The Future 大学院からのキャリアステップ

大学院での研究経験が税理士業務を担う礎となっています。

法学研究科 法律学専攻 修士課程2013年度修了

税理士法人石井会計 税理士 山田 大輔

2014年から出身地の県都岡山市の税理士法人で監査担当者として働いています。京都産業大学大学院を通して税理士資格を取得し、現在は税理士登録も済ませました。勤務先では、顧問先企業20社ほどの税務申告業務を担当しています。私の顧問先では、記帳代行として会計帳票を作成から行う場合もあれば、記帳までは企業内で行う自計化としている場合など、いろいろなケースがあります。いずれの場合も近年では会計ソフトが普及したことで、申告や決算などについての実務は古い時代とは様変わりしてきています。しかし、税務は単純な数字の計算ではありませんから、会計ソフトに任せておくわけにはいきません。税理士は、決算や申告などが正確かつ適切に行われているかを判断する必要があります。

税務は税法などを根拠としており、法律そのものに深く関わってきます。したがって、税理士業務では顧問先それぞれの事例について、それが正しく行われているのか、法に沿って適切に進められているのかなどを検討し判断することが求められます。大学院での研究の経験は、こうした時代の税理士業務を全うする上で非常に大きな力となっています。大学院では研究課題を自ら見つけ出し、探究・考察を深めることが要求されます。こうした大学院での研究の姿勢は税理士業務にも通ずるもので、税法の根本に立ち返って考察・判断する上での大きな礎となっています。今はまだ税理士としての経験は浅いですが、任されている業務に全力で取り組み「この人が担当でよかった」と、何でも相談できる頼りがいのある税理士になりたいと思っています。

STEP1

税理士を目指したのも税理士になれたのも、本学に進学したから。

私の父は、岡山県で税理士として働いています。だからといって、私は初めから税理士の道を目指していたわけではありません。京都産業大学経営学部に入学したのは、幅広い就職先が選べることなどが理由でした。入学後、簿記や会計の面白さに触れ、実際の税理士の役割をはっきりと知るなかで、その業務の意義や重要性について認識を新たにしました。本格的に税理士資格取得に向けて取り組みを始めたのは2回生の秋からです。試験対策のために通った専門学校には、他大学の学生も在籍しており、彼らには決して負けないぞと大いに奮起しました。振り返れば、税理士の道に進もうと決意したのも、その道に向かって迷わず取り組めたのも、京都産業大学に入ったからだといえそうです。

STEP2

自ら問題を立てて主体的に勉強・研究する意識が身につきました。

税理士試験は3回生の夏から受け始め、毎年1科目ずつ、3年間で会計2科目と税法1科目に合格しました。卒業後に試験を受け続けるという選択もありますが、私は大学院に進学することにしました。その理由の一つには、修士論文を書いて国税審議会に認可されれば税理士試験の科目免除が受けられるということがあります。しかし、それ以上に、試験対策としての税法知識にとどまらず、税法そのものを見る視点で学びを深めたかったからです。税理士試験には、課題に対して想定された正解があります。専門学校のテキストもそのように組み立てられています。これに対して大学院では、税法とは何であり法律とは何なのかといった法律学そのものを学問として学びます。大学院では税務六法を紐解いてその背景や構造を学び、税法を巡る裁判例にも数多くあたることになります。こうして大学院で、自ら問題を立てて主体的に勉強・研究するという意識を身につけることができました。このことが、現在の税理士業務を進める上で、課題を見出し、判断・解決の方向を定めていく上で大きな力となっています。

STEP3

大学院での研究は、現在の業務の実践的な力となっています。

いずれは故郷の岡山に戻り、税理士として地元に貢献したいと考えていましたので、現在の事務所はその第一歩にふさわしいものです。また、規模の大きな税理士法人ですから、さまざまなお客様と接し多様な経験を積むことができます。お客様のニーズ一つ一つに応えることができるように、さらに力をつけていきたいと思っています。現実の税理士業務では、法の条文そのものを理解し、それがどのような状況でどう適用されるのかといった具体的な判断が必要です。大学院で深めてきた判例研究は、そのために直接役立つ実践的な力となっています。大学院で得た主体的に研究する意識とともに、実際の判例に数多くあたれたことは、国家試験の受験勉強だけでは得られない貴重な財産になっています。

The Message

大学院での2年間は、学部での4年間よりもずっと濃密で意義深いものになると思います。学部の勉強や国家試験の受験は、課題が先にあってそのゴールもある程度決まっています。しかし、大学院での学問としての研究は、課題を見つけ出すことから始まりゴールはありません。大学院では「何を学びたいか」と自ら考えることが重要になります。学べば学ぶほど深くて広い世界が見えてきます。これについては、大学院の研究指導教員の先生から伺った「目標と目的は違う」という話が印象に残っています。つまり、税理士になるという目標に到達すれば終わりではなく、そこから人々の役に立つ人材となる将来像を描いて形成していくのが目的です。大学院での研究や修士論文は、率直に言って受験勉強以上に苦しいものがありました。しかし、それを最後まで成し遂げたことは、何にも代えがたい自信につながりました。また、私が現在あるのも、大学院での研究指導教員の先生をはじめ、周囲の支えがあったからこそです。こうした大学院の環境は、人生のなかで本当に貴重なものとなるのではないでしょうか。