京都産業大学キャンパスマガジン サギタリウス 2015 Dec. Vol.70

”弱い”ことが強みになる!?つながりの未来 温度、位置情報などを測定するセンサー機器を無線通信でつなぎ、情報収集する「センサーネットワーク」。小型化、軽量化により、これまでにない通信をかなえ、未来をガラッと変えるかもしれない
その可能性をご紹介します。 コンピュータ理工学部 瀬川典久准教授センサーネットワークの専門家として、応用を中心とした研究に取り組む。現在の主な研究内容は、成層圏気球を利用した通信環境の構築。

1 気球一つで日本全国に電波をお届け!小さな機器の大きな可能性。

私が研究するセンサーネットワークとは、GPSや温度センサーなどの機器を無線通信で連携させ、情報収集する技術のことです。中でも、私が専門としているのが長距離通信技術「MAD‐SS」。これは身近なBluetoothを応用した技術で、その電波を弱めることで通常は半径20m 程度の通信範囲を最大約500qまで拡大できるのです。

さらにこのMAD‐SSの特長は、装置が小型かつ軽量であり、設置できる物や場所の対象がぐっと広がること。私はこの特性を利用して、地上約50qの成層圏まで飛ぶ気球と組み合わせ、直径千q、ほぼ日本全国をカバーする通信環境を構築する計画に取り組んでいます。東日本大震災のような大災害により、地上の通信が機能しなくなった際に、MAD‐SSを積んだ気球を飛ばすことで通信を回復。そうすることで、復旧対応の迅速化が見込めます。実用化までには、気球の高度を保つことなどさまざまな課題がありますが、社会的意義のある計画だと考えています。

また、調査の分野でもセンサーネットワークの活躍が期待されます。
私も以前、カラスの生態調査に使用しました。岩手県で10年前よりも冬に死ぬカラスが減った理由を探るため、カラスに装置を付けて観察。すると、朝はお墓のお供え物を食べ、昼は農家が廃棄した売り物にならない作物を食べ…と、まるでサラリーマンのように時間通りに行動する習性を身に付けていると分かったのです。

2 京都ならではの応用を!「千年後」と現代をつなぐアイデアを構想中。

このように、小型化、軽量化により、さまざまな応用が期待されるセンサーネットワークの技術は、すでに家電をネットワークで管理するスマートハウスなどで応用されています。しかし、私はこの技術でもっと世の中をがらりと変えられるはずと考えています。現在の課題は、何より技術に「アイデア」が追いついていないことですね。私自身、そのアイデアを模索していますが、中でも京都という土地柄を生かした案として、「千年コンピューティング」を構想しています。これは設置場所の自由度が高いセンサーを長期間残る物に埋め込み、千年後の時代に情報を伝えるというもの。 例えば、京都の町家をメディアにすれば、日常会話を千年後まで残すことができます。もちろん、プライバシーの問題やデータの保存方法などの課題はありますが、実現すれば、現代の私たちが平安時代の会話を聞くように、千年後に向けて、私たちの「今」をリアルに伝えられるでしょう。このように、さまざまな物やコトをつなぐことで、誰もが想像しなかった「便利」や「驚き」を生み出したいですね。

3 これからは、モノよりアイデアが、社会を変える!

近頃はゼミの学生たちと共にセンサーネットワークの応用方法を考えており、学生は毎週一つアイデアを発表しています。面白い案が出れば実現に向けて研究してもらう予定です。そこで私は「本当に面白いアイデアをいつも真剣に考えてほしい」といつも伝えています。アイデアを考えるうえでは、技術や知識は必ずしも重要ではありません。技術を役立てる方法を考え、「新しさ」を見極めることが大切なのです。彼らには学生ならではの柔軟な発想で、「特大ホームラン」のアイデアを考えることを期待しています。将来、社会にインパクトを与えるような人材に育ってほしいです。

瀬川先生のハマりもの!

中田先生のハマりもの!

秋田県大仙市の「全国花火競技大会」を見て以来、花火をよく見に行きます。この花火大会は100年以上続く伝統ある「競技大会」。
イルカ型や梅型など、他では見られないさまざまな花火を見ることができます。毎年見ていると、技術力や芸術性の進化が分かってくるので、とても楽しいんです。

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