Pick up 研究室(宇宙物理・気象学科)

「地球型惑星大気の電波掩蔽観測」安藤 紘基 研究室

金星の強風“スーパーローテーション”が生まれるメカニズムとは?

地球、金星、火星といった地球型惑星における大気構造や大気現象について研究しています。主な研究手法は、人工衛星から出る電波を使った電波掩蔽(えんぺい)法。受信する周波数から気圧や気温を明らかにする方法で、わかりやすくいえば電波という体温計を使って惑星の状態を調べるようなイメージです。
特に私が注目しているのは、地球の双子星と呼ばれる金星の大気構造。重力や質量など基本的なパラメーターはよく似た2つの惑星ですが、大気の状態はまったく異なります。たとえば金星では「スーパーローテーション」と呼ばれる毎秒100mのすさまじい強風が星全体を覆うように吹いていますが、この風がどうやって生成・維持されているのかは謎に包まれています。果たして地球の気象学はどこまで通用するのか。人工衛星のデータを使ってその謎に踏み込んでいくのがこの研究の醍醐味のひとつといえます。
水が存在しない金星は、いわば“究極の温暖化”が進んだ状態。つまり地球の悲惨な未来を映す鏡ともいわれます。金星の大気構造を知ることは、地球の温暖化を食い止める手掛かりになるかもしれない。地球の未来や環境問題を考えるうえでも有意義な研究といえるでしょう。

「さまざまな銀河の中心に潜む巨大なブラックホールの観測」岸本 真 研究室

観測装置の限界を超え、謎多きブラックホールに迫る

さまざまな銀河の中心に、明るく光る巨大ブラックホール系があると言われ始めたのが今から50年ほど前。そして、ここ10-20年の研究で、ほぼすべての銀河の中心に巨大ブラックホールがあることもわかってきました。しかし、ブラックホールの研究はまだまだ発展途上。こうした系は中心部に円盤構造を持つと言われ、可視光や赤外線で明るく光っていますが、やはり遠いので、地上最大の光赤外望遠鏡をもってしても、その構造を直接捉えることができません。

つまり、「空間分解能」が絶対的に足りない。空間分解能とは接近した2つの点をそれぞれ独立し た点として見分ける能力です。ブラックホールの観測においては、地球から月面にいる2人の人間を見分けるほどの緻密な精度が必要になります。

そこで、私の研究室ではこの空間分解能を飛躍的に高める観測を目指しています。その1つが、複数の望遠鏡を組み合わせて、より遠くの天体の大きさや構造を測定できる干渉計として使用すること。観測された干渉縞から、天体の画像を逆算する方法です。こうした赤外線干渉計での観測が、遠くて暗い巨大ブラックホール系でも十分可能であることを、2009年あたりから積極的に示してきました。また、最近では2021年に、カリフォルニアにある干渉計を用いて,巨大ブラックホール系の赤外線観測で世界最高の空間分解能を達成しました。

今ある観測装置の限界を超えるためには観測の本質を理解し、さまざまなアイデアを常に巡らせておくことが大切。観測技術が向上すれば、宇宙物理学が前進する大きな一歩になります。

「火星の砂嵐」小郷原 一智 研究室

火星の気象について研究しています。
もともと砂場と岩場が続く乾燥した惑星ですが、地球と同様に大気があり晴れや曇りといった気象が存在します。
中でも私が注目しているのは火星を覆う巨大な砂嵐(ダストストーム)です。この発生の仕組みを調べるため、観測データを基に砂嵐が起きた時の気圧配置や大気中の砂の量を解析し、研究を進めています。
実は近年、火星と地球は驚くほど似ていることが分かってきました。例えば地球に熱帯や寒帯があるように、火星も地域によって気候が異なっていたり。最近ではそれぞれの気候の特徴を調べることで、砂嵐の分類や、砂嵐が発生しやすい地域の特定もできるようになってきました。
このように地球の気象学を火星で応用できるのがこの研究の特徴です。2つの星を見比べながら、その共通点を探っていく。
両方の星の気象に詳しくなる上に、「地球とよく似ているけど、ちょっと違う世界」を眺めるような面白さがありますね。
※火星の大気は主に二酸化炭素で構成されています。

「気象力学」 宇宙物理・気象学科 高谷 康太郎 研究室

「冬の研究」をしています。

偏西風の吹き方の図。
地球規模で日本の冬を考える。
私が研究しているのは、“日本の冬”です。よく「今年の冬は暖かい(あるいは寒い)」という話がありますが、そのメカニズムを解明したいと考えたのです。
解明の手掛かりとなるのが「テレコネクション」。遠い(=テレ) ところが、つながって( =コネクション) いる。「エルニーニョ現象が起こると日本は暖冬になる」「ヨーロッパや北米で大雪になると数日後には日本にも寒波が来る」。
こんな現象もテレコネクションの一種です。ではなぜ遠いところの天気が影響し合うのでしょう?それには「偏西風」が大きく関わっています。世界のどこを探しても、日本の上空ほど強い偏西風はありません。真冬は特に強くて秒速70~80mにもなる。面白いのは、この偏西風が気温の境目になることです。大まかにいえば、偏西風の南側は暖かく北側は寒くなる。
そして、この偏西風がテレコネクションによって流れを大きく変えるのです。例えば、エルニーニョ現象が発生することで日本の南にある赤道付近の海面温度が上がると、偏西風が北側に押し上げられます。すると偏西風の南側にある暖かい気温に浴する地域が増える。これが「エルニーニョ現象が起こると日本は暖冬になる」仕組みです。
このように気象の研究を行うことは、地球規模のつながりを考えることでもあります。それだけに何に注目して研究に取り組むかの発想も重要です。学生が卒業研究で扱うテーマはそれこそエルニーニョ現象や、台風の発生件数の違いと理由、京都盆地の空気の流れなど。時々、固くなった頭ではとても思いつかないようなテーマを持ってくる学生がいて、すごく面白いですね。
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