ピックアップ研究室

数理科学科

「結び目理論」数理科学科 山田 修司 教授

「不思議だな」と思える人は、
数学に向いています。

私の専門は「結び目理論」というものです。これは位相幾何学(トポロジー)の一種で、ひもの結び目を数学的に表現し、研究する学問です。現代数学の中では、非常に珍しい「対象が目に見える」ものなので、学生もなじみやすいのではないかと思います。
例えば、この分野のわかりやすいモデルとしてよく挙げられる「ボロミアン環」は3つの輪による結び目です。3つ絡むとしっかりとつながれるのに、1つでも抜けたらほかの2つは離れてしまう。これ以外にも、8の字に結んだり、水引のように結んだり、ひもの結び方はいろいろあります。
結び目理論というのは「この結び目とその結び目は同じものか?」を証明する学問です。ひもを曲げたり動かしたりすると、結び目の形は変わります。しかし、どんなに形が変わっても同じ結び目である、これはほどけないと証明するのは、実は非常に難しいことなのです。なぜなら「できないこと」を証明しなくてはならないからです。
そのため、結び目理論では「これができたとすると矛盾が起きる」ことを証明していきます。結び目の形を数値化したものを不変量といいますが、その不変量をできるだけたくさん用意していくことによって、不可能を証明する。
結び目理論の代表例「ボロミアン環」。3つの輪を組み合わせたもので、イタリア・ボロミアン家の家紋から名が付いた。
「なぜそんなことを研究しているの?」と思われるかもしれません。結び目理論はゲノム解析に用いられるなど実学への応用もできるのですが、研究の動機自体は、シンプルに「面白いから」です。例えばオイラーの多面体定理というものがあります。紙にさいころのような正六面体を描いて、その頂点と辺と面を数えてみてください。正六面体なら頂点が8、辺が12、面が6。これで「点の数−線の数+面の数」を計算すると、必ず「2」になります。 同様に八面体や三角すいでも、この計算に当てはめると解は必ず「2」になります。不思議でしょう? これを実際に手を動かしてやってみて、頭の中に「なぜ?」がたくさん浮かぶ人は、数学に向いています。不思議だと思うから解明しようという気持ちになるのです。そんな人は、私の研究室に来てほしい。もっと数学を楽しめるステージを用意しますから。

「数理ファイナンス」数理科学科 伊藤 悠 助教

ランダムな現象を記述する微分方程式
〜ラフパス解析の視点から〜

私が研究しているラフパス解析は、滑らかさの度合いの小さな関数に関する微積分学の理論で、確率微分方程式と呼ばれるものにその起源を持ちます。大雑把にいうと、微分方程式とは、未知関数とその導関数および独立変数を含む方程式といえ、確率微分方程式とは、ランダムなゆらぎが加わった微分方程式といえます。自然界の多くの現象には様々な形でランダムなゆらぎが入っています。その典型例はブラウン運動と呼ばれるランダムな粒子の動きに由来するもので、このようなランダム性は、確率論の言語によって定式化され、数学もしくはもっと広く数理科学の研究対象となります。確率微分方程式の理論はランダムな現象を解析するための強力な手法を提供し、統計学、物理学、生物学、工学、経済学などといった諸分野にも応用されていますが、ラフパス解析は従来の確率微分方程式の理論に新たな視点を与え、従来の理論では解析できなかったような対象にまで応用範囲が拡がり更なる発展が期待されています。

