Pick up 研究室(宇宙物理・気象学科)

「惑星気象学」髙木 征弘研究室

金星の気象現象の謎を解明し、地球の気象学の発展を目指す

地球型惑星に分類される金星には不思議な気象現象が数多く見受けられ、謎多きメカニズムがたくさん存在します。私の研究テーマである「スーパーローテーション(惑星規模の高速東西流)」もその1つであり、自転速度をはるかに超える風がなぜ金星に吹くのか、現在の気象学では未だ解明に至っていません。
有力とされる説の1つに、私が研究している「熱潮汐波(太陽光による加熱によって作られる大気中の波)」のメカニズムがあります。金星探査機【あかつき】で得られた画像や温度データの詳細な分析をもとに、理論と数値計算を駆使して導き出した仮説です。この熱潮汐波の性質をくわしく解明することができれば、スーパーローテーションが生成される仕組みもひもとかれることでしょう。「四日波」や「五日波」といった金星大気中の波とも関係が深いスーパーローテーションを研究することは、地球気象学のさらなる進展につながり、私たちを悩ませる温暖化をはじめとする地球が抱えるさまざまな気象問題の究明に役立つ可能性は高まります。
数値計算と理論にもとづく実証研究を主体としながら、今後はより精度の高い観測結果が得られる金星探査機の開発にも知見を発揮していきたいと考えています。

「太陽系小天体の軌道の進化を研究」樋口 有理可 研究室

天体の軌道から、太陽系の起源と進化を解き明かす

太陽系が46億年前にどのように誕生し、今後いかに進化するのか。その謎を解明するための主なアプローチは「観測」「探査・実験」「理論研究」の3つです。その中で私は「理論研究」によって太陽系の起源と進化に迫っています。
具体的な研究テーマは「太陽系小天体の軌道」。メインとなる研究対象は、公転周期が200年以上の長周期彗星の軌道です。
ある天体が太陽の引力だけを受けて運動する場合は、ケプラーの法則により一定の楕円軌道に定まります。しかし他の惑星、例えば木星の重力に影響を受けるとその楕円軌道からずれていきます。特に長周期彗星は太陽から非常に離れた所も通過するため、銀河潮汐力と呼ばれる銀河系全体からの力も受けて軌道が変化しているのです。そういった軌道の変化を数式や数値計算を用いて研究。数十億年かけて軌道がどのように進化してきたのかを調べることで、太陽系の起源を解き明かす一端を担えると考えています。この研究の魅力は、宇宙や天体の数十億年の進化が比較的シンプルな数式で表せる所です。
学生の皆さんには、例えば小惑星や木星の衛星の軌道について数値計算を行うなど、それぞれの興味に合わせた研究を行ってもらいます。

「惑星大気および惑星表層環境の観測的研究」佐川 英夫 研究室

詳細観測を通して、惑星大気を解き明かす

地球の大気は1気圧、その成分は窒素78%、酸素21%、アルゴン0.9%で占められています。では、地球の隣にある金星と火星はどうでしょうか。惑星本体が岩石でできていることから「地球型惑星」に分類にされるこれらの惑星は、ほぼ二酸化炭素から構成される、地球大気とは成分の大きく異なる大気を持ちます。そして気圧も金星は地球の約90倍、火星は約1/150となっています。特に金星と地球を比べると、惑星の大きさもほぼ同じであるのになぜここまで大気の環境が異なるのでしょうか。そして、これらの惑星大気に普遍的に共通することは何なのでしょうか。地上望遠鏡や探査機から送られるデータの解析をもとにひもとくのが、この研究室の目標です。
私が研究で大事にしているのは「わからなさ」と徹底的に向き合う姿勢です。例えば、惑星大気が発する赤外線や電波のスペクトルを観測し、大気の微量成分を推定する研究手法があります。ノイズ成分しか見えていないようなデータだったとしても、決して無視できません。なぜなら、大事な情報が紛れているかもしれないからです。隅々まで解析しつくすのが、この研究分野の重要なポイント。モニターに映る観測スペクトルとひたすらにらめっこする、一見すると地味な研究です。しかし、データを丁寧に解析した向こう側には、まだ誰も知らない真実があるかもしれません。
そのロマンを、自然をどこまでも突き詰めて探求する面白さを、学生の皆さんにもぜひ感じてほしいと思います。そして、「わからなさ」と向き合えば、情報を論理的に整理する力も身に付くと考えています。物事をあえて抽象化して考えたり、掘り下げて情報収集を行ったり、あらゆる角度から考察する力を養えば、社会に出てもきっと役立つはずです。

