入賞

「私のこころがけ」

外国語学部言語学科 1年次生 黒野 奈々

審査員講評

 無駄遣いが大嫌いで家族の中でも一番の節約家である筆者が、最近より一層節約は省エネという言葉に敏感になったのは何故であるのかを、本エッセイで追求している。
 はじめてアルバイトをしてお金を得ることの大変さが肌身に沁みて分かったことを述べる。そして、アルバイトをしたことにより、両親への尊敬の念が大きく膨らんだことを記す。筆者は、自分にできる節約や省エネで少しでも家計に貢献したいという。その気持ちは大切であると思う。更に、東日本大震災が節約への強い関心をもたらしたと述べる。この機会に、節電について自ら調べ、その大切さを知り、自らの生活を見直し、自分にもできることは何かを考えるようになったという。テレビなどで放映された映像や震源地付近に暮らす知人の被災時の話を聞いて、省エネに無頓着ではいられなくなったことを記す。具体的な自らや家族の省エネ方法についても紹介し、次いで社会での省エネの様子を紹介しつつ、自らの今後の省エネに関する取り組み方を提示している。
 自らや家族のことを中心に、平易なわかりやすい文章で表現し、その省エネに対する真摯な取り組みが表明されており、さわやかな佳作であると思われる。

作品内容

「私のこころがけ」黒野 奈々

 家族の中でも一番の節約家だと思っている。部屋の電気はこまめに消す。水の出しっ放し、冷蔵庫の開けっ放しなど、家族のミスも口うるさく注意するくらいだ。まるで主婦のようだ。
 元来、無駄遣いなど大嫌いである。それが最近、より一層節約″や省エネ″という言葉に敏感になった気がする。何故なのか考えてみた。
 おそらく初めて、アルバイトをしたため、「お金を得る」ことの大変さが肌身に沁みて、分かったのだ。アルバイトを始めて一年が経とうとしている。かなりの労力と時間を費やしてきたつもりではあるが、稼いだ金額などしれている。
 その一方で、両親への尊敬の念が大きく膨らんだ。
 決して裕福ではないが、これまで何不自由なく育ててくれた。こうして私立大学にまで通うことを許してくれる。両親の経済力の凄さにやっと気付き始めたのだ。
 私ができる節約や省エネなど果たして意味を成すものなのかはわからないが、少しでも家計にゆとりができるように貢献できたら良い。
 節約への強い関心をもたらした要因はもう一つ。言うまでもなく東日本大震災である。
 私たちが住む場所でどれだけ節電したからといって、それが直接被災地に届くかといえばそうではないだろう。
 しかし、節電について自ら調べ、その大切さを知る機会となったのは得難い教訓だろう。なにげなく送っていた自分の生活を見直し、私にもできることは何かないかと考えるようになった。
 震災が起きた時、私は震源地付近に暮らす知人と電話が繋がらず連絡がとれない状況であった。回線がパンクすることを防ぐため心配であってもむやみやたらに被災地に電話をしてはいけないと言われ、そんな想像もつかない状態に本当に驚いたものだった。
 数日後、やっと連絡がとれて私たちは支援物資を現地へ送った。毎日のようにテレビで放送されていた信じがたい映像と知人の被災時の話は、わたしに改めて省エネを心がけるよう促した。もう無頓着でいることはできなくなったのだ。
 具体的にどんなことをしているか。
 それはもうほんとうに些細なことである。電気をつけっ放しにしない、テレビはリモコンからではなく主電源から消す、コンセントは入れっぱなしにせず抜く。なるべく冷暖房を使わない。このようなごく基本的で初歩的なことだ。しかしどんな小さなことにも敏感になることは必要だろう。
 我が家では数年前にやってきたエコカーも活躍している。
 エコカー減税もあるし、やはり燃費が格段に良いから頻繁に遠出をする我が家には本当に助かる存在なのだ。二酸化炭素の排出量も減り、走行時の音も小さいしとても環境にやさしい。日頃私たちが移動するのにはやはり徒歩や自転車、公共の交通機関を利用することが省エネにはベストである。しかし私たちにとって自動車は生活になくてはならないものだ。せめてできるだけ加速の少ない運転をしたり、ふんわりとアクセルをふむように心がけたい。
 現代は核家族化が進んで、一人暮らしも増えている。これにより世帯数が増加し、一世帯当たりの家電保有量が増えて電気使用量も増えて結果的にCo2の排出量も増大した。例えば、エアコンなどは一家に一台どころか一部屋に一台へと設置台数は年々増えているだろう。テレビやパソコンもそうである。こうした中で一人ひとりの省エネへの関心が重要になってくる。エアコンは家電の中でも最も電力を消費するといわれている
 フィルターは定期的に掃除した方が効率はよくなるし、1990年製エアコンがまだ設置されているなら2006年製に買い替えた方が年間24118円も得になるそうだ。
 それから家庭での省エネの敵に待機電力″というものがある。これは、消したのについているテレビの小さなランプが示すように機器を使っていない時にも電気は消費されているということである。リモコンのある家電やそれ以外でも電話機やファクシミリ、電子レンジや温水便座などほとんどに待機電力があるらしい。
 この待機電力を減らすには、コンセントを抜く、主電源から消すということが本当に大事だ。これを習慣的にするのは面倒くさいがこれだけで年間1万円以上の得になる。
 しかし、省エネについて関心を持ってエコカーや最新省エネ家電などに興味を示す一方で疑問を抱くこともある。
 省エネやエコというのはマーケティングのキーワードにすぎず、売り上げをあげるためだけの商売文句なのではないだろうか、単なる金儲けなのではないだろうか? 
 なんでもかんでも鵜呑みにし、安易にそういった製品に頼ることは良くないだろう。おそらくこういった商法や製品は非常に多いので、自分で何かする方法や自ら調べることが大切である。
 世界には省エネなんて焼け石に水だと思う人はたくさんいるだろう。実際に私たちができるようなことなど何の意味も無いのかもしれない。しかし関心をもつかもたないか、やるかやらないかでは全く違うと思う。自分のことばかりでなく周りの人や世界の環境も考えるべきだ。

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