物理科学科

「f電子系化合物 の電子構造の 理論的研究」物理科学科 山上 浩志 教授

宝探しのような研究です。

ランタノイド系列(原子番号57から71の元素の総称)やアクチノイド系列(原子番号89 から103 の元素の総称)の物性の研究をしています。周期律表を思い浮かべてください。周期律表は、後ろに出てくる元素ほど重くなる傾向にあります。ウランやプルトニウムなどはアクチノイド系列に含まれ、重元素といいます。
日本原子力研究開発機構、京都産業大学、東北大学、大阪大学が共同で研究を行い、世界で初めてプルトニウム化合物のフェルミ面の観測に成功しました。私が担当したのは「相対論的バンド理論」によるフェルミ面の実験結果の解釈。プルトニウムを構成している5f電子が結晶中を動き回っていることを直接示すことができた、という成果になります。
また、大型放射光施設「SPring-8」の放射光を用いて、ウラン化合物の5f電子状態の直接観測にも成功しました。バンド構造とフェルミ面を観測したのですが、これにより電子状態における統一的な理解がいっきに進展し、長年の謎であったウラン化合物の超伝導構造の解明が進むと注目されています。
私はウラン、プルトニウムなどのアクチノイド化合物の電子構造と磁性に関する理論的研究を行っていますが、その基本にあるのは、これからのエネルギー問題です。原子力を安全に活用するためには、重元素化合物の性質を徹底的に解明することが重要です。ウランやプルトニウムについての基礎研究はまだまだ不十分で、分からないことがたくさんあります。また、将来の廃炉に向けた材料研究も重要です。
「SPring-8」は兵庫県にある巨大な大型放射光施設。日本国内で非密封の放射性物質を光電子分光法で測れる唯一の施設です。
提供:国立研究開発法人理化学研究所
現在、私は日本原子力研究開発機構の放射光先端物質電子構造研究グループのリーダーを務めています。私自身の研究は理論ですが、SPring-8 の施設を使い、グループでは実験も行っています。私の研究室では、こうした実験をする機会もありますし、大型計算機を駆使して理論研究をしてもらってもいい。
世界を変える可能性がある、宝探しのような研究ができる研究室です。そういうところに興味を感じたら訪ねてきてほしいですね。

「計算物質科学・ナノサイエンス」物理科学科 内田 和之 准教授

電磁気学の常識「V=I R」が通用しない
ナノサイエンスの不思議に迫る

炭素がサッカーボール状に組み合わさったフラーレンや筒状のカーボンナノチューブなどナノスケールの物質は、マクロスケールの物質とは異なる興味深い性質を示します。中高時代に学んだ電磁気学、例えばV=I R(電圧=電流×抵抗)は、ミクロやナノの世界では通用しないのです。電気の流れる速さや滞留は、原子構造をほんの少し変えただけで劇的に変化します。その性質がどのような理由で現れるのかを量子力学を通して明らかにすることを目指しています。

「単層カーボンナノチューブの 作成・分離・生成とその応用」 物理科学科 鈴木 信三 教授

微小な最先端マテリアル、単層カーボンナノチューブの正体を探り可能性に挑む

未知なる素材に対する2つのアプローチ
研究室において現在、4年次生と取組んでいるテーマは、(1)金属的/半導体的な性質を持つ単層カーボンナノチューブの作製、分離精製及び濃縮、(2) 多孔質ガラス上への単層カーボンナノチューブの作製と応用の2つです。カーボンナノチューブとは、炭素原子が六角形の網目ネットワーク構造を作り筒状になった炭素ナノ構造体であり、直径は1~数nm(1nmは1mの10⁹ 分の1)、長さは数百nm~数μm(1μmは1mの10⁶ 分の1)のものが一般的です。

作製から取組んでこそ明らかになる真実
研究テーマ(1)では、さまざまな太さやねじれ方のカーボンナノチューブが存在する理由について、学生が自らの手で作製、分離精製、濃縮まで行うことで理解しようとするもの。現在、多くの研究室が市販のカーボンナノチューブを実験などに利用していますが、どういった条件のもとに作られたのかが明らかでないと、結果の信憑性が疑われます。カーボンナノチューブを研究室内で作製することには、それを利用した実験結果の信頼度を高める狙いもあるのです。

高品位ディスプレイの実現の可能性
(2)の研究は、イメージとしては微小な穴の空いたガラス板の上にカーボンナノチューブを生やす試みです。これが成功すると全ての光を吸収する完全黒体の作製につながる可能性もあります。また輝度の高いディスプレイや熱伝導に優れた放熱板に応用できるかもしれないと期待しています。これらを研究する醍醐味は、学生自らがモノを作る喜びです。パソコンでのシミュレーションに終始せず、自分でモノを作る喜びは何物にも代え難いものです。また、いずれの研究も物理的だけでなく化学的な手法も利用して進めていきます。物理や数学の基礎を身につけた学生が化学にも興味を持ち意欲的な学びに結びつけていけば、研究者としての将来に役立つ財産となるはずです。
カーボンナノチューブの作製から分離精製、濃縮までを行うことで理解が深まる
変化の様子を肉眼で観察できるのも、この研究の醍醐味
カーボンナノチューブ(単層、先端が閉じたもの)の模型

