京都産業大学キャンパスマガジン サギタリウス New!! 2012 Apr vol.55
子どもたちの将来を創り、地域の未来を輝かせる。
先輩、今どうしてる? LINK  高校生レストランをプロデュースした岸川さん。そのきっかけと成功の秘策を伺いました。  三重県・多気町役場 まちの宝創造特命監 岸川政之さん 1957年生まれ。京都産業大学経営学部卒業後、多気町に入庁。税務課、農林商工課などを経て2011年から、まちの宝創造特命監に就任。ドラマ「高校生レストラン」の舞台となる相可高校の生徒が運営する「まごの店」の企画に携わる。そのほかにも全国各地で町おこしをプロデュース。
斬新な地域活性プランは、ある高校生たちとの出会いがきっかけ。
2011年5月から全国で放映されたドラマ「高校生レストラン」で、一躍脚光を浴びた三重県多気郡多気町。その話のモデルになった「まごの店」の仕掛け人として注目を集めたのが、本学の卒業生であり、現在多気町役場で「まちの宝創造特命監」として活躍している岸川さんです。高校生が地元食材を使った調理から接客、会計までレストランの運営のほとんどを行う、その斬新な地域活性施策は、ひとつの出会いから始まったそうです。「相可(おうか)高校食物調理科の生徒たちとの出会いは、地元農業の活性化を目的としたPRイベントでした。そこで彼らが作った料理は、まるで高級レストランのコースメニューさながら。本当に驚きました」。光る才能をもったこの生徒たちに、より輝ける舞台を用意してあげたいという思いが湧き上がり、高校生が切り盛りする料理店「まごの店」のプロデュースを決意。しかし高校生によるレストラン運営は全国的に見ても前例がなく、次から次へと難題が持ち上がったそうです。「食中毒が起きたらどうするか」、「高校生を使ってお金もうけするようで気が引ける」などの課題を一つ一つ乗り越えていった岸川さん。その原動力は「本気で頑張る人を応援したい」という強い気持ちだったそうです。「私は昔から、一通り何でもそれなりにこなせる『器用貧乏』でした。例えば楽器の演奏に夢中になっていたとき、ある程度のレベルを自覚していたのですが、私の周りにはもっと熱心で上手な演奏者が山ほどいる。それに気付いたとき、自分は一流ではないなと悟ったんです。それで、そういった一流の人やモノを世の中に広めていくことが自分にふさわしいのではないか。そんな気付きがあったのです」。
老若男女さまざまなお客さまがいらっしゃいます。おかげさまで本日も満席!
「まごの店」厨房にて。料理は真剣勝負。生徒一人一人の「本気」の表情を見ていると、レストランをプロデュースして本当によかったと思いますね。
いまを全力で生きることで、未来を切り開く。
数々の困難を乗り越えてオープンした「まごの店」。現在は運営の大部分を高校生たちに任せているといいます。「私はあくまでも仕掛け人。仕掛けは最低限の環境を整えるにとどめて、あえて未完成の部分を残すようにしています」。応援は全力で。でも、やり過ぎない。だからこそ高校生たちが自ら考え成長していく余地が残ると岸川さんは話します。そして輝く人が育つ場所にはおのずとファンが増え、地域も元気になっていきます。現に「まごの店」には遠路から足を運ぶお客さまも多いそうです。「地域活性のためには、人と企業と地域が協力し合うことが大切。中でも特に重要なのは実践者である『人』だと考えています。同じ目標に向かって協力しながら物事を進めていると、お互いに刺激を与え合い、成長できます。それに、蓄積されたノウハウは人から人へと継承されていきますよね。一人が手を離してもほかの誰かがしっかりと後を継ぐ。そうなれば、その地域は継続的に発展していきます」。常に多数のプロジェクトを抱えながら「人を生かした地域活性」を行っている岸川さん。「高校生レストラン」のほかにも、高校生のアイデアを元に地元名産である伊勢茶を使用した「まごころteaハンドジェル」を商品化するプロジェクトを積極的に推進。そんな岸川さんの大学生活について尋ねると、「大学時代で得たのは、友人との深いつながりですね。夢を語り、ときに叱咤激励し合う仲間が京都産業大学にはいました。そうした『身近な人を応援したい』という思いが、今の地域活性への取り組みの原点なのかもしれません」。時に悩みながらも、目の前のことに全力で向き合ってきた岸川さんには、これまで地域活性プロジェクトなどで触れ合ってきた高校生、大学生に必ず伝えてきたことがあります。それは「今を懸命に生きて、未来を創っていく」こと。「若い皆さんには、小さくてもいいから目標を持ってほしいと思います。目の前のことを一生懸命頑張れる人には、必ず新しい世界が見えてくるはずですから」。
INFORMATION 高校生レストランの奇跡 常に満席・完売の高校生レストラン「まごの店」は、どのような経緯を経てオープンに至ったのか。前例のない町おこしを岸川さんがまとめた一冊。一歩を踏み出す勇気をくれる。
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