交通広告『その挑戦が「型やぶり」』シリーズ4

その挑戦が「型やぶり」

学生を変え、企業を変え、社会を変える

経営学部 大室悦賀ゼミ


 京都市と企業、京都20大学の150人を超える学生が参加する共創ラーニングプログラム「RELEASE;」を発案し、参加する経営学部・大室ゼミのテーマは「社会が抱えるさまざまな課題を、ビジネスを通して解決すること」。多様な社会的課題の解決に取り組む企業から提供された課題を、チームにわかれて何度も議論を重ね、解決策のアイデアを出し合い、プレゼンテーションを繰り返す。良い提案は企業に即採用されるため、企業側、学生側の両者にとって緊張感のある活動となり、かけがえのない成長が得られる場になっている。企業にフィールドワークに行き、スタッフに話を聞くことで、企業の理念や歴史、スタッフの考えなど「企業に恋をする」レベルで深く理解することができるのが、大室ゼミの面白さ。社会や企業と深く関わることで、学生の価値観が変わる。やがてはその変化を企業や社会の変化につなげたい。それが大室ゼミの大きな挑戦である。

大室ゼミのテーマや取り組みなどについて教えていただけますか?

 経営学部・大室悦賀ゼミが取り組んでいるのは、おおまかに言うと「社会が抱えるさまざまな課題を、ビジネスを通して解決すること」です。最近世の中でもよく耳にするソーシャル・ビジネスやソーシャル・イノベーション、ソーシャル・エンタープライズ、CSR(corporate social responsibility=企業の社会的責任)といった分野も、このゼミで扱う領域の一部です。「ソーシャル○○」というとなんとなく献身的なボランティア活動のようなイメージを持たれがちですが、あくまでも企業の本分であるビジネス活動、商品・サービスの提供とさまざまなな社会的課題の解決を同時に行うことです。  つまり、ビジネスの事業活動のプロセスに社会的課題の解決が組み込まれていること、ビジネスの本質が社会的課題解決なのです。

 具体的な活動としては、企業に何らかの課題を提供してもらい、どうすればその課題を解決させられるのかを考え、アイデアとしてまとめていく作業がメインです。課題が設定されるとまず、ゼミ生はいくつかのチームに別れてミーティングを行います。そして、メンバーは情報やアイデアを持ち寄って何度も議論を重ねながら解決策のアイデアを構築していきます。提案内容をじっくり検証し調整を重ねた上で、週に一度、ゼミで集まり各チームが練りに練ったアイデアのプレゼンテーションを行います。

どのような課題に取り組むのですか?

 僕たちの代は、2年次の後半に京都でオープンしたばかりの「パタゴニア日本支社」と「株式会社ラッシュジャパン」の課題に取り組む機会がありました。いずれも社会課題の解決につながるビジネスを展開されており、ソーシャル・ビジネスの世界でもかなり有名な企業です。パタゴニアから出された課題は「潜在顧客である10〜20代の人々にどうやってパタゴニアを知ってもらい、従来のロイヤルカスタマーを育成することができるか」。ラッシュの課題は「ラッシュのエシカルバリュー(環境問題やフェアトレードなど「倫理的に正しい」価値)を、ショップを使ったお客さまに伝える楽しいメディアとは何か」でした。これらの課題に対し、僕たちは3ヵ月をかけてアイデアを練り、プレゼンテーションを行いました。
 この取り組みが面白いのは、ただの課題解決コンペで終わらなかった点だと思います。課題をいただいたとき、最初は、たとえばパタゴニアの場合ならロゴマークの入れ方やサイズ展開など、表面的な部分ばかりに着目していましたが、その企業のことを調べれば調べるほど、会社の歴史や目指していること、スタッフ一人ひとりの取り組みや思いなど、とても大きな背景があることがわかってきました。ゼミ生たちは皆、最初は他のブランドと変わらないアウトドアブランド、化粧品ブランドだと思っていましたが、課題を通してその企業のことがすごく大好きになっていました。大室先生の言葉を借りれば「ぼくたちが企業に恋をした」と。企業のことを深く理解することによって、より中身の濃い提案ができるようになりました。そうして最終的に提案したアイデアは、実際に店舗で活用されていますし、企業の方々とはその後もお付き合いさせていただいています。こうして企業や社会と直接的に関われる点もこのゼミならではの魅力だと思います。

