国際関係学部教員によるニュース解説「自由貿易をめぐる勢力圏争いーパワーゲームの勝者は誰?」を開催

2021.01.08

2021年1月7日(木)の昼休みに、国際関係学部教員によるニュース解説「自由貿易をめぐる勢力圏争い-パワーゲームの勝者は誰?」を開催しました。今回は、本学部の吉川敬介准教授、山本和也准教授、植原行洋教授が、近年乱立する多国間経済連携協定(EPA)、特にTPP(環太平洋パートナーシップ)とRCEP(地域的な包括的経済連携協定)の設立の背景や内容、経済効果について解説しました。
吉川准教授の解説の様子
吉川准教授からは、まずTPPとRCEPの概要説明があり、TPPに比べるとRCEPの関税撤廃率(品目数)が低く、ルール規定が緩いとの解説がありました。また多国間EPA締結の背景には単に経済的利益追求だけでなく、各国の政治的な思惑があり、TPP/RCEPの成立・運用過程からは中国の影響力拡大やそれをけん制する日本の姿勢が見て取れるとの説明がありました。
山本准教授の解説の様子
山本准教授は、多国間EPAを国内政治と国際政治の観点から解説しました。まず国内では、貿易自由化やルールの統一がすべての人に恩恵を与えるわけではないため、EPAが政治問題化することがあること、さらに国際的な観点からは、各国は自国経済の相対的地位を重視してEPA交渉・締結をすることを説明しました。その上で、TPP/RCEPへの参加・不参加は経済にとどまらず、政治軍事的な考慮も含めて意思決定されていると解説しました。
植原教授の解説の様子
植原教授からは、多国間EPAが日本企業にもたらす恩恵について解説がありました。企業は多国間EPAによって、関税引き下げによるコスト競争力だけでなく、知的財産権などの保護において法的安定性や予見可能性、さらに非関税障壁撤廃による資本の自由移動・一体化等のメリットを獲得するとの説明がありました。また複数の多国間EPAへの加入によって関税障壁が一層低くなり、自由貿易がさらに活性化され一方で、それぞれに異なるルールが存在し複雑化している現状の課題も指摘されました。
今回のニュース解説には30名を超える学生・教職員が参加しました。学生からは、中国のTPP参加をけん制する日本の意図についての質問が出されるなど、闊達な質疑・応答がありました。

今後も、国際社会で起こるさまざまな時事問題をタイムリーにとりあげ、ニュース解説を開催する予定です。
PAGE TOP