交通広告 Keep Innovating. シリーズ2

Keep Innovating. シリーズ2

Keep Innovating.
星がつながって
物語が生まれるように、
夢をつなぎ、
確かなかたちにむすぶ場へ。


進化する「神山天文台」

 キャンパス全体を見わたせる高台に建ち、毎夜、遥か宇宙の彼方を見つめる「神山天文台」。ここには、私立大学としては最大となる直径1.3mの反射鏡をもつ「荒木望遠鏡」を中心に、独自開発した天体用観測装置が並ぶ。2010年4月の運用開始以来、その独自の観測装置を駆使し、世界を驚かすような数々の成果を挙げてきた。しかし、この天文台の真の“革新性”は、実はその「開放性」と「連携力」にある。ここでは、世界中の大学や宇宙開発機関と連携して宇宙の謎の解明に挑む学生や、光学機器メーカーと一緒になって世界トップレベルの性能をもつ観測機器開発に取り組む学生がいる。また、市民やアマチュアの天文ファンに向けた観測会や市民講座も頻繁に行われている。つまり、大学内にありながら学生以外にも市民や産業界に解放され、誰もがそれぞれの夢や希望を抱きながら、宇宙の最先端に挑戦することができる。そんな「神山天文台」では今、宇宙の謎に挑戦する新たなプロジェクトが進行中だ。

 

河北秀世天文台長との一問一答

Q: 現在、開発が進む近赤外線高分散分光器WINERED(ワインレッド)とは?

 人間の目には見えない赤外線という光で宇宙を観測できる特殊な装置です。
 2013年5月に東京大学大学院理学系研究科と共同研究に関する協定を結び、協力しながら開発を進めている天体観測装置です。まだ開発途中ですが、すでに世界トップレベルの性能を発揮しており、すでにこれを使った観測研究も始まっています。現在は、観測を続けながらさらに高い性能を目指した開発を進めています。そうした開発の中で、JAXAが進める次期宇宙天文台の観測装置にも応用されるような技術の開発も行っており、さらに小型で高性能な装置開発も計画しています。

神山天文台長・理学部教授 河北秀世

Q:WINEREDを使って、宇宙の何を見ようとしているのですか?

 近年、観測技術の向上によって、これまで何もないと思われていた宇宙の領域でも、さまざまな分子が確認され始めています。そうした分子の存在を調べようとすると、どうしても赤外線が必要となります。赤外線は可視光よりも波長が長く、まっすぐ進むため、生まれたての星の内部や銀河の中心部など、ガスやチリで光が散乱し可視光を使った観測装置では見えない場所もクリアに見ることができます。また、宇宙の遠くを見ようとすると、宇宙膨張によるドップラー効果で星から来る光が赤方偏移しているため、赤外線観測が欠かせません。つまり、赤外線観測により、遠くの宇宙をよりクリアに見ることで、星の成り立ちや宇宙の歴史に迫ることができるのです。

Q:こうした開発や研究に、学生はどのように関わっているのですか?

 この観測装置の開発には、本学の学生や神山天文台のスタッフ、そして東京大学大学院の学生、ポスドク、スタッフなどがチームとなって取り組んでいます。他にも、光学機器メーカーや地元の観測機器開発会社など、多様な人たちが関わっています。また、NASA(米国宇宙航空局)やESA(欧州宇宙機関)などの国際的な連携のもとで行う研究もあります。そうした開かれた研究環境のなかで学生たちは、さまざまな技術を学びながら世界屈指の性能を誇る観測装置を開発し、さらに自ら開発した装置を使った観測で、数多くの成果を挙げています。

Q:これから「神山天文台」では、どんな研究や開発が行われていきますか?

 もともと「神山天文台」は、宇宙物理学の研究者であった本学創設者:荒木俊馬博士の建学の精神のもと、天文学の教育・研究を核に、市民や産業界との有機的な結びつきを通して、社会に貢献できる実践的な人材の育成を目指して設置されました。そのため、大学附属の天文台としては珍しく、学生の研究活動以外にも、いろいろな人たちが集まり、さまざまに繋がりながら世界的な学術成果を目指す場となっています。こうした環境そのものが、この天文台の“革新性”だと言えるでしょう。実際、観測装置の開発も、産業界との連携からスタートしています。こうした新たなむすびつきを生み出し、価値創造につなげることが神山天文台の使命であり、これからもいろいろな人たちを巻き込んで、学生たちに新たな挑戦の場を提供していこうと思っています。

学生メッセージ

「目的をもって行動すれば、みんな、全力で支えてくれる」

理学部物理科学科4年
北野綺華

 高校の物理の授業で素粒子の話を聞いて興味を持ち、素粒子物理学を学びたくて京都産業大学に入学しました。ただ、大学入学後、「神山天文台」で望遠鏡を覗きこんだときから、天体観測にも興味をもつようになりました。また、ここで観測装置の開発に関わる人たちの話を聞くうちに、モノづくりの面白さに惹かれ、4年次から観測装置開発の研究に携わるようになりました。現在は、これまで先輩方が収集された観測データの解析を担当。最終的には、この解析結果に基づいて、どの波長領域にどんな分子があるかを示す新たな解析ツールの開発を目指しています。京都産業大学は、私のように自分から手をあげれば何でもやらせてもらえる大学です。研究以外にも、資格取得やボランティア、サークルなど、自分が目的をもって行動すれば、大学は全力で支えてくれます。皆さんも、ここで夢中になれるものを見つけてほしいと思います。

「人類共通の夢に仲間たちと挑戦する、その実感が研究に打ち込む糧に」

理学研究科物理学専攻2年
中岡哲弥

 私も、素粒子や最先端の理論物理学を学びたくて、ノーベル賞受賞者の益川教授がいらっしゃった京都産業大学を目指しました。私が学部在学中の2010年に神山天文台が完成し、ワクワクしながら真新しい望遠鏡を覗きこみました。そして実習を通して観測装置に興味をもち、赤外線高分散分光器の開発に携わるようになりました。現在開発中の装置はすでに世界トップレベルの性能に達していますが、私が目指す最終ゴールは、最先端技術「イマージョン・グレーティング※」を導入し、さらに性能を向上させながら小型化を実現すること。それは将来、宇宙開発技術への応用にもつながるたいへん意義のある挑戦でもあります。そしてもう一つの目標は、この装置を使った観測によって、世界に発信できる成果を挙げること。そのためには解析ツールを確立する必要があり、この分野で他の研究機関とも連携しています。このように、開発には多くの人たちの協力が欠かせません。そんな仲間たちと、宇宙の謎の解明という人類共通の夢に向かって挑戦している実感が、研究に打ち込む糧となっています。

※現在開発中のイマージョン・グレーティングは、アメリカが中心となって進めている30m望遠鏡(TMT計画=Thirty Meter Telescope計画)や、日本の次世代宇宙望遠鏡(SPICA)への搭載が検討されている。特にSPICAは波長の長い赤外線観測が主な目的のため、この装置の活躍が期待される。

掲載期間2014年8月〜

京都産業大学神山天文台

京都産業大学神山天文台

京都産業大学神山天文台では、毎週土曜日に一般向けの公開および天体観望会を行っている。19時からの天体観望会では、私立大学最大の口径1.3mの荒木望遠鏡を直接のぞいての観望ができ、専門員や学生スタッフが解説を行う。雨天・曇天の場合には3D映像上映を行う。入場無料・予約不要。

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