入賞

「32歳の中西壮平に告ぐ。」

外国語学部言語学科ロシア語専修4年次 中西 壮平(なかにし そうへい)

審査員講評

 人生を四季に重ね合わせることがある。「22歳の私」とまだ見ぬ「32歳の私」との対話を季節の移ろいにオーバーラップさせながら、綴った優れたエッセーである。秋の「実り」を得るためには、芽吹く「春」と厳しく暑い「夏」を経なくてはならない。「32歳の私」が直面するであろう社会の厳しい試練に立ち向ってこそ、得られる果実も大きい。「秋霜烈日」という言葉がある。秋のしもと夏のはげしい日ざしの意味から、刑罰や志操の厳しいことをさすが、今後の人生には風雨のはげしい荒天もあろう。そうした困難をも乗り越えて、「22歳の私」が自立した自分を創り上げるため、自らの手で未来を切り拓いてほしい。

作品内容

「32歳の中西壮平に告ぐ。」 中西 壮平

 32歳の君に告ぐ。いったい今、君は何をしているんだ?もし目標を忘れているのなら今から思い出させてあげよう。22歳の私が君に託した思いを。
 22歳の私は新たなステージに向かっている。日々、不安と期待が顔を出して私に大きな刺激を与えてくれる。将来自分はどんな自分になりたいのかな?毎日、そんなことを考えていることなんて今までなかった。これから32歳の君に22歳の私から希望とお願いをしよう。
 私たちの暮らしている日本には四季があり、それぞれの表情で私たちに問いかけてくる。様々な人たちと多くの時間をその問いかけと共に過ごし、私は日々、成長している。立ち止まることも、後戻りすることもある。まわりのヒトたちに流されそうにもなる。そんな時があってもいつでも自分の流れを保ち、自分の道を歩んでいきたい。自分の歩く道を春に始まり冬を終わりとし、それを人生に重ねてみたいと思う。
 春は「花」。人生に置いて花が咲き始める季節。出会いや、別れ、様々な体験が自分の中で花となる。 夏は「雲」。上昇気流にのった雲は入道雲となり大いなる恵みの雨をもたらす。社会に出て、新たなヒトと協力しあい、時には助け合いぐんぐん吸収し社会に貢献する雲となる。秋は「実り」。春の花を夏の恵みが実りへと変える秋。ここまでに培ったヒトの輪や、知識。これをさらに大きなモノへと変える実り。冬の「火」。寒さを暖める火。けして絶やされることのない火。知識の伝承、次代へのバトン。けして途切れさせてはいけない循環は流れの速い世の中でもヒトとヒトとの暖かさを紡ぐ火となる。
 22歳の私にはもうすぐ大きな花を咲かせて社会に飛び出そうとしている。いままで感謝しても、したりないくらいの大きな「栄養」を私はいただいて育ってきました。小学校、中学校、高校、大学と様々なステージで私は成長してきました。多くの人たちに囲まれて、支えられて成長した。
これからは自らが動き成長していく「夏の雲」となっていかなければならない。みずから吸収していく姿勢や、仲間と協力することは自分に大きな「学び」を与えてくれます。その学びは早さを増し、上へ上へとのぼっていく。そうすることによって自分や、自分を取り巻く環境に対して大きな貢献ができるようになる。
 32歳の君はこの「夏」真っ盛りにいるはずである。私は社会に貢献すると言うことが現段階の目標である。そのために社会の入り口として就職することを選んだ。まずは私を雇ってくれた会社にたいして、恩返しをしていきたい。そうやって仕事に専念することはヒトとヒトとのつながりを広く深いモノにし、その次のステップへの糧とする。会社への恩返し、自分のステップの糧。一挙両得を可能とするのがこの形だと思う。自分の事だけではなく共にメリットを共感できることが最高の条件であり、それがヒトとして当たり前のことである。32歳の君がこの基本的な事を忘れているなら思い出して欲しい。社会という大きな波は時に考え方を根底から変えてしまう力がある。しかし自分の姿勢や根幹となる考え方を貫いて欲しい。自信を持って日々精進の気持ちを持ち続けて欲しい。
 そしてここからは22歳の私の希望である。
