第3話 ピア・サポーター

元気をもらったから今度は自分が新入生を助けたい

川久保 夏貴(経済・2)

 「僕やります」。昨年冬、「ピア・サポーターにならないか」と先輩から誘いを受けた川久保夏貴(経済・2)は即座にそう答えた。

 ピア・サポーターとは、学生同士の対等な立場からの助け合い活動を担う学生ボランティアスタッフ。昨春から活動を始め、大学生活について相談にのったり、友達の輪を広げる交流イベントを実施したりしている。

 川久保がサポーターに名乗りを上げた理由は二つある。一つは、自身も入学時、サポーターに元気をもらったからだ。履修相談に訪れたとき、サポーターから「一人暮らし?困っていることはない?」とやさしく声をかけてもらった。何気ない会話だったが、一人高知からやってきて心細かった川久保には、気持ちが和むひとときだった。

 もう一つの理由は、真剣に関われる「何か」を探していたからだ。1年次も後半に入り、大学生活には慣れた。その半面、物足りなさも感じていた。高校時代は陸上部だったが、勉強や生活とのバランスを考え、入部はしなかった。

 サークル活動は雰囲気的になじめない。結局どこにも所属せず、大学と家を往復する毎日が続いた。
「せっかくの大学生活。もっと有意義に過ごしたい。ピア・サポーターになって、今度は自分が新入生の力になろう」。そんな気持ちが川久保の背中を強く押した。

気持ちに寄り添い、親身になって話に耳を傾ける

  研修を受け、川久保夏貴(経済・2)はピア・サポーターの一員として学生の相談を受けることになった。

 履修申請期間中は1000件もの相談が殺到。川久保も50件ほどを担当した。なかには人気授業の受講がかなわず失意の学生も。長時間話に耳を傾けると「気持ちが晴れた」と喜んでくれた。「友達ができるか不安」と深刻な面持ちの新入生もいた。地理にも不慣れだったため、地図を広げて住まい周辺のコンビニなどを一緒に探すうちに、笑顔が見え始めた。「自分も同じ立場だったから気持ちはよく分かる。親身になって話を聞くことで不安が和らげばうれしいです」

 相談のほか、川久保は交流イベントのリーダーも務めている。新入生70人が参加し大成功だった催しもあったが、PR期間が短く失敗に終わったものもあった。活動の認知度を上げ、来年はより多くの参加者を確保したいと意気込んでいる。

 現在サポーターは58人。川久保が接した1年次生もサポーターになってくれた。

 この活動を始めてから、物怖じせずに自分の意見を人前で話せるようになった。学部・学年を越えて自身の交流の輪も広がっている。人の役に立つ喜び。川久保はいま大きな充実感に包まれている。

読売新聞朝刊 2010年11月6・7日 掲載

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