交通広告『その挑戦が「型やぶり」』シリーズ5

その挑戦が「型やぶり」

学生が考えた「人生すごろく」が商品化!

キャリア形成支援科目「O/OCF-PBL2・3 2012」受講生チーム


(左から)松尾智晶 全学共通教育センター准教授
近藤一樹・浦辻龍一郎・
中田美麗・中村聡

 企業団体から提供される課題の解決にチームで取り組み、社会人基礎力を養うキャリア形成支援教育の授業で、日本キャリア開発協会(JCDA)から与えられたテーマは「大学生の視点を活かすキャリアカウンセリング体験プログラム開発」。チームの学生らは当初テーマの意味すら理解できなかったが、自らキャリアカウンセリングを体験し、「自分の過去を振り返ること」「経験や思いを言葉にすること」が重要だと気づいた。キャリアとは仕事だけでなく人生そのもの、との思いから、幅広い年代が気軽に楽しむことができる「人生すごろく」を考案。学生や企業などさまざまな人たちに協力してもらいながらトライアルを繰り返し創り出した案が、JCDAによる開発が加えられ、「人生すごろく『金の糸』〜golden thread〜」として商品化されるにいたった。何度も失敗しながらも、自分を見つめ直し、ぶつかっていく。この経験の積み重ねこそが今、チームの誇りと自信につながっている。

みなさんの取り組み内容を教えてください

 O/OCF-PBLは、企業や団体から提供された課題に取り組み、実践を通して「社会人基礎力」を育成するプログラムです。私たちは、特定非営利活動法人 日本キャリア開発協会(JCDA)からの「大学生の視点を活かす、キャリアカウンセリング体験プログラム開発」という課題に2012年4月から9月まで取り組みました。

 課題説明を受けたときには、「キャリアカウンセリングって何だろう?」というところから議論しなければならなかったのですが、在学生へのアンケート調査や本学の進路・就職支援センターへのヒアリングなどを行ったり、自分たちが「キャリアカウンセリング」を体験したりするなかで、まず自分の考えや想いを言葉にし、相手に伝えることの重要性と、過去の自分を振り返ることによる気づきというものがいかに大切か、ということを発見しました。

 この「過去の自分を振り返ること」「経験や思いを言葉にすること」ができるツールとしてこれまでの自分を振り返るゲーム形式の「人生すごろく」を考案、提案しました。

 その提案が評価され、2014年3月に「人生すごろく『金の糸』〜golden thread〜」としてJCDAから商品化されることになりました。

「人生すごろく」は具体的にどのようなツールですか

「人生すごろく」の原案

 私たちが考えた「キャリアカウンセリング体験 人生すごろく」は、サイコロを振ってコマを進めながら、「好きな教科は何でしたか?」「夏休みの宿題はいつ終わらせていましたか?」「思い出に残っている行事はなんですか?」などの質問に答え、小学校・中学校・高校・大学時代を振り返るものです。

 試行錯誤しながらトライアル版を作成し、それを持って本学や他大学の学生、東京や大阪の企業・団体の方などに体験してもらいました。プログラムの内容が詰め切れておらず、「質問がわかりにくい」「デザインが良くない」など厳しい意見をいただくことや、「この質問は企業の面接でも使う」と評価をいただくなど、いろいろな方に試していただき、意見を聞いてブラッシュアップする作業を何度も繰り返しました。

 この「人生すごろく」のユニークなところは、参加者それぞれがコマを進めるのではなく、全員が1つのコマを進め、皆で同じ質問に答えて体験を共有する点です。また、その場で話して終わりではなく、「振り返りシート」に記入する手順を設けることで、キャリアカウンセリングにおいて重要な「言語化」ができるように工夫しました。

 この「人生すごろく」で自己分析・自己理解することが、学生の就職活動や進路選択の際のミスマッチや、若年層の早期離職問題などの解消に、少しでもつながるのではないかと考えています。

活動を通してどのようなことを学びましたか?

 まず個人ではなくチームで活動することの難しさ、大切さを学びました。チームで活動するには、メンバーとどのようにコミュニケーションを取っていくかが大切で、プロジェクトを重ねていくうちに「人に自分の考えを伝える」という力が身についてきました。いかに相手に伝わるように話すことができるか、言語化できるか、ということを意識付けすることができました。それは学生同士だけではなく、今回さまざまな学外の方々とのやり取りの中でも勉強することができました。あとこのプログラムでも重要としている「自己開示する」ということは、当初慣れないことでもあり、緊張するものでした。それも上手くファシリテートするなど、場の雰囲気を良くすることで、活発な意見も飛び交うようになり、自己開示できたことも、成長できたところだと思います。この成果をO/OCF-PBLの最終報告会の発表したところ、優秀賞に選ばれました。

 さらに若年向けに開発したこのプログラムについて、「年齢差があってもコミュニケーションが取れ、話しやすい」と評価してもらえたことで、本成果を原案としてJCDAから商品化することとなりました。このような大学発で実社会に通用するプログラムを開発できたことは、私たちの大きな誇りと自信になりました。

皆さんにとって「挑戦」とはなんですか

 O/OCF-PBLの授業を受講し、このチームで活動できて本当に良かったと感じています。当初、周りからは「社会経験がない学生が考えたプログラムは有効ではないのでは?」という意見も耳にしました。そう考えると、社会経験がない学生が他の学生に対して教授するカウンセリング体験プログラムを作ること自体が挑戦だったのではと思います。何も分からない中でしたが、まずは初めの一歩を踏み出してみる、みんなで考え自信を持って形にしていく。そうすることで周りからフィードバックをもらえ、さらに前に進むことができました。本当の自分を包み隠さず出し、失敗や辛い事を乗り越え少しでも前に進んでいく、まずやってみることが自分たちの挑戦であり、成長でした。

 「今」の自分は「過去」の積み重ねである。これが今回の取り組みを通して気づいたことです。ぜひ皆さんも初めの一歩を踏み出してみてもらえればと思います。

2012 年度O/OCF-PBL 2・3 [担当教員:松尾智晶]

課題提供
特定非営利活動法人 日本キャリア開発協会(JCDA) (外部サイトにリンク)
プロジェクトメンバー
春田圭一郎(経営3年次)・近藤一樹(経済2年次)・永井宏和(経済2年次)・浦辻龍一郎(経営2年次)・江頭郁花(経営2年次)・滝本匡啓(経営2年次)・中田美麗(経営2年次)・中村聡(経営2年次)・小寺知里(法2年次)・瀬戸明日香(法2年次)※2012年度 時点


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