研究紹介

理学研究科 物理学専攻 新山雅之准教授インタビュー

「奇妙な粒子で探るクォークの世界」

物質の根源は何?

黒板

我々の体や身の回りの物質を構成している最小単位は何か?中学、高校で分子や原子について習ったかも知れません。分子が物質の性質を特徴づける最小単位です。分子は様々な原子の組み合わせでできています。原子は原子核とその周りを回る電子で構成されています。さらに原子核の中には陽子と中性子があります。そして、陽子・中性子はクォークとグルーオンでできています。電子やクォークには大きさが見つかっておらず、現在はこれらが物質の最小単位と考えられています。
 クォークの間に働く力は強い相互作用と呼ばれ、量子色力学で記述されます。電気の力ではプラスとマイナスの電荷の間に引力が働き、プラス・マイナスの電荷量が等しければ中性になります。量子色力学では赤、青、緑の3色そろうと中性(白色)になり、安定になります。ただし、赤青緑は3種そろって中性となることを色に例えて名付けられたので、本当に色がついている訳ではありません。
 電磁気力は光子が飛び交って伝えられますが、量子色力学はグルーオンという粒子が飛び交って伝えられます。また、クォークの反粒子である反クォークは赤青緑の補色(シアン、マゼンダ、黄)をもちます。クォークには重さと電荷が異なる3種類のフレーバー(香り)があり、アップクォーク (u)、ダウンクォーク (d)、チャームクォーク (c)、ストレンジクォーク (s)、トップクォーク (t)、ボトムクォーク (b)と名付けられています。それぞれのクォークが3色いずれかの色を帯びています。

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 クォークやグルーオンで構成され、強い相互作用をする粒子をハドロンと呼びます。ハドロンには正味のクォーク数が3つのバリオンとクォーク・反クォーク対で出来ているメソン(中間子)とがあります。例えば、陽子はアップクォーク2つとダウンクォーク1つで出来たバリオンで、中性子はアップクォーク1つとダウンクォーク2つで出来たバリオンです。メソンの仲間には湯川博士が予言したπ(パイ)中間子があります。クォーク1つを単体で取り出すことはできず、ハドロン中に閉じ込められています。これをクォークの閉じ込めと呼びます。
 2003年以降、4つ以上のクォークで構成される「奇妙な」ハドロン(エキゾチックハドロン)の候補がいくつも報告され、注目を浴びています。エキゾチックハドロンには多数のクォークが閉じ込めの袋に同時に入ったコンパクトなハドロンや、メソンとバリオンが結合した分子状態の2種類あると考えられています。このようなハドロンの性質からクォーク間に働く力について調べることができます。

クォーク研究に取り組む2つの拠点

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SPring-8は兵庫県西播磨にある電子加速器施設です。加速された電子にレーザーをあて、電子を撃ち落とすとレーザーは高エネルギーのガンマ線となってはね返ってきます。この高エネルギーガンマ線を標的に照射し、ストレンジクォークを含むハドロンを生成、研究しています。原子核中での中間子の質量変化から質量の起源を探る研究や、ストレンジクォークを含む5個のクォークで構成されるペンタクォーク粒子の探査を行っています。
 茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構には電子・陽電子衝突型加速器があります。エネルギーが非常に高いため、重たいボトムクォークやチャームクォークを含んだハドロンを生成できます。2003年以降、Belle 実験ではチャームクォークやボトムクォークを含み4つのクォークで構成されるテトラクォーク粒子の候補が次々と発見されました。また、重いクォークを含む3クォークバリオンではクォーク対が重要な役割を担っていることも分かってきました。2018年から、さらに高統計のデータを取得すべく Belle II 実験が始まりました。このデータからテトラクォーク粒子の性質を詳細に調べていきます。

研究にじっくり取り組める大学院の学び

物理の実験の醍醐味は、実験装置の原理や電気回路の中身、データ解析プログラムの作成など、実験の全てを理解し、測定データを解析して新しい物理の結果を出すことにあります。実験装置そのものが物理現象で成り立っているので、物理の知識をフルに活用します。また、新しい実験には最先端の検出器の開発に挑戦し、過去の実験データを超える精度で新たな測定を行っていくことも魅力の1つです。複雑で大規模な実験装置も単純な動作原理の積み重ねであることが大学院で学べると思います。大学院の間は研究に最大限の時間を割き、実験の1つ1つをじっくり理解して進めることができます。そうして培った知識と経験は社会にでてからもきっと役立つと思います。

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