務家教員の担当する「随意演習」についても,設置目的が基本的理解の不充分な学生に対するフォローである点は同様であり,これに加え,学生の個別の質問に対して,きめの細かい対応を行うことが目的であった。
 また,2クラス開講科目の双方受講を認めていたのは,学生の要望に基づくものとはいえ,実質的には学生に登録単位以上の受講の機会を与える結果になっていると判断した。

3.対応

 以上のすべての無単位科目については,学生の法律の基礎的理解を達成するために一定の効果をあげているとしても,実質的に,学生の自主的な学習時間を奪うことになり,単位上限の制限に実質的に抵触するため,今年度秋学期より廃止する。  これに伴う学生への対応としては,2.で明らかにした設置の経緯からすれば,本来の自学自習とその集まりである自主ゼミの形に戻るだけなので,特に廃止による対応を考える必要はないと思われる。

5−2−2 履修登録の上限

1.はじめに

  現在開講されている無単位科目が実質的に履修登録の上限制限に反するため,今年度秋学期より廃止することについては,5−1−2に述べたとおりである。ここでは,授業を補う意味で行っていた補習授業,および授業前に行っていた導入講義への対応を明らかにする。

2.補習授業

 補習授業に関しては,文部科学省から2単位科目の授業回数は15回とすることが指示されているところ,本学では従来授業回数が14回であったため,2009年度からは文部科学省の指針に合わせて15回とする。したがって,その限りで補習授業の回数は減少することが予想される。しかし,これにとどまらず,履修登録の上限に実質的に反しないよう,教員の出張などのために休講した場合を除き補習授業は行わないことを機関決定した。

3.導入講義

 毎年4月のはじめに行っていた導入講義については,通常の個々の講義の最初に導入部分を設けるという形で,講義内容に吸収して発展的に解消することを機関決定した。

第9分野 成績評価・修了認定

9−1−1 厳格な成績評価基準の設定・開示

1.はじめに

厳格な成績評価基準をどこに求めるかについては,今後も検証を続けていかなければならないが,現在(平成20年9月20日)までに議論を積み重ねてきた結果,以下のことを機関決定した。

2.厳格な成績評価のための指針

成績評価については,シラバスおよび第1回目授業時のガイダンスにおいて,担当教員が,より具体的な評価基準を明示する。その際には,法曹に必要な2つのマインド(「法曹としての使命・責任の自覚」,「法曹倫理」)と7つのスキル(「問題解決能力」,「法的知識」,「事実調査・事実認定能力」,「法的分析・推論能力」,「創造的・批判的検証能力」,「法的議論・表現・説得能力」,「コミュニケーション能力」)との関連性を明らかにし,当該科目でいかなるマインド,スキルの獲得を目的とするのか,そしてその到達度について明示・説明することとした。

3.成績評価の具体的基準

(1)成績評価(単位認定)は絶対評価であることの再確認。
(2)成績判定は,その定期試験と平常点を総合して行うが,具体的にはそれぞれの評点を合算する方法による。
(3)成績判定において,定期試験は50〜70%の範囲,平常点30〜50%の範囲の比重を与えるものとする(平常点は,小テスト,レポート等の評点をプラス評価とし,欠席をマイナス評価として評点をつける)。この前提として,出欠確認のために,授業毎に適切な方法をとるものとする。
(4)絶対評価としての到達目標および上記(2)(3)については,各科目のシラバスに記載する。
(5)再試験は廃止する。
(6)成績評価の根拠となる資料を組織として保管し,教務・FD合同委員会を中心に検証を行い,研究科長に報告し運営委員会に諮り,研究科会議に報告する。
(7)成績の(著しい)偏りがある科目については,是正を求める。

なお,授業出席確認に関する取扱いについて,以下のことを機関決定した。
○遅刻・早退は不利益に扱う。
○授業開始後30分以上の遅刻・および60分経過前の早退は欠席扱いとする。
遅刻・早退は,不利益扱いとするが,具体的な評価(たとえば,「1回1点の減点対象にする」ないし「3回で1回の欠席扱いとする」など)は,授業の特性に応じて担当教員が決定する。ただし,その扱いはシラバスにおいて公表し,その妥当性についてはFD委員会および教務委員会で検討する。
○出席回数が全授業回数の3分の2に満たないときは,定期試験の受験資格を喪失する。

これらを履修要項に記載する際の以下のモデル案を研究科会議において提示した。 「授業への出席回数が全授業数の3分の2を満たさない場合には,定期試験の受験資格を失う。また,授業開始後30分以上の遅刻および授業開始後60分経過前の早退は,欠席扱いとする。」