 32歳の中西壮平は結婚もしているかもしれない。それ以上に、独立をしていて欲しい。それは社会的にも経済的にも独立をすると言うことである。この10年間に見たこと、聞いたこと、常にアンテナを高く吸収し続けて欲しい。未来を自分の手で切り開いていって欲しい。独立すると言うことはとても大変なことである。雇われている方が幾分か楽かもしれない。独立すると言うことは失敗することもあるかもしれない。しかし潰れたときは自分のせいであるから悔やむことはない。逆に組織の中での不祥事やなんらかの原因で自分がやめなければならないとき私は悔やむだろう。悔やんでも悔やみきれない後悔を感じるだろう。そうやって後悔のない人生を送って欲しい。
 独立の道を進む。そのためには社会的な意義を持って臨んで欲しい。大きな利益は決して近道はない。サイクルの速い時代には、しっかりとした意義を持ち、そこに向かって突き進まなければいけない。メッキはすぐにはがれてしまう。しっかりと自分自身を見つめ、社会的な意義を突き詰めて行かなければいけない。そこには夢だけでなく現実を見据えてしっかりとした地盤がなければいけない。
 なぜ22歳の私は社会に貢献するとか大それた事を言うのか?それは自分が日本人であるからである。自分の生まれ育った国が日本。自分が生まれたくて生まれた国じゃないけどそんなことを言ったら世界中の人々が同じ事を言うだろう。そこは問題ではない。問題は自分の生まれた国が衰退していくことに問題がある。男女問題、少子高齢化外交問題、治安の悪化など様々な問題を今の日本は抱えている。そこに貢献できると言うことが何かをするにあたっても無視はできないだろう。自分が独立すると言うことは利益がないと成り立たない。そこでこの問題を食い物にするのか?そうじゃない。利益を上げることがその問題の解決につながっていくと言うところが大切だと思う。そこでも共に価値を共感すると言うことが本当に重要である。
 32歳の君に問う。京都産業大学でしてきたことはいったいなにか?外国語学部言語学科ロシア語専修に所属し、1年次には神山祭実行委員会に所属。2、3年次には旅に出かけ、今進路アドバイザーとして後輩の相談役となっている。この広大な敷地に多くの緑が近代的な建築と共存するキャンパスで良き仲間、良き指導者に巡り会えた。この大学にはヒトとヒトとの交差点がたくさんある。その中で共に作り上げること、自己実現に向かっていくこと。多くを語らい駆け回った。たくさんのことを感じ、学んだ日々をまだ覚えているか?一つのモノを作り上げた喜び、自分の馬鹿さが招いた悔しさ。忘れてはいけない。学ばなければいけない。22歳の私はきっと32歳の君につなげるはずだ。
 そうすればきっと大いなる「実り」の秋を迎えることができるはずだ。今、32歳の君は夏の真ん中にいることだろう。体力を奪う暑さ、水分を欲するからだ。しかしあふれんばかりの日差しがある。きっときみはその光を全身で浴びて輝いているはずだ。自己管理を怠らず、その光を最大限に生かす方法を常に考えチャンスを確実に実りにつなげて欲しい。尻込みをせず、自信をもって進んでいこう。そうやって「実り」ゆたかな秋、大きな「火」のある冬を目指していって欲しい。
 季節は流れ続ける。22年間22回目の四季が今年も訪れる。私たちのまわりには大勢の人たちがそれぞれの人生を歩んでいる。ヒトは一人では生きてはいけない。しかし二人、三人と増えていくことで可能性は無限大に広がっていく。十人十色という言葉があるようにだれにでも色がある。四季も一つ一つが単色ではなく、様々な色から構成されている。生きていく上で多くのヒトと交わり様々な色を吸収していくことだろう。

 32歳の中西壮平に告ぐ。
 君は大きな人生の真ん中に近づいている。だがまだ半分ではない。これから先の人生の方が長いのである。失敗をおそれずに信念を貫いて進んでいって欲しい。自分が生きていく人生は一度きりしかない。その人生の限られた時間の中でさまざまな経験をしてきたはずだし、これからもさまざまな経験をするだろう。そのなかに自分を輝かせることのできるチャンスがきっと眠っているはずである。しっかりと輝ける人生を送って欲しい。
 22歳の中西壮平は誓う。
 32歳の君に伝えるのが私の使命である。22歳の私はこれからも日々精進することを忘れずに大きな地盤を築くことを32歳の君に誓います。期待してこのバトンを受け取って欲しい。そしてさらにつないでいってくれたら幸いに思う。

お互いに頑張ろう。

2005年10月24日
自宅にて

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