留学体験記が届きました(間所 龍洋さん バーデンヴュルデンブルク州タウバー ビショフスハイム)

私は2013年4月から2014年3月までの1年間、ドイツ南西に位置するバーデンヴュルデンブルク州のタウバービショフスハイム(Tauberbischofsheim)という小さな町で、ドイツ人ホストファミリーの家にお世話になりました。フェンシングオリンピック強化センターがあるほどフェンシングで有名なこの町は、ロマンチック街道に近く、美しい緑となだらかな丘が続いています。休日や余暇にはハイキングを楽しむ人も多く、のんびりと心に余裕を持って生活することのできるとてもいい町でした。
幼少期に海外での短期滞在を経験したことをきっかけに、海外での生活に憧れを抱き、将来的には海外で生活したいと考えていたのですが、知人にホームステイ先を紹介していただけたことで、1年間の語学留学がさらに充実したものとなりました。知人の方にはチャンスを頂いたことに今でも深く感謝しています。ドイツ語学習経験は全くありませんでしたが、今振り返るとドイツ語の知識がない状態で長期滞在をスタートできたことが、その後の語学力の成長に役立ったように感じます。
日本出発当日、私は家族や友人に別れを告げ、韓国経由でフランクフルト空港へ向かいました。機内でコーラをお願いした際、私の英語の発音が悪かったのか、うまく通じず、断念して水を頼んだのですが、そんな自分に少々の不安を感じつつも、1年間の留学を想像すると楽しみで笑みがこぼれた事を今でも鮮明に覚えています。ホストファミリーの家に到着後、用意してくれていた自分の部屋でスーツケースから荷物を出して棚に整理していた時、「1年間ここで生活するんだ。」と改めて身が引き締まる思いがしました。
ドイツに到着して三日目には、語学学校での授業が始まりました。クラスメイトは20人ほどで、日本人はいませんでしたが10ヶ国近い国の人達から成る国際色豊かなクラスでした。生徒が話をしている時間の方が長いのではないかと思うほどの発言力で、次々に変わる話題に対しても自分の考えを表現する語学力の高い人達ばかりに感じました。クラスメイトも当然自分と同様にドイツ語学習経験のない初心者ばかりと考えていた私にとって、かなり大きな衝撃でした。授業で扱う教科書のページ数や宿題の指示も理解できなかった私は、他の生徒との語学力の差に愕然とし日々焦りを感じていました。しかし、他の生徒と大きな語学力の差があったからこそ焦る気持ちと向上心を持って継続してドイツ語と向き合えたようにも感じます。語学力向上のために勉強方法を工夫するようにもなりました。クラスメイトとの会話力の差を強く感じていたので、授業では極力辞書は使わず分からない単語はメモをして帰り、家で単語を調べて復習することを繰り返してみました。これは、授業中、辞書を使っている間に会話のテーマが変化し、会話に参加できなくなることを懸念しての対策でした。今振り返ってみると、このようにして授業内での発言の機会を増やす工夫をしたことが会話力の向上につながったように感じます。
語学力不足が原因で様々な苦労も経験しました。会話をしたくても語彙力がないため話題を膨らませることができなかったこと、文化の相違による言動や考え方の違いをうまく説明することができずホストファミリーと口論したこと、悪口や皮肉を言われても理解できなかったことなど、語学力不足という面だけを考えても様々な経験をしました。しかし、会話量を増やすことを意識したことで語学力は少しずつ上達し、半年が経った頃にはクラスメイトと同じようにドイツ語で討論できるほどになっていました。そのレベルまで自分のドイツ語が上達して初めて気づいたのですが、流暢にドイツ語を話していると思っていたクラスメイト達は、文法的な間違いが多く、ドイツ滞在期間が長いために語彙力はありますが、感覚的にドイツ語を話していて、テストになると正確な解答が出来ない為にドイツ語の基礎知識を学びに来ている、という生徒がほとんどでした。私は、彼らの積極的にコミュニケーションをとろうとする姿勢から多くのことを学び、正確な言葉を話すことは大切ですが、それ以上に相手とのコミュニケーションを楽しむことが大切だと実感しました。そのことを意識し始めてからは、今までよりも会話の量は格段に増え、自分が発言した後、「今の文章はここが間違っていたな。」と頭の中で答え合わせができるようになり、ドイツ語による会話力も以前より向上したように思います。そして、語学力の上達とともに、交友の輪も広がっていったのです。
私は語学学校の休暇を利用して趣味のスポーツにも取り組みました。現地で空手の大会にも参加し、それを通してたくさんの人々と交流を持つこともできました。一年を通じてお世話になったホストは変わりませんでしたが、休日を利用してたくさんの家庭を訪ね、余暇を楽しみました。年末年始には、日本の除夜の鐘の、新年の福を願う趣あるそれとは違った、寒空の中、町中から打ち上がる花火を見上げて新しい年を迎えるという貴重な体験をし、友人と楽しい時間を過ごすことが出来ました。ドイツ滞在中には、セルビア・オーストリア・スペインへも足を運び、その全てが私にとって良い経験となりました。
目標としていたドイツ語の試験にも無事合格し、振り返ればあっという間に1年が過ぎました。帰国半年後には、ドイツから数名の友人が訪ねて来てくれ、2015年にはまた別の友人との再会を日本で果たすことができました。言葉の習得は、決して簡単なことではありませんが、確実に視野が広がり、得るものが大きいことを改めて実感しています。
ドイツ滞在中はもちろん良いことばかりではなく、困難なこともありました。上記した語学力不足による苦労、自身の語学力が進歩しているのか不安になり悩んだこと、など困ったことはたくさんありました。しかし、困難とはどこにいても起こりうることです。1年を経ての経験は、その全てが私の糧となりました。この貴重な経験を大切にし、今後も広い視野を持って物事に取り組んでいきたいと思います。

留学期間:2013/4-2014/3

友人の家族と訪れた移動式遊園地
タウバービショフスハイムの街並み
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