京都産業大学キャンパスマガジン サギタリウス 2014 Apr. vol.63
Voice of Sagittarius 京都産業大学の先生を徹底解剖!理学部 大森 隆教授 主な研究分野は環境科学、電気化学。環境・エネルギー技術に関する研究の中でも、特に太陽光による分散型水素製造に関する研究開発を行っている。?CO₂を排出せず、しかも何度も使えるクリーンなエネルギーの正体とは!?
Voice1 使用後に出るのは水だけ。世界が注目する「水素エネルギー」。
皆さんもご存じのように、地球温暖化 1を防ぐため、クリーンエネルギーの開発は急務となっています。太陽光発電やバイオ燃料などの開発が進んではいますが、未だ課題が残っています。例えば、太陽光などの自然エネルギー発電は化石燃料と比べて発電力が低く、送電時のロスがあったり、貯蔵にも不向きです。またCO₂削減に期待されるバイオ燃料も、使用によるCO₂排出はゼロではありません。そのような弱点を補う次世代の燃料として注目が集まっているのが私が研究テーマとする「水素燃料」なのです。
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解説:この100年間に、世界で0.6℃、日本で1.0℃気温が上昇しているとされている。
Voice2 世界のエネルギーを変える、100年越しの化学反応。
水と酸素を反応させてエネルギーを得る水素燃料は、反応後に排出されるのは水のみ。その水からまた水素を製造すれば何度でも再利用が可能な循環型の燃料です。さらに、水素を作る際に必要な電力を太陽光発電で賄えば、その仕組みはもはや植物の光合成と同じ自給自足のスタイルになります。まさに現代のニーズを満たす燃料だと言えるでしょう。私が取り組んでいるのは、その水素燃料を各家庭や工場で作って使える「分散型」の水素利用の実現です。発電所のような大型施設で製造して分配するのではなく、エネルギーを使う場所で水素を作ることにより、太陽光エネルギーをムダなく使え、燃料輸送費も節約できると考えられます。私は、地球環境産業技術研究機構での研究を含め15年以上この水素の分散型利用について研究していますが、実はその理論や製造技術は百年以上前から存在していました。では何故、今まで実用化されなかったのか?その一番の理由は、やはりコストですね。水素は空気中に極微量しか存在しないので、必ず製造する必要があります。従来で最も効率の良い製造法ですら白金 2を利用しなければならず、採算が合わなかったのです。そこで私は、その水素製造コスト低減のため、白金より安価なニッケルを用いた「アルカリ水電解法」による効率的な製造法の確立を目指しています。ニッケルは安価な分、耐久性も低く、コストパフォーマンスが良いとは言えません。電圧の調整や、メッキ業者の方との協働で耐久性の高い電極の開発に取り組み、少しずつ成果は上がっていますが、さらなる効率化が必要です。しかし、もしこの技術が実用化されれば、家庭で水素を作れるのはもちろん、ガソリンスタンドで水素を作り車に補充するというようにさまざまなシーンで利用が可能に。導入後、社会のエネルギー体系はがらりと変わるでしょう。もちろん、そのような次世代型の体系を構築するには、私の研究だけでは実現できません。研究者の一人として、その世界的な研究の一翼を担いたいという思いが私の原動力となっています。
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解説:プラチナのこと。金より高値となることもある貴金属。相場によるが、おおよそ1gあたり4,500円を超える。
Voice3 学部だけでなく、大学院でさらなる研究の喜びを。
研究室では、水素燃料の研究成果を学生とともに学会発表したり、CO₂を有用な物質に変換する研究も行っています。今後もニーズの高まる分野 3ですから、大学院で研究に打ち込む学生が増えてほしいですね。忍耐強く実験を重ねるのは大変かもしれませんが、「失敗がなんだ」と強い気持ちで挑んでほしい。実験のほとんどは失敗します。それだけに一回の成功は本当に素晴らしく思えるのです。その喜びに出合うための基本原理と実験手法の基礎は、私が授業でしっかりと教えますよ。
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解説:政府からの研究助成があるほか、先生が所属する「電気化学会」の中でも水素燃料研究は一大セクションとなっている。

大森先生のハマりもの!ビートルズやユーミンを四六時中聞いています。

音楽を聴いたり、映画を観るのが好きですね。特に音楽は自宅でも外出先でも暇さえあれば聴いています。お気に入りは「ビートルズ」や「ユーミン」などのポップスですね。時々は映画館まで映画を観に行くのですが、最近で一番印象に残ったのは「ゼロ・グラビティ」でしょうか。3Dで観たのですが、あの映像には圧倒されました。

→先生が一番好きな曲は、ビートルズの「Strawberry Fields Forever」 だそうです!

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