京都産業大学 キャンパスマガジン サギタリウス VOL.54
Voice of Sagittarius 経営学部准教授 藤野敦子先生
広告会社の経営戦略や組織について研究。 画像
「子どもを社会全体で見る」制度が整うフランス。
少子高齢化、所得格差、女性就業、外国人労働者問題など、暮らしや生活に密着した社会経済に関する分析と政策提言を行うのが、藤野先生の研究テーマだ。「現在メインで取り組んでいるのが、少子化・出生率の問題をテーマとした日本とフランスの比較研究です」。フランスはヨーロッパでも一、二を争うほど出生率が高く、その要因として週35時間労働や手厚い保育システムなど、女性が自由に働くことのできる制度が整っていることが挙げられる。そして、何より大きいのが「子どもを社会全体で見る」という体制が制度的にも、国民の意識的にも根づいている点だ。「家事や育児、教育といったことに関して女性だけに負荷をかけるのではなく、夫や国が一体となって支え合う仕組みがフランスでは確立しています。それが、女性の社会進出を大きく促進しているわけです」。
優れたクリエイティブには人の心を動かす力がある。 画像
愛情を込めた料理を男性が作ってもいい!!
夕食のテーブルに冷凍食品が毎日並ぶというと日本では非難されそうだが、フランスでは晩ご飯は「レンジでチン」なんて当たり前。誰が作っても大して変わりがないという考えがある。「手抜き料理がいいというわけではありませんが、家事は女性がするもので、女性が家事をするときは愛情を持って取り組むもの、といった感じに発想を結びつけていくのはよくありません。つまり、愛情を込めた料理を男性が作ってもいいわけです」。家事や育児は女性の仕事といった決められた枠組みから解放されることで精神的な余裕が生まれ、その心のゆとりが、長い目で見たときに出生率の向上にもつながっていくという。「1968年の5月革命を機にフェミニズム運動が活発になるまで、実はフランスは男尊女卑の激しい国でした。女性の社会的な地位も低く、その意味では1970年ごろまでは今の日本と当時のフランスの女性の立場はよく似ていたわけですが、フランスではそこから家族の在り方が大きく変わり、それが現在の両国の出生率の差にもつながっていると考えられます」。
文化の違いを認識した上で、相手の考えを学ぶことの大切さ。
藤野先生が初めてフランスを訪れたのは大学院生のとき。第二外国語でフランス語を専攻していた縁もあって留学先に選び、2年間を当地で過ごした。また教員となって以降の2009年にも客員研究員としてパリ第10大学に1年間留学。今では「第二の故郷」ともいえる愛着のある国になっている。「フランスが魅力的なのは、芸術の国、愛の国であるところ。自分の表現したいことを追求するのが芸術ですが、それと同じでお金にあまり執着せず、みんな自分のやりたいことをやっています。また、恋人や家族との時間を大切にするフランスの雰囲気も大好きです」。そういった文化的背景が、出生率を高めるバックグラウンドにもなっているわけだが、文化が違うから日本が同じようにするのは無理と思考停止になるのではなく、相手の考え方を学ぶ姿勢が大切だという藤野先生。「そういった社会の問題に光を当て、解決の糸口を見つけられたときが研究の喜びを感じる瞬間ですね。今後も研究活動を続ける中で、一つでも多く社会に貢献していければと思います」。
先生のもうひとつの顔
趣味はピアノ。教会専属のオルガニストとしても演奏しています!
3歳からピアノを始め、中学まではピアニストを目指していました。教会専属のオルガニストとして、月に1度はオルガンを演奏するほか、理事を務める保育園などでも、不定期にピアノ演奏をしています。
先生のもうひとつの顔
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