「日本の領土問題・歴史認識問題・国家ビジョン」韓国有識者との
インタビュー及び座談会

開催日時 2013年9月25日(水)インタビュー:13:00〜15:00 座談会:15:30〜17:00
開催場所 京都産業大学 壬生キャンパス むすびわざ館4階会議室

座談会参加者

  • 東郷和彦(世界問題研究所所長)
  • 李 栫i東北亞歴史財団・独島研究所所長)
  • 森 哲郎(文化学部教授)
  • 趙 胤修(東北亞歴史財団研究委員)
  • 岑 智偉(経済学部教授)
  • 南 相九(東北亞歴史財団研究委員)
  • 河原地英武(外国語学部教授)
  • 朴 栫iソウル国立大学人文学部東洋史副教授)
  • 沈 政郁(経済学部准教授)
  • 李 元徳(東京大学東洋文化研究所訪問研究員)

概要

インタビュー

(インタビューは北東亞歴史財団の、李桴樺キおよび趙胤修研究委員によって行われた。)

 インタビューは、主に竹島問題に関する日本の立場を中心に行われ、①韓国が独島問題をどう見ているかについての日本側の見解はなにか、②1965年の日韓正常化の際における「竹島密約」についてどう思うか、③最近になって竹島問題がなぜ大きな問題としてとりあげられるようになったのか、④これから日韓で竹島問題をどう扱っていけばよいかなどについて、東郷所長から詳細な見解表明が行われた。

 尖閣問題に関して、安倍政権は「領土問題は存在しない」認識を継続しつつも「対話の窓は開く」方針を打ち出している点、これが韓国政府にとっても好機であること、したがって韓国側も対話の窓を開いていく必要があるとの見解が述べられた。また、メディアで描かれる日本のナショナリズム的な動きは政府のポジションを表わしているのではなく、一部の社会勢力を強調しているに過ぎないという見解が述べられた。

 更に、日本の抱える尖閣問題、北方領土問題が、今の時点で日本外交においてどのような位置にあり、それが竹島問題を含む日韓関係とどのようにかかわりあっているかについても核心に触れる質問が提起され、活発な質疑が行われた。その中で特に、尖閣問題として表出している日中関係悪化には構造的要因があること、竹島問題の持つ性質がそれとは異なるとの見解が述べられた。

  • インタビューに応じる東郷和彦所長

  • 話に真剣なまなざしを向ける李桴樺キ

  • インタビューの様子

「日本の歴史認識問題と国家ビジョン」を中心とする座談会

座談会の様子

 韓国側からは、インタビューを行った二名に加え、南相九、李元徳、朴桙フ三名が出席。日本側からは、世界問題研究所より森哲郎、河原地英武、岑智偉、経済学部より沈政郁が参加した。まず、東郷所長から前半部のインタビュー内容の総括が行われ、座談会における議論テーマが整理された。

 話題は広範に及んだが、日本のかかえる歴史問題と現在の日本の国づくりが中心といなり、①日韓を今分断している慰安婦問題、強制労働者の裁判問題をどう考えるか、②靖国問題についてどうして日中は対立を続けるのか、③安倍政権がうちだしている「戦後レジームの脱却」という国づくり政策が求めているものは何か、④安倍政権の思想がどの程度まで日本人全般の支持をえているのか、などについて議論が深められた。

 特に靖国問題に関しては、それの持つ「疑似宗教性」「政治の道具としての宗教性」が指摘され、アジア各国との政治関係における今後の靖国問題の位置づけの困難さが浮き彫りになった。また、マスコミが表象している安倍政権イメージと現実の国民の意識との間にはずれがあるのではという意見も出された。最後に、現政権の性質、特に集団的自衛権の問題を考える場合は、冷戦後の広い文脈から現政権の動きを分析する視点が不可欠ではという指摘がなされ、双方から活発な意見交換が行われた。

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