Pick up 研究室

物理科学科

「ソフトマター物理学」岩下 靖孝 研究室

物理学には「物の性質」を探究する“物性物理学”という分野があります。普段よく見聞きする「気体・液体・固体」という物質の三態は、実は非常に曖昧なもの。物性物理学ではさらに複雑な物質や状態に踏み込みます。中でも研究が盛んな分野の一つが「ソフトマター」です。難しくいえば「液体と固体の性質を併せ持つ柔らかい物体」ですが、実際には液晶からゼリーまで日常の中に広く存在する物質でもあります。
ソフトマター物理学では「中間のサイズの構造」が重要な役割を果たしています。分子・原子の「ミクロ領域」と、われわれが目で認識できる「マクロ領域」の中間を「メゾスコピック領域」といいますが、物質の中にあるこの領域のサイズの構造がソフトマターの性質を特徴づけているのです。私の研究室では微粒子を手掛かりに、新たなソフトマターを生み出す研究を行っています。特に今、注目しているのが「砂」です。具体的には「せっけんのような性質を持った新しい砂」をつくることができないか、試行錯誤をしているところです。
そもそもせっけんでは界面活性剤という、水分子と油分子がくっついたような性質を持つ分子が油を包み、水に溶かし込んでいますが、同様のものが砂でつくれないかと考えています。研究が進めば、原油が流失した海にまいて海水と分離させることができたり、地震による地盤液状化現象の防止に役立つようなものができるかもしれません。原子や分子と違い、物質を構成する単位を自在に制御できる利点を生かし、新たな物質をつくり出せるこがこの分野の醍醐味みだと思います。


「質量」の真理に挑みます。

「ハドロンおよびハドロン多体系に関する理論研究」物理科学科 山縣 淳子 研究室

世界で最も小さい単位「クォーク」が結び付いたものが「ハドロン」です。このハドロンに働く強い力が、物質の「質量」に関わっていると言われています。
「質量とは何か?」ーーその問いが私の研究の中心にあります。例えば、同じ個数の原子でつくったアルミニウムと鉄の塊は、体積がほとんど同じなのに質量が倍も違う。何が質量を生み出しているのでしょうか。
そのヒントは、原子よりもミクロの世界、原子核の中に分け入ると見えてきます。原子核は原子の質量の99.9%以上を担っていて、その内部は超高密度の状態。原子核は陽子と中性子からできていて、さらに陽子と中性子は素粒子「クォーク」からできています。
ところが、陽子の持つ3つのクォークの質量を全部足しても、陽子の質量の1%にもなりません。陽子の質量(ひいては身の回りの物質の質量)の残り99%は、実は陽子・中性子の中でクォーク同士をくっつける「強い力」にあると考えられています。強い力は、自然界に存在する4つの力の1つで、残りは「電磁気力」「重力」「弱い力」があります。従って、強い力の解明こそが「質量の謎」に迫る鍵になるのです。
私が研究しているのは、陽子や中間子など、クォークからできている粒子「ハドロン」です。ハドロンが原子核に飛び込んだとき、原子核とハドロンの間にどんな力が働いているのか。これを理論的に調べ、また理論研究の立場から実験の提案をしています。例えば、茨城県の大強度陽子加速器施設(J-PARC)では、炭素原子核に反K中間子をぶつける実験を行っていて、私はその理論解析を進めています。
目的は、理論的に予想されている反K中間子と原子核の間の強い引力を検証することです。反K中間子は宇宙に浮かぶ半径10kmの原子核「中性子星」の内部にも出現すると考えられているので、中性子星内部の状態を再現することにもつながります。