 さらに,出席の確認方法について,講義形式の多人数クラスにおける自動出席記録システムの導入を機関決定するとともに,演習などの少人数クラスにおいて現在実施している教員の中から3名の教員の方式モデルを研究科会議において紹介し,今年度秋学期からの参考に供した。なお,自動出席記録システムとは,学生に予め電子式の読み取りカードを配布しておき,学生がカードリーダにこれを通すことによって,自動的に出席日時を記録するシステムである。このシステムは,2009年度から導入する予定である。

4.成績評価の公表・点検

昨年度から開始した制度である「試験問題の解説および成績評価に関する講評」の充実と統一を図るために,研究科長名で,2008年7月9日に「成績評価に関するお願い」という文書と講評のサンプルを配布して,「試験問題の解説および成績評価に関する講評」の提出を各教員に求めた。 現在,全科目の講評をTKCのサイト上に掲載して全学生および全教員に公表しているが,昨年度まで,講評のスタイルや内容についての点検が不十分であったので,今年度からは,教務委員会において,すべての講評を閲読し,問題がある講評については修正を教員に依頼することによって,本制度の趣旨の実現を確保している。2008年度春学期の成績講評等については,添付の資料を参照していただきたい。

5.成績分布表の見直し

2008年度版の履修要項には,GPAによる成績評価の項に,標準的な成績分布の表が掲載されているが,数年前から,この表は「目安とする」こととしており,履修要項にも,「目安とする(履修者が少数の科目等,この方法を適用することが適当でないものを除く)。」と記載していたが,相対評価と誤解を与えるおそれのあることが判明したので,来年度の履修要項からは削除することとした。
なお,今年度秋学期から適用する「成績評価の基準」および「成績分布のモデル」については,下記を参照していただきたい。

成績評価の基準
区分 評価 点数 成績基準
合格 100点〜90点 当該科目の学修目標を十分に,またはそれを超えて達成しており,非常に優れている。
89点〜80点 当該科目の学修目標を達成しており,優れている。
79点〜70点 当該科目の学修目標について標準的な達成度を示しているが,いくつかの評価事項については最低限の水準を満たすにとどまっている。
69点〜60点 当該科目の学修目標について最低限の水準を満たしている。
不合格 不合格 59点以下 当該科目の学修目標について最低限の水準を満たしておらず,さらに学修が必要である。
出席日数不足 授業への出席回数が全体の3分の2を満たさないとき
試験欠席・棄権 定期試験を欠席・棄権した場合
成績分布のモデル

(1) 合格者の成績分布は,おおむね次のとおりとする。ただし、合否の基準は絶対評価とする。

評価 割合
5%以内
10%〜25%
25%〜40%
 

(2) ただし,履修登録者数が10名程度の科目については,前述の(1)に示す成績分布モデルを満たす必要はない。しかし,この場合であっても,特段の事情がない限り,秀の評価を受ける者の数が全合格者の10%を超えないこと。
(3)前述の(1)及び(2)の成績分布を著しく逸脱している場合は,採点の再検討を行うことがある。このため,成績評価がわかるよう,定期試験,レポート結果,小テストなど,受講者毎に成績表を作成しておくこと。

9−1−2 成績評価の厳格な実施

 その前提である「厳格な成績評価基準の適切な設定」に関しては9−1−1に述べた通りであり,その設定した厳格な評価基準をこれまで以上に実施できるかにかかっている。今後は,複数教員のいる民事法,刑事法,公法などがこれまでそれぞれその内部で調整してきた成績評価に関する分野別の議論を活発化する一方,教務委員会,FD委員会,運営委員会そして研究科会議においてその実施状況(成績の根拠資料など)を逐一点検し,それを各教員の成績評価に反映させ,厳格に行うシステムをさらに強固にし,成績評価の「厳格な実施」を実現する。
 このような成績評価の厳格な実施を担保するため,成績評価の根拠資料となる小テスト,レポート,定期試験の答案(またはそれらのコピー),出席確認の記録を各教員が手元に残すこと,および,質疑応答等の実施・評価記録を各教員が作成することを,機関決定した。また,成績評価の採点資料(平常点と定期試験等の配分や調整の状況を明らかにする資料)についても,各教員に作成を徹底することとし,そのために,モデルとなる書式を提示し,その書式(またはそれに準じる各教員作成の書式)への記載を求めることとした(春学期成績について実施済みである)。
 また,このような成績評価の厳格な実施を担保するために,上記のような成績評価の根拠資料(小テスト,レポート,定期試験の答案等)および採点資料(平常点と定期試験等の配分や調整の状況を明らかにする資料)については,成績疑義の申立手続終了後速やかに法学系事務室に提出することとし,法学系事務室において保管することを機関決定した。