入賞

「あなたのおかげで」

外国語学部 英米語学科 3年次生 濱本 麻実

審査員講評

 人生には様々な出会いがある。人の生き方というのも、出会いの一種だと思う。筆者は「しょこたん」から影響を受けたという。ほぼ同年代の人の生き方と自分の生き方をダブらせて語っている。このエッセイから真っ先に感じたことは、筆者の感性の豊かさである。それがテンポよく語られている。
 筆者は人付き合いが悪いことと消極的な性格を混同していたようであるが、おそらく筆者は元々、積極性をもち合わせていたのであろう。「しょこたん」をきっかけに、それが表に出てきた。タイトルが「あなたのおかげで」であるので、できれば「しょこたん」となぜ出会ったのか、その出会いについて、もう少し詳しく書いてほしかった。

作品内容

「あなたのおかげで」濱本 麻実

 「何かおもろい事ないかなぁ。」口を開けばその言葉ばっかりで、日々の生活に完全に飽きを感じていた。…というよりも、自分からは何の行動も起こさず、全て受け身にかまえていたと言う方が適切かもしれない。毎日何にも変わらない生活を送っていた。

私は小さい頃から人付き合いが苦手だった。「一人でも全然構わないし、むしろ一人の方が楽ちんやん。友達と遊びに行くよりも、家でのんびり過ごすのが大好きやし。」・・・そんな感じで、自分に言い聞かせていた。大学生になりたての頃は、自分なりに大学生のイメージがあって「キャピキャピして、遊びまくるんや!!」と心に決めていた。でも現実は全く逆。私の理想は、結局理想でしかなかった。いや、実際にしようとしなかった。「真面目に、且つ、完璧に」という、私の根っからの性格が、方向転換を一切許してくれなかった。結局、高校、中学校、小学校、幼稚園の消極的な自分と何一つ変わらなかった。

友達との付き合いも、本当は自分から避けてきた。理由は山程あった。遊びの前に、まず勉強。門限はしっかり守らないといけない。そんな事ばかりが頭にあって、正直自分で自分の首を苦しめていた。こんな生活が、私の20年間の大半を占めていた。「うち、めっちゃ根暗やし」と、開き直りさえしていた。本当に今まで全然遊んでこなかった。こんな事になってしまったことを、いつも誰かのせいにしていた。それでも私は、一切自分を変えようとはしなかった、彼女を知るまでは・・・。

あなたは中川翔子さんを知っていますか。そう、「しょこたん」という愛称で親しまれている、キラキラしているカワイイ女の子。ブログの女王に輝き、歌手や漫画家などなど、マルチな才能を持つ。熱狂的なファンに囲まれ、華やかな芸能界で頑張っている彼女だけれど、実は最初からそんな感じではなかった。

彼女は昔、引きこもりで友達もいなかった。高校生になるまで、ずっと一人だった。そんな時に、彼女は親友と呼べる人にネットを通じて出会ったのだ。その親友は、いつも明るくて、どんなに辛い事があっても前向きに、笑顔で乗り越えていたそうだ。しょこたんとは全く逆。しょこたんは、常にネガティブで悪い方向にばかり考えていた。ある日、しょこたんは親友に尋ねた。

「なぜ、いつもあなたはそんなに前向きなの?」と。

 すると彼女は、「80歳まで生きたとしても、人生は3万日しかないんだよ。短くない?」と答えた。

 しょこたんは「ハッ」とした。思わずその場で何日生きたか計算し、「人生は3万日しかないんだ。もうこんなに生きちゃってる!私は何日無駄に過ごしたんだろう?1日も無駄に出来ない!」

 そのように感じたのだ。その時から彼女は貪欲主義に目覚めた。

 確かに「人生80年しかない」とか、あまり実感の湧かない言い方は普段使う事はある。けれど、「年」を「日」にすると、日々何となく過ごしていた時間というものが、とても惜しくて、もったいないという気持ちになった。しょこたんは、この言葉をきっかけに大きく成長することが出来た。自分から変わるというアクションを起こした。だから今、明るく輝く中川 翔子が存在する。人生は何がきっかけで大きく変わるかわからない。

 そして、わたしもこの素敵な話に影響を受け、大きく人生が変わったうちの一人となった。

「同じような人生を送ってきたしょこたんが変わることが出来たなら、うちも必ず変われるはず。」そう思うことが出来た。その時から私は、受け身にかまえる事を止めた。確実に私の中の何かが変わった。「行動したい!」、「待ちきれない!」という気持ちが自然と生まれた。こんなのは初めてだった。「自分に本当に出来るのか?いや、やってみんとわからんやん!」と、がむしゃらに行動していた。もう自分にも止められなかった。「どこにこんな積極的な自分が同居してたん?」と、面白くさえあった。ただ自分が思うままに行動した。 インターンシップに国際交流、おまけに無知で始めた検定の勉強。どれもビックリするくらいに上手にやってのけてしまった。やれば出来るって事を実感出来たのも、しょこたんの人生の手本があったからこそ。アルバイトだって、笑顔が苦手だから、今までは人目につかない工場の中で、黙々とこなす作業を好んでいたけれど、今は100%の笑顔で接客業をしている。友達との付き合いも変わった。悩んでいることを今まで友達に相談することなく、全部心に秘めていた。それでも平気だと考えていたから。けれど、ちょっとのことでも相談したら、一緒に悩んでくれる仲間がいた。本当はとても有り難く、幸せな環境に居たのに、それを自ら拒んでいたことを初めて知った。今まで不幸のどん底みたいな顔をしていた自分が腹立たしかったけれど、そんな自分が居たからこそ、今の自分が居る。

将来の夢は、しょこたんの様にキラキラ輝くマルチな人間になること。だって、何でも出来るってカッコいい。しょこたんに出来るなら、私にも出来る。同じ人間だもん。 そして時は金なり。これからは決して時間を無駄にしない。時間は決して戻ってこない。だからこそ、今出来ることに精一杯挑戦する。今という時間でしか出来ないことだから。

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