京都産業大学 キャンパスマガジン サギタリウス VOL.50
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インドがIT大国になったその歴史的背景とは!? 画像
インドがIT大国になったその歴史的背景とは!?
インド学といえば、日本では長らくインドの哲学や宗教を主体とする学問だった。しかし、それだけではインドの全容をとらえることはできないと考えた矢野先生は、インドの科学にも注目し、これまで天文学、数学、医学の3つを主なテーマに研究を続けてきた。「インドの科学を文化史的に解明するために心がけているのは、過去と現在を切り離さず、連続したものとして扱うということ。例えば、近年インドはITの分野で飛躍的な成長を遂げていますが、その背景には古代から天文学に応用されてきたインドのすぐれた数の処理法や論理的思考法があると考えられます」。そこには古代から現代までつながるインド科学の大きな流れがあり、過去と現在とを相互に照らし合わせることで、長い歴史を持つインド文化の特異性、多様性が浮かび上がってくる。そして、そのテーマの一環として矢野先生が長年取り組んでいるのが、インドの暦の研究だ。
伝統的な暦・天文学と、ITをどのように折り合わせるか。 画像
伝統的な暦・天文学と、ITをどのように折り合わせるか。
インドの暦は「パンチャーンガ」と呼ばれ、古来より生活ならびに人生の道しるべとして活用されてきた。このパンチャーンガは占星術にも用いられるが、近年インドの占星術を取り巻く状況は大きく変化してきている。「私が約20年前に現地で取材をしたときは、伝統的なインド天文学に基づき手計算でホロスコープを作っている占星術師がほとんどでした。しかし現代では多くの占星術師が手計算をやめ、コンピュータを導入しています」。その変革により、伝統的な暦・天文学と現代のITをどのように折り合いをつけるかが、今インドでは大きな問題となっている。「正確な計算結果が得られるコンピュータを用いた近代天文学を利用しつつ、文化保存の観点から昔ながらの暦の枠組みはなくさず、伝統的な祭などは残していくべきというのが私の考えです。この問題を取り上げたインドでの会議に近々出席する予定で、現地の人の考えを聞くとともに、私の意見も伝えられればと思っています」。
「インドを学ぶ」のではなく「インドから学んでいる」。
実家がお寺で、大学では仏教のルーツであるインドについて学ぼうと思い、インド哲学を専攻。それがインド学に取り組むきっかけとなった。「学びを通じてインドの文化そのものに興味を持ち、哲学だけではもの足りないと医学、天文学、数学、占星術と興味の幅を広げ、各分野の研究に取り組むようになりました」。そんな矢野先生にインドの魅力について聞いてみると、「なんでもあるところ」という答えが返ってきた。「哲学や宗教的なことから科学の分野まで、あらゆることがインドの文化と歴史の中にはあります。私はインドを学ぶというより、インドから学んでいると常々思っているのですが、そんな多様なインドについて調べ、追究していくことがとにかく楽しいんですよ。今後も研究を進めるとともに、そこで得たものを自分の人生にどう還元できるかについても考えています」。
先生のもうひとつの顔
先生のもうひとつの顔
ほぼ毎年、研究などでインドを訪れますが、そのたびにパンチャーンガを購入してきます。古代の天文学を元にしたもの、コンピュータを使って作られたもの、さらには地方によっても暦の違いがあるなど、インドで売られているパンチャーンガの数は100種類以上!?現地に行けば10冊程度は買って帰ってくるので、今では膨大なコレクションになっています(笑)。
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