交通広告 Keep Innovating. 2015 シリーズ1

Keep Innovating. シリーズ

京都に根ざす
日本の文化に触れ、
社会に活かす“本物”の
学びを。



 文化学部小林ゼミでは毎年、古典作品による地域の観光促進をテーマにさまざまな活動を行っている。本年度は、百人一首ゆかりの地、嵯峨・嵐山地区をめぐる音声ガイドアプリのコンテンツ制作に携わった。
 アプリはスマートフォンにダウンロードして使用。GPSで位置情報を認識し、百人一首にまつわる建物や歌碑などに近付くとその場所の見所やエピソードなどを音声で案内する。コンテンツは小倉山をはじめ広沢池や渡月橋などの名所・約100種類が用意されている。制作にあたり、学生たちは何度も現地へ足を運び、寺院の方や地元住民の方に取材を重ねた。

今回、嵯峨・嵐山地区の音声ガイドコンテンツを作成するに至ったきっかけは?

小林先生:今年は小倉百人一首殿堂時雨殿さまから、嵯峨・嵐山地区を実際に歩きながら楽しめる音声ガイドをつくりたいとのお話を聞き、私のゼミ生なら作り上げることができると思い引き受けることにしました。学生には、何より柔軟な発想力とトコトンのめり込む熱意があります。民間企業とは違い、利潤を求めないからこそ素晴らしいものがつくれるのです。

中村さん:私はガイダンスの際に、今年のゼミでは祇園祭でのお手伝いに加えて「嵯峨・嵐山地区の地域発展のためにお手伝いをする」と聞いて先生のゼミを受講することを決めました。もともと高校生のころから、地域に貢献したい、地域に携わりたいと言う思いがあったので絶好のチャンスだと。大学進学時に地方から出てきたので、京都の文化にここまで深く関わり、体験できるというのはとても貴重な経験でした。

文化学部 小林 一彦 教授

では、実際に制作にあたってみていかがでしたか?

小林先生:最初はなかなか学生たちのエンジンがかからず、どうなることかとひやひやしました。5月に初回の顔合わせをして、実際に軌道に乗り始めたのは実は10月ごろ。学生たちが協力して進められるように合宿を企画したり、外部の協力団体の方との打合せを行ったりして、できる限り学生に意識を持ってもらえるよう努めました。それでもなかなか上手くいかなかったですね。学生たちもどこかで本気になるきっかけがあったのだと思いますが、どうでしょうか?

中村さん:きっかけ、と言えるかはわからないですが、各々に自覚が生まれた時期はあったと思います。これは皆さまに使っていただくものなんだ、とか自分たちに協力してくれる方々がこんなにたくさんいるんだ、とか。自分たちの活動の意味を改めて理解していくにつれ、全員の意識が変わったのだと思います。話し合いや資料集めを重ねていくうちに、本気で取り組んだことには周りも本気で返してくれるのだということが感じられたのも大きいですね。
私は鹿王院(ろくおういん)と落柿舎(らくししゃ)を担当したのですが、何度も足を運んで、周辺の地理なども含めて調査をしました。人のいない時間帯を狙って朝早くから訪れたり、最終バスのぎりぎりまで残ったりして、より詳しい内容を盛り込んでいきました。

文化学部4年次 中村 里奈

小林先生:実制作においても、学生たちは実によく考えていましたよ。音声ガイドは、文字を打ち込むと読みあげてくれるソフトを使用したのですが、たまに通常の文章ではおかしなアクセントになってしまうことがあるんです。そんなときに、じゃあどう打ち込めばなめらかに読んでくれるのだろうと考えて、「ここはアルファベットで入力しよう」「ここは同音異義語を使おう」などと試行錯誤している様子が印象的でした。聞き手にとって聞き取りやすいことが何よりも大切なので、発音や間の取り方など細部にまでこだわったおかげで質がぐっと向上しました。

3月8日、音声ガイドの完成を記念して、小倉百人一首殿堂 時雨殿にてシンポジウム「嵯峨・嵐山地域の百人一首の魅力を訪ねて」が開かれた。小林教授とゼミ生たちも参加し、音声ガイドの制作に技術面で協力していただいた富士ゼロックスの開発担当者の方々と制作秘話やこの地域の魅力について語り合った。

一年間、小林ゼミで学んで得たものは?今後どう活かしたい?

中村さん:基本的なことですが、“ホウレンソウ”(報告・連絡・相談)の大切さを身を持って感じました。ちょっとした疑問でも恥ずかしがらずに聞いたり、異なる地域の調査を担当する仲間にアドバイスをもらったり。チームで何かを作り上げるときには互いにコミュニケーションを取ることが何よりも大切なんですね。

小林先生:情報共有については、きちんとやりとりをしようと常々言っていました。些細なことでも、仲間同士で連絡を取り合うのは大事なことです。また、学外関係者へのメールなども立派に書けるようになり、学生の成長を感じました。このスキルは、社会に出てからとても役立つと思いますよ。

中村さん:私はこれから就職活動の時期。京都で地域発展について学んでみて、やはり地元や地域に貢献できる職業に就きたいと改めて思いました。この1年間で学んだこと・経験したことを活かして取り組みたいです。

4月から新設される京都文化学科の展望をお聞かせください。

小林先生:京都文化学科では、「本物」を教えたいと思っています。本物を使って学び、本物で成長する。京都は世界中でも指折りの「本物」が集まるまちです。そんな京都の文化や風土、人、知恵を学び、実社会で使える文化を学ぶ。これから日本は、地方の活性化に力を入れていくべきです。地域のために何かしたい、地域に活かせる力を身に付けたい、という人にぴったりの学部。京都の文化を体感することで、これからの地方、そして日本をつくっていく人材を育てたいと思っています。

掲載期間2015年4月〜

小倉百人一首殿堂 時雨殿
藤原定家が百人一首を編纂した小倉山の麓・嵐山にある、百人一首の多様な世界を体感できるミュージアム。百人一首の世界を「見て」「感じて」「学ぶ」をテーマに貴重な資料やジオラマなどを展示している。

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