  • LUSH四条通り店でのワークショップ

  • LUSH最終発表

ゼミの雰囲気はどのような感じですか?また、ゼミの魅力を教えてください。

普段のゼミの様子

 教授に怒られることも多いので、課題に取り組んでいる最中は正直ツラいと思うときもあります。大室先生の口癖は「考えろ」。アイデアはしっかり練られているか。論理に矛盾はないか。現実に即しているか。そのあたりはとてもシビアに見られます。僕らはかなり綿密にプレゼンの準備をしたつもりでも、ほとんどの場合は教授の鋭い指摘をたくさん受けて、もう一度やり直すことになります。渾身のアイデアが丸ごとひっくり返されることも当たり前。決してラクではありません。でも、これを毎週繰り返す中で論理的な思考や複眼的な視点、客観性などが身につきますし、振り返るといろいろなものを生み出してきたことを実感します。

ゼミでは他にはどのような活動をしていますか?

 共創ラーニングプログラム「RELEASE;」にもゼミ生が参加しています。これは「新しい経済を牽引するビジネスを通じた社会課題の解決」と「企業や地域の価値を高めること」を同時に追求する企業と京都の大学生が、約100日間をかけ、ワークショップやブラッシュアップイベントを交えながら、未来を変えてゆくためのアイデアを創り出すことを目的としたプログラムです。京都市 大学コンソーシアル京都とも連携しています。パタゴニア日本支社、(株)ラッシュジャパン、(株)フェリシモ、(株)ヤラカス舘、(株)ウエダ本社、(株)坂ノ途中、池内タオル(株)の7つの企業が参画しており、各企業が提供する課題の中から取り組みたい課題を選びます。このプログラムには僕を含めたゼミ生3人が運営面から、それ以外の仲間も課題に取り組む側として参加しています。
 そういう学生をもっともっと世の中に増やしたいという思いからこのプログラムはスタートしました。まだ1回目なので参加してくれる学生を集めるのには苦労しましたが、結果的には京都の20大学から150人を超える学生が集まっています。
 ワークショップでは実際に企業の方にお越しいただき、いろいろな話をお聞きします。最初は「商品のターゲットは?」「マーケティングの手法は?」といった質問でしたが、議論が深まるにつれ「今後あるべき日本の姿は?」「社長の目指す未来は?」というふうに視点がどんどん大きくなっていきました。そういう視点の変化も、学生にとっては一つの気付きになっていると思います。こうした気付きを積み重ねて学生たちの価値観が変わると、企業のあり方も変わってくるはずなんです。「RELEASE;」の取り組みの背景にはそういう狙いがあります。
 従来のインターンシップとは違い、企業側にとって良い提案は即採用いただけることから、企業側・学生側の両者に緊張感のある活動になっています。

大室ゼミにとって「挑戦」とはなんですか?また、挑戦している人にひと言メッセージをお願いします。

 ゼミの取り組みも、「RELEASE;」も、学生の価値観を変えることによって、企業を変え、企業を変えることによって社会を変えていきたいという思いが背景にあります。この挑戦こそが、大室ゼミの最大のテーマだと思います。新しい社会をデザインし、創っていく。ゼミでそういうことに関われるのはとても面白いです。
 何でも、まずは挑戦してみることが大事だと思います。先生の口癖には「考えろ」の他にもう一つ「やってみなはれ」があります。まずはとにかくやってみること。そして、やってみるだけでは意味がないので、行動を自分なりに振り返ってよく考えてみること。その二つが大事だということを大室ゼミで学びました。「まずはやってみて、考えて、そして次の挑戦につなげること」。一つひとつの挑戦は大きな成果に結びつかないかもしれないけど、小さな一歩にはなると思う。それを繰り返しているうちに、気がつくと大きく成長できている。このゼミでの先生とのやりとりも、そんな積み重ねだと思います。

(インタビュー 大室ゼミ 3年次生代表 吉田拓矢さん)

  • RELEASE;ワークショップの様子

  • 池内タオルワークショップ
    池内計司社長の話を聞く

「RELEASE;」

企業×大学 未来共創プログラム
大学生と企業がビジネスによって ともに未来をデザインし、求められる未来を実現するための 100日間のラーニングプログラム「RELEASE;」


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