「観測的宇宙論」西道 啓博 研究室

理論とデータの融合で、未知の宇宙を解き明かす

私たちの住む宇宙の約95%はダークエネルギー、ダークマターと呼ばれる未解明の存在が担っています。物理法則、コンピュータシミュレーション、そして実際の宇宙の観測を通じて得られたデータを照らし合わせることで、宇宙を支配する基本原理を解き明かすことを目指すのが「観測的宇宙論」です。近年は特にデータサイエンスの手法を活用して、広大な宇宙から得られたデータから何を測定し、どのように解析すべきなのか、その結果、何がわかるのかを明らかにする研究に注力しています。コンピュータシミュレーションを行えば、特定の宇宙論モデルのもとで、どのような宇宙が実現するのかを予測可能です。しかし、シミュレーションされた宇宙と観測可能な実際の宇宙を比較して、どのような宇宙像がより現実に適合するのか議論するには統計の知識が欠かせません。近年急速に発展を見せているAI技術は、宇宙論の景色を一変させる可能性を秘めています。
研究室では、難解な数式や複雑なプログラムを読み書きし、ビックデータの分析に取り組みます。AIが最先端だから取り入れるのではなく、宇宙ビックデータの解析に本当に有用なAIの活用法を探求し、実践しています。研究者になると、社会的に不安定になるのではと心配する人もいるかもしれませんが、研究を通して養われるこうしたスキルは、宇宙論に限らず幅広い分野で必要とされています。当分野では、すばる望遠鏡による大型観測プロジェクトで日本が存在感を高めており、満点の星が降るように押し寄せる膨大なデータを適切に処理する新しい方法論の開発に携わることで、宇宙論分野で世界をリードすると同時により幅広く、データ科学のフロントランナーとして活躍するための素養を身に付けることができます。
膨大な情報が氾濫する今の時代、研究室の学生には、科学的な目で世界を見て、批判的に分析する姿勢を大切にしてほしいと思います。将来を杞憂することなく、やりたい研究にどっぷりつかって、理系の最先端を担える人物を目指してください。

「地球型惑星大気の電波掩蔽観測」安藤 紘基 研究室

金星の強風“スーパーローテーション”が生まれるメカニズムとは?

地球、金星、火星といった地球型惑星における大気構造や大気現象について研究しています。主な研究手法は、人工衛星から出る電波を使った電波掩蔽(えんぺい)法。受信する周波数から気圧や気温を明らかにする方法で、わかりやすくいえば電波という体温計を使って惑星の状態を調べるようなイメージです。
特に私が注目しているのは、地球の双子星と呼ばれる金星の大気構造。重力や質量など基本的なパラメーターはよく似た2つの惑星ですが、大気の状態はまったく異なります。たとえば金星では「スーパーローテーション」と呼ばれる毎秒100mのすさまじい強風が星全体を覆うように吹いていますが、この風がどうやって生成・維持されているのかは謎に包まれています。果たして地球の気象学はどこまで通用するのか。人工衛星のデータを使ってその謎に踏み込んでいくのがこの研究の醍醐味のひとつといえます。
水が存在しない金星は、いわば“究極の温暖化”が進んだ状態。つまり地球の悲惨な未来を映す鏡ともいわれます。金星の大気構造を知ることは、地球の温暖化を食い止める手掛かりになるかもしれない。地球の未来や環境問題を考えるうえでも有意義な研究といえるでしょう。

「さまざまな銀河の中心に潜む巨大なブラックホールの観測」岸本 真 研究室

観測装置の限界を超え、謎多きブラックホールに迫る

さまざまな銀河の中心に、明るく光る巨大ブラックホール系があると言われ始めたのが今から50年ほど前。そして、ここ10-20年の研究で、ほぼすべての銀河の中心に巨大ブラックホールがあることもわかってきました。しかし、ブラックホールの研究はまだまだ発展途上。こうした系は中心部に円盤構造を持つと言われ、可視光や赤外線で明るく光っていますが、やはり遠いので、地上最大の光赤外望遠鏡をもってしても、その構造を直接捉えることができません。