宇宙物理・気象学科

「気象力学」 宇宙物理・気象学科 高谷 康太郎 教授

「冬の研究」をしています。

私が研究しているのは、日本の冬についてです。「今年の冬は暖かい」「今年の冬は寒い」という話がありますが、そんな変動がなぜ起きるのかを解き明かしたいと思ったのがきっかけでした。例えば「エルニーニョ現象が起こると日本は暖冬になる」と言いますが、程度の差こそあれ遠いところで起きたことが日本の天気に影響するのは事実です。ニュースで「ヨーロッパで大雪」と言っていたら、結構な確率で数日後には日本にも寒波がやってきます。「北米で大雪、大寒波」となれば、1週間後くらいで日本にも強い寒波がやってくることが多いのです。
こうした遠いところ同士がつながっていることを「テレコネクション」と言います。“遠い” (=テレ)ところが“つながって”(=コネクション)いる。エルニーニョ現象もテレコネクションの一種です。
なぜ遠いところの天気が影響しあうのか? その謎を解く鍵が「偏西風」です。実はこれが日本の冬の仕組みを解明するのに重要な要素の一つ。世界のどこを探しても、日本の上空ほど強い偏西風はありません。真冬は特に強くて秒速70〜80mほどになることも。面白いのは、やや乱暴に言ってしまうと偏西風が気温の境目になることです。偏西風の南側は暖かく、北側は寒くなる。つまり偏西風が吹く流れがずっと変わらず、ある期間で同じ蛇行パターンになっていると、異常気象の原因になるわけです。「普段より暖かい(寒い)時期が、すごく長いね」と。このように、異常気象というのは、偏西風と切っても切れない関係にあります。そして偏西風が要因の一つになって、テレコネクションが起きる。冬の研究を行うということは地球規模の気象のつながりを考えることでもあります。ちなみに偏西風がなぜ起きるのかは、地球の自転だけでは説明がつきません。その先は奥が深いのですが、さまざまなデータを集めて気象のメカニズムを解き明かしていくことが私の研究テーマの一つになっています。
地球気象と一言でいっても、学生が卒業研究で扱うテーマはさまざま。それこそエルニーニョ現象についてや、台風の発生件数の違いと理由、京都盆地の空気の流れなど……時々、固くなった頭ではとても思いつかないようなテーマを持ってくる学生がいて、すごく面白いですね。

「一般相対性理論・ 宇宙論」宇宙物理・気象学科 二間瀬 敏史 教授

宇宙の成り立ちや天体の形成を理論的、観測的に研究

二間瀬 敏史 教授
重力レンズで目に見えない大きな質量を観測
私自身はこれまで、宇宙の起源や銀河の星々が生まれた歴史を研究してきました。時間や空間の概念をも扱う宇宙物理の研究は、スケールの壮大さ、ダイナミズムが大きな魅力です。研究室は2016年4月にスタートしたばかりですが、将来的は、国立天文台ハワイ観測所のすばる望遠鏡を使い、遠くの銀河からの光がその手前にある大きな物体の重力によって曲げられる「重力レンズ効果」を観測しようと考えています。重力レンズ効果が働くということは、光を発していなくても、そこに大きな質量があるということ。ブラックホールやダークマターなど、今まで目に見えなかったものがどこにあるのかを解く道標となるかもしれません。まだまだ未知が多い宇宙の神秘に一歩でも近づく、壮大でロマンにあふれる研究です。
研究内容のプレゼンテーションは、回を重ねるごとに円滑に進められる
太陽系における惑星それぞれの軌道を計算し、地球に及ぼす影響を探る
宇宙には未開のフィールドが広がっているだけに、興味深く学べる
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