入賞

「老人施設、障害者施設のボランティア活動」

理学部 数理科学科 4年次生 山本 献造

審査員講評

 他の人よりも長く学生生活を満喫されたようですね。しかし、そろそろ一区切りをつけ、周囲の人を安心させて下さい。核家族化、人間関係の希薄化といったことが、現代社会の一つの問題といわれて久しいですが、筆者は、伯父様のお見舞いを通して、これらの問題を実感し、世代間を越えたコミュニケーションの重要性に気付きます。そして、自らの家族とのコミュニケーションの重要性にも思い至り、家族を巻き込んで老人施設や障害者施設でのボランティア活動をしようというのが、私のやり遂げたいことであると主張しています。飽きやすい性格で続けていくことができるか不安があり、その具体的な対応策もないとのことですが、この賞の受賞を糧として、ぜひ実現に漕ぎつけるよう努力してみて下さい。ボランティア活動は与えるよりも得る充実感の方が大きいと思いますので、継続する意義はその実践のなかで見つかるかもしれません。

作品内容

「老人施設、障害者施設のボランティア活動」山本 献造

 私は広島県広島市の出身です。京都で学生生活をして、早5年半が過ぎました。本来、私は本学を卒業していなければならないのですが、京都の良さに、どっぷり浸かり過ぎてしまいました。歴史ある神社仏閣や、伝統行事など、私にとっては、何もかも新鮮で本当に興味深いものが多かったので、一生過ごしていたい土地です。私の出身地である広島県広島市は、ご存知のように、戦争により65年前に原爆で破壊され、京都のような歴史のある建造物などはまるでありません。言ってみれば、文化的には京都の真逆の土地柄だと思います。それゆえに、一層、京都の良さを感じたのかもしれません。しかし、来年の3月には卒業をして、広島に帰るかもしれませんので、今のうちに良い思いを沢山、心に刻んでおきたいと思います。

 そんな時期に、就職活動のために、最近は何度か実家の広島に帰る機会が増えましたが、帰郷した時に、私の伯父(父の兄)が入院していることを知りました。元々、伯父は身体障害者のために、歩行に不自由していましたが、2年前にバスから降りる際に、ステップから足を滑らせて転倒し、額を路面に打ちつけ、頚椎を損傷して半身不随になりました。首から上しか動かない状態になり、今は、病院に寝たきり状態で、毎日祖母の介護を受けています。帰郷するたびに、その伯父が入院している病院に何度か行って気づいたのですが、そこは、入院患者のほとんどが寝たきりの老人であり、看護士による完全介護ということで、家族や親戚や知り合いの訪問も滅多に無く、淋しく余生を過ごしている老人が大変多いということを伯父の介護をしている祖母から聞きました。既に、認知症にかかっておられるひとも見受けられました。私は、そこで、日本の老後生活の縮図を見たような気がしました。核家族化が進んで、両親と同居することが少なくなったのは仕方ないかもしれませんが、孤独な老後を送らねばならないということは、とても寂しさを感じざるを得ませんでした。現代は、人間同士の付き合いが希薄化しているといいますが、メールなどで、頻繁に連絡をとりあうところからは、決して、本質的に希薄化しているのではなく、携帯電話やインターネットなどの手段がかえってそうした状況を作っているのではないかと私は感じています。本当は、皆、ひとりでは寂しいと思うのです。それを、電子的な機器や手段などに頼るのではなく、今こそ、顔と顔を合わせて、口で自分の思いを相手に伝えて、心を通わせることの大切さをもっと、認識しなければいけないのではないかと思っています。それも、世代を越えたコミュケーションが大事だとつくづく感じています。 前置きが長くなりましたが、以上のような経緯から、私は本学を卒業後、このような老人や障害者などの施設を廻り、ボランティア活動をしようと考えています。話の相手になるだけでも、喜んでくれる人たちが多いと聞いています。この手の施設は結構ありますが、まずは、実家の近場の施設から定期的に訪問をして、ボランティア活動を始めてみたいと思っています。今の自分は、人前で演じられるような特技が無いので、簡単な手品や芸を身に着けることにしたいと思い、独学のための情報収集を始めました。既に、このような活動をしている団体に参加すればいいのでしょうが、何事も最後までやり通した経験が多くない自分なので、この活動はなんとか一人で始めてみたいと思っています。これまでに、色々な人に、迷惑を掛けたり、お世話になったりの繰り返しなので、恩返ししたい気持ちもあります。

 しかし、施設訪問を実行するには、いくつかの困難、問題が予想されると思います。まず、突然、私のような若者が、いきなり老人や障害者などの施設訪問をしても、不審がられるだけと思っています。それに対しては、私の両親や親戚を巻き込もうと思っています。両親や協力をしてくれる親戚と共に施設訪問の依頼をお願いして、受け入れて貰おうと考えています。これは、私と両親や親戚とのコミュニケーションにもなると思っています。これまで、あまり両親や親戚とは、なかなかコミュケーションをとることも無く、逆に、それを避けていたような気がします。そもそも、そのこと自体が、今の日本人の老後の実態に繋がっているのかもしれません。人の心配をする前に、まず、自らを改める手段にもなるかもしれないと私は思っています。幸い、私の母は音楽大学出身であり、教師の経験もあったので、ピアノが上手に弾けますし、父は手先が器用なので、小道具つくりで役に立つのではないかと思っています。卒業をして、広島に帰ることになれば、このことを打診してみようと考えています。

 その次に、考えられる困難は、やはり私自身の問題です。どこまで、これが継続できるのかが不安です。先にも述べましたように何事にも、すぐ飽きやすい性格なのですが、ここは、根性や努力でどうにかしたいと言いたいですが、ゲーム感覚で継続するしかないかもしれません。ここで、自分の悪いところの性格はどうにかして断ち切らなければ、一生後悔するような気がしています。具体的な対応策はありませんが、なんとかやり遂げたいと思っています。

 これらを実行するには、なんとしても就職をしなければなりません。未だ、私は就職活動中ではありますが、目標ができたことよって、就職活動にも張りが出てきたと思っています。最後まで諦めずに前向きに生きていける人間になれるように努力します。

 最後になりますが、京都府での良き思い出を与えてくれました京都産業大学に感謝します。

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