宝探しのような研究です。

「f電子系化合物 の電子構造の 理論的研究」物理科学科 山上 浩志 研究室

ランタノイド系列(原子番号57から71の元素の総称)やアクチノイド系列(原子番号89 から103 の元素の総称)の物性の研究をしています。周期律表を思い浮かべてください。周期律表は、後ろに出てくる元素ほど重くなる傾向にあります。ウランやプルトニウムなどはアクチノイド系列に含まれ、重元素といいます。
日本原子力研究開発機構、京都産業大学、東北大学、大阪大学が共同で研究を行い、世界で初めてプルトニウム化合物のフェルミ面の観測に成功しました。私が担当したのは「相対論的バンド理論」によるフェルミ面の実験結果の解釈。プルトニウムを構成している5f電子が結晶中を動き回っていることを直接示すことができた、という成果になります。
また、大型放射光施設「SPring-8」の放射光を用いて、ウラン化合物の5f電子状態の直接観測にも成功しました。バンド構造とフェルミ面を観測したのですが、これにより電子状態における統一的な理解が一気に進展し、長年の謎であったウラン化合物の超伝導構造の解明が進むと注目されています。
私はウラン、プルトニウムなどのアクチノイド化合物の電子構造と磁性に関する理論的研究を行っていますが、その基本にあるのは、これからのエネルギー問題です。原子力を安全に活用するためには、重元素化合物の性質を徹底的に解明することが重要です。ウランやプルトニウムについての基礎研究はまだまだ不十分で、分からないことがたくさんあります。また、将来の廃炉に向けた材料研究も重要です。
「SPring-8」は兵庫県にある巨大な大型放射光施設。日本国内で非密封の放射性物質を光電子分光法で測れる唯一の施設です。
提供:国立研究開発法人理化学研究所
現在、私は日本原子力研究開発機構の放射光先端物質電子構造研究グループのリーダーを務めています。私自身の研究は理論ですが、SPring-8 の施設を使い、グループでは実験も行っています。私の研究室では、こうした実験をする機会もありますし、大型計算機を駆使して理論研究をしてもらってもいい。
世界を変える可能性がある、宝探しのような研究ができる研究室です。そういうところに興味を感じたら訪ねてきてほしいですね。


電磁気学の常識「V=I R」が通用しない
ナノサイエンスの不思議に迫る

「計算物質科学・ナノサイエンス」物理科学科 内田 和之 研究室

炭素がサッカーボール状に組み合わさったフラーレンや筒状のカーボンナノチューブなどナノスケールの物質は、マクロスケールの物質とは異なる興味深い性質を示します。中高時代に学んだ電磁気学、例えばV=I R(電圧=電流×抵抗)は、ミクロやナノの世界では通用しないのです。電気の流れる速さや滞留は、原子構造をほんの少し変えただけで劇的に変化します。その性質がどのような理由で現れるのかを量子力学を通して明らかにすることを目指しています。


微小な最先端マテリアル、単層カーボンナノチューブの正体を探り可能性に挑む

「単層カーボンナノチューブの 作成・分離・生成とその応用」 物理科学科 鈴木 信三 研究室

未知なる素材に対する2つのアプローチ
研究室において現在、4年次生と取組んでいるテーマは、(1)金属的/半導体的な性質を持つ単層カーボンナノチューブの作製、分離精製及び濃縮、(2) 多孔質ガラス上への単層カーボンナノチューブの作製と応用の2つです。カーボンナノチューブとは、炭素原子が六角形の網目ネットワーク構造を作り筒状になった炭素ナノ構造体であり、直径は1~数nm(1nmは1mの10⁹ 分の1)、長さは数百nm~数μm(1μmは1mの10⁶ 分の1)のものが一般的です。

作製から取組んでこそ明らかになる真実
研究テーマ(1)では、さまざまな太さやねじれ方のカーボンナノチューブが存在する理由について、学生が自らの手で作製、分離精製、濃縮まで行うことで理解しようとするもの。現在、多くの研究室が市販のカーボンナノチューブを実験などに利用していますが、どういった条件のもとに作られたのかが明らかでないと、結果の信憑性が疑われます。カーボンナノチューブを研究室内で作製することには、それを利用した実験結果の信頼度を高める狙いもあるのです。

高品位ディスプレイの実現の可能性
(2)の研究は、イメージとしては微小な穴の空いたガラス板の上にカーボンナノチューブを生やす試みです。これが成功すると全ての光を吸収する完全黒体の作製につながる可能性もあります。また輝度の高いディスプレイや熱伝導に優れた放熱板に応用できるかもしれないと期待しています。これらを研究する醍醐味は、学生自らがモノを作る喜びです。パソコンでのシミュレーションに終始せず、自分でモノを作る喜びは何物にも代え難いものです。また、いずれの研究も物理的だけでなく化学的な手法も利用して進めていきます。物理や数学の基礎を身につけた学生が化学にも興味を持ち意欲的な学びに結びつけていけば、研究者としての将来に役立つ財産となるはずです。
カーボンナノチューブの作製から分離精製、濃縮までを行うことで理解が深まる
変化の様子を肉眼で観察できるのも、この研究の醍醐味
カーボンナノチューブ(単層、先端が閉じたもの)の模型
PAGE TOP