現在、二人組の創作和菓子ユニット「日菓」として、創作和菓子の製作や展示など、さまざまに活動されている本学卒業生の杉山さん。和菓子店で販売員をする傍ら、創作に打ち込んでいらっしゃいますが、学生時代は外国語学部で英米語学科に所属し、部活動は写真部。和菓子よりも、むしろ海外に憧れていた学生時代だったそうです。卒業後は空港で働きたいと考え、イギリスへも留学。しかし、その経験が日本文化の良さに気づくきっかけとなり、自分の進路について模索を始めたそうです。「あの頃は漠然と表現することに携わりたいと思っていました。写真、食べ物、日本の文化にも興味があり、何かを発信したいと思っていましたが、上手く自分の心とリンクする表現方法が見つかりませんでした」。
そんな杉山さんを和菓子の世界に導いたのは、『和の菓子』という一冊の写真集。四季折々の和菓子の美しさを綴ったその写真集に、杉山さんは強く引きつけられたそうです。「小さな和菓子の中に、一つの完結した世界が表現されていることに感動しました」。和菓子という表現に自分の心とリンクするものを見い出した杉山さんは、老舗の和菓子店に就職しました。和菓子で「誰も作ったことのない、自分の世界を作りたい」という夢を抱いて入社した杉山さんでしたが、配属されたのは販売職でした。「でも、和菓子を作りたいっていう気持ちは持ち続けていて、あきらめるつもりはありませんでした」。そんなときに出会ったのが、現在の「相方」である内田さんでした。杉山さんと同じ写真集に影響された内田さんとは、すぐに意気投合し「日菓」を結成。「知識も技術も未熟でしたが、作りたいっていう思いだけで始めましたね。一つ一つレシピを見ながら手探りで作っていくような状態の中でも、自分なりの表現を加えていく、というこだわりを持って取り組んでいました」。
今では日菓での創作を活動のメインとし、これまでたくさんの作品を発表されてきた杉山さん。作品づくりでは「誰にでも分かりやすく、日常的に楽しめる和菓子をつくる」ということを大切にされています。その思いは、最近の作品であるテトリスのブロックの形をした干菓子にも現れています。「和菓子を通して日本文化を広めたい」という思いから年に数回開催している個展では、作品を見て日本文化に触れるとともに、展示作と同じ和菓子を食べられるようにされているとか。「和菓子は、見て楽しんでもらえるだけでなく、食べて、その人の一部になっていくということにも、表現としての面白さがあると思います」。個展での評判は上々。「本来は和菓子が苦手という方に、日菓の和菓子なら食べたい、と言われたときはうれしかったですね」という喜びがある反面、「結構な数を作らないといけない」という大変さも。「前日に徹夜で仕上げて、当日は二人で仮眠を取り合うこともありましたね」と笑う杉山さんでした。日菓の活動では、もう一つ作品づくりで大切にしていることがあります。それは、作品の依頼には必ず「お題」をもらうこと。「お題」という外からの刺激を受け、素材に向き合い、想像力を和菓子に練り込みながら新しい和菓子を作る。その過程で、さまざまなものを取り入れ変化する、「和菓子」という表現の懐の深さを感じるそうです。最近では、器作家とのコラボなど活動の幅を広げ、さらなる和菓子の可能性を探る日々。素材と味は「和」にこだわりながら、今後も伝統を今に橋渡ししていきたい、とのことでした。そんな杉山さんに大学時代の友人についてお聞きすると、引き出物用の和菓子を依頼されるなど、今もつながりは深いといいます。学生時代に悔いはないというほど、さまざまなことに挑戦し、自身の道を見つけられた杉山さん。「今思えば、学生の間にしかできないことは多かったですね。だから、学生のうちは思いついたら即行動!そして自分の道へ、強い意志で突き進んでほしいです」とメッセージをいただきました。