つまり、「空間分解能」が絶対的に足りない。空間分解能とは接近した2つの点をそれぞれ独立し た点として見分ける能力です。ブラックホールの観測においては、地球から月面にいる2人の人間を見分けるほどの緻密な精度が必要になります。

そこで、私の研究室ではこの空間分解能を飛躍的に高める観測を目指しています。その1つが、複数の望遠鏡を組み合わせて、より遠くの天体の大きさや構造を測定できる干渉計として使用すること。観測された干渉縞から、天体の画像を逆算する方法です。こうした赤外線干渉計での観測が、遠くて暗い巨大ブラックホール系でも十分可能であることを、2009年あたりから積極的に示してきました。また、最近では2021年に、カリフォルニアにある干渉計を用いて,巨大ブラックホール系の赤外線観測で世界最高の空間分解能を達成しました。

今ある観測装置の限界を超えるためには観測の本質を理解し、さまざまなアイデアを常に巡らせておくことが大切。観測技術が向上すれば、宇宙物理学が前進する大きな一歩になります。

「火星の砂嵐」小郷原 一智 研究室

火星の気象について研究しています。
もともと砂場と岩場が続く乾燥した惑星ですが、地球と同様に大気があり晴れや曇りといった気象が存在します。
中でも私が注目しているのは火星を覆う巨大な砂嵐(ダストストーム)です。この発生の仕組みを調べるため、観測データを基に砂嵐が起きた時の気圧配置や大気中の砂の量を解析し、研究を進めています。
実は近年、火星と地球は驚くほど似ていることが分かってきました。例えば地球に熱帯や寒帯があるように、火星も地域によって気候が異なっていたり。最近ではそれぞれの気候の特徴を調べることで、砂嵐の分類や、砂嵐が発生しやすい地域の特定もできるようになってきました。
このように地球の気象学を火星で応用できるのがこの研究の特徴です。2つの星を見比べながら、その共通点を探っていく。
両方の星の気象に詳しくなる上に、「地球とよく似ているけど、ちょっと違う世界」を眺めるような面白さがありますね。
※火星の大気は主に二酸化炭素で構成されています。

「気象力学」 宇宙物理・気象学科 高谷 康太郎 研究室

「冬の研究」をしています。

偏西風の吹き方の図。
地球規模で日本の冬を考える。
私が研究しているのは、“日本の冬”です。よく「今年の冬は暖かい(あるいは寒い)」という話がありますが、そのメカニズムを解明したいと考えたのです。
解明の手掛かりとなるのが「テレコネクション」。遠い(=テレ) ところが、つながって( =コネクション) いる。「エルニーニョ現象が起こると日本は暖冬になる」「ヨーロッパや北米で大雪になると数日後には日本にも寒波が来る」。
こんな現象もテレコネクションの一種です。ではなぜ遠いところの天気が影響し合うのでしょう?それには「偏西風」が大きく関わっています。世界のどこを探しても、日本の上空ほど強い偏西風はありません。真冬は特に強くて秒速70~80mにもなる。面白いのは、この偏西風が気温の境目になることです。大まかにいえば、偏西風の南側は暖かく北側は寒くなる。
そして、この偏西風がテレコネクションによって流れを大きく変えるのです。例えば、エルニーニョ現象が発生することで日本の南にある赤道付近の海面温度が上がると、偏西風が北側に押し上げられます。すると偏西風の南側にある暖かい気温に浴する地域が増える。これが「エルニーニョ現象が起こると日本は暖冬になる」仕組みです。
このように気象の研究を行うことは、地球規模のつながりを考えることでもあります。それだけに何に注目して研究に取り組むかの発想も重要です。学生が卒業研究で扱うテーマはそれこそエルニーニョ現象や、台風の発生件数の違いと理由、京都盆地の空気の流れなど。時々、固くなった頭ではとても思いつかないようなテーマを持ってくる学生がいて、すごく面白いですね。
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