交通広告 Keep Innovating. 2015 シリーズ3

Keep Innovating. シリーズ

地域・行政と協働した
“おもてなし”で
観光のバリアフリー化
を目指す



 学生と東山区役所、地域店舗の3者協働で活動する「東山観光支援コミュニティ(京都・東山観光おもてなし隊)」では、より多くの観光客に東山を楽しんでもらえるよう“観光のバリアフリー”に取り組んでいる。その一つが、食物アレルギーに対応したメニュー開発。学生自らアレルギーについて調査を行い、豆乳を代用したクリームコロッケや、卵の代わりに湯葉で巻いたオムライスなどを提案。地域店舗の協力を得てメニュー化を進めている。

今回の取り組みでは、具体的にどのようなことを行ったのですか?

井上さん:東山における観光のバリアフリーを考えるにあたり、まずは観光客へのインタビューから始めました。実際に東山まで出かけて、外国人や修学旅行生に何か困っていることがないか調査したんです。次に、観光客が旅行を楽しむために何が必要かを考えました。アレルギーのある人は、同伴者と同じものが食べられず、旅行先の食事においても制限がかかってしまう。アレルギーがあっても東山を楽しんでもらえるように、東山のアレルギー・フレンドリーなお店を紹介する冊子の作成をしようと提案しました。

春田さん:制作にあたっては、東山区役所の力をお借りし、協力店舗を探しました。もともとアレルギー対応をしているお店もあまり多くはなかったので、当初は苦労しましたね。「東山観光支援コミュニティ」の会員店舗を中心に交渉をしていきました。

経営学部3年次 井上 知歩

メニュー開発を経験してみて、大変だったことや工夫したことはありますか?

井上さん:一番大変だったのは、食物アレルギーについてきちんと知ること。私たちは全く知識がなかったので、対象品目や症状、対処法などを調べるところから始めました。

春田さん:アレルギーにどこまで対応するのかが難しかったですね。アレルゲン食品を除外する場合にも、調味料や調理器具まで考慮しなければいけない、などと課題はたくさんありました。

井上さん:また、アレルギーで悩む人々をサポートするNPOの方に監修に入っていただき勉強会なども行いました。「こういうメニューにしたい」とアイデアを出すと、「清水順正 おかべ家」さんをはじめとするお店の方々が「ではこういう風に対応できるのではないか」と提案してくださり、形にしていくことができました。

経営学部3年次 春田 美咲

区役所の方やお店の方から見て、学生たちの動きはいかがでしたか?

区役所・後藤さん:私たちはおもてなし隊の事務局として、学生たちのサポートを行っているのですが、非常に頑張ってくれていると思います。ゼミの授業以外の時でも東山まで足を運んでくれましたし、打ち合わせにも熱心に参加していたところは印象的ですね。

順正・井上さん:おかべ家では普段から、アレルギーのあるお客さまへの対応について考えてはいたのですが、お店側とはまた違った、よりお客さまに近い視点から意見をくれるので、良い刺激になっていると思います。

清水順正おかべ家 井上 裕章さん
(1996年 本学法学部卒)

今後この取り組みをどう進めていきたいですか?

井上さん:アレルギーの冊子はまだ制作段階。7月頃の完成に合わせて、イベントも企画中なので、まずはこの2つを成功させたいと思っています。

春田さん:イベントについてはまだ構想中ですが、最初にアレルギーにまつわる講習を行い、その後グループに分かれ実際に東山の街に出て、アレルギー対応のお土産を探してもらおうというもの。学生や地元の方など広く一般向けに開催する予定です。これからもっと内容を詰めて、多くの方に参加していただけるイベントにしていきたいですね。

区役所・後藤さん:もちろん今回のアレルギー対応メニュー開発についても更に継続していってほしいですが、おもてなし隊としては「ユニバーサルツーリズム」という大きなテーマの中で活動をしているので、それ以外にもさまざまな課題に取り組んでいきたいと思っています。京都産業大学さんとのコラボレーションは5年前からになるのですが、これまでも観光客への車いすの貸し出しサービスや、車いすマップの製作などを行ってきました。これからも学生たちの“気づき”をもとに観光のバリアフリー化を進めていきたいと考えています。

東山区役所 地域力推進室
後藤 祐也さん

地域・大学・行政の3者協働で取り組むという点で、昨年度「みやこユニバーサルデザイン大賞」を受賞されたそうですね。この3者協働についてはいかがでしたか?

井上さん:何もかもが勉強でした。これほどたくさんの人に協力していただくのは初めてでしたし、社会人の方と関わることは授業でもあまりないことだったので、貴重な経験をさせていただいていると思います。

区役所・後藤さん:学生たちが学外のいろんな方と広く知り合い深めていくことができるのは、社会人としての基礎力を身につけるために役立つ良い取り組みだと思います。昨年度受賞した「みやこユニバーサルデザイン大賞」では、「地域・大学・行政ぐるみでユニバーサルツーリズムな京都観光のスペースを作っている姿が、広く市民の方を巻き込み、啓発に繋がっている。今後の広がりが期待できる」と評価をいただきました。手すりの設置や道路の改修工事などハード面はできなくても、相手の気持ちになって考える心のバリアフリーという点でも評価していただいています。3者それぞれが持ち味を活かし、さらに幅を広げていきたいですね。

順正・井上さん:観光支援コミュニティの会員は現在48店舗。もっと会員店舗を増やして、街ぐるみのおもてなしが広がっていってほしいです。例えば外国人観光客が来た時に「うちの店ではわからないけれど、あの店なら対応できるよ。」と、お店同士が観光客のために助け合えるような街を目指しています。

区役所・後藤さん:「おもてなし」とは、特別難しいことをするわけではないんです。できる人が、できることをする。「休憩スペースを用意しているよ」「バリアフリートイレがあるよ」「哺乳瓶の温めを行っていますよ」など、すでにやっていることをより多くの人に知っていただくだけでおもてなしになるんですよ。そこで、今は会員店舗数100店を目標に、お店の取り組みを紹介させてもらえるよう、学生たちが中心となって呼びかけています。

最後に、京都産業大学で学ぶ魅力は何ですか?

井上さん:やはり今回のように、自ら歩いて、調査をして、企画して、という貴重な経験ができることですね。このゼミに入らなければできなかった体験です。何より楽しんで取り組める授業があるところが魅力だと思います。

春田さん:私はフレキシブルカリキュラム(融合教育科目)が決め手。他の学部の授業も受けられると知って受験を決めたんです。学部の垣根を越えて幅広く学べるのは京都産業大学ならではの魅力ではないかと思います。

東山観光支援コミュニティ(京都・東山観光おもてなし隊)
誰もが安心して観光を楽しめる「ユニバーサルツーリズム」のまち・東山の実現を目指し、観光客等に対して親切できめ細かいサービスを提供するお店や施設等でつくるコミュニティ。京都産業大学経営学部 松高 政 准教授を中心に、松高ゼミ生や東山区役所のメンバーで運営している。

清水順正 おかべ家
自家製豆腐製造所を有し、バリアフリー設計のゆったりした客席でゆどうふ、ゆばをはじめとした豆腐料理を楽しめる。

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