第3回目 競馳について

2020.08.27

今回は5月5日に行われる賀茂競馬の中から、競馳に着目しご紹介します。

1日の足汰式にて、走る組み合わせ及び左方・右方が決まります。5日は左方と右方がそれぞれの装束を着て競馳に挑みます。装束は武官の服装を基本としたうえに舞楽の系譜を引いており、左方が「打毬楽[だきゅうらく]」右方が「狛鉾[こまぼこ]」の装束と言われています。

①左方の乗尻〈平成29年5月5日撮影〉
②右方の乗尻〈平成28年5月5日撮影〉

装束や儀式に見られる「陰陽道」の影響

賀茂競馬では祓い清めの儀式が重要視されており、5月1日の足汰式から5日の競馳に至るまでの一連の行事の中で、10回を超える儀式が厳重に執り行われます。特に5日は乗尻による自己祓いの他に、「陰陽代〔おんにょうだい〕」という所役による独特の陰陽祓が行われます。
また、乗尻は冠に物忌札〔ものいみふだ〕をつけており、これは不浄を避けて心身を清浄に保つ意味合いがあります。
このように、賀茂競馬には陰陽道の影響が色濃く残っているのです。

競馳

1組目の番である倭文庄と金津庄は、倭文庄の勝ちとなるのが習わしです。そのため倭文庄が先に1頭で走りぬき、その後に金津庄が走ります。
馬に乗って走りながら、倭文庄の乗尻は後方へ、金津庄の乗尻は前方へそれぞれ向きながら鞭を指す作法があります。
③1組目の番、倭文庄は1頭だけで駆けていく。
〈平成28年5月5日撮影〉
④走り抜ける最中に、倭文庄の乗尻は後方に向けて鞭を指す。
〈令和元年5月5日撮影〉
⑤金津庄の乗尻は前方に向けて鞭を指す。
〈平成28年5月5日撮影〉
2組目以降の番から2頭が走りぬく勝負が始まります。スタート地点から同時に走り出すのはなく、一馬身差で走り出すのが特徴です。
⑥走り出しの様子。この番では、右方が先に走り出している。
【平成26年5月5日撮影】
賀茂競馬では最初にゴールした馬が勝ちとなるのではなく、先馬(先に走る馬)に、追馬(後から走る馬)がどれだけ追いつけるかが勝敗の決め手となります。引き分けの場合は「持[じ]」という判定になります。
また、左方と右方のどちらが先馬または追馬となるかは、前の番の勝敗によって決まり、勝った方が先馬となります。各番の勝負が独立しているのではなく、繋がっています。
⑦横から見た様子。追馬が先馬との馬身差を縮めるか、追い抜くと追馬の勝ちとなる。〈平成25年5月5日撮影〉
⑧観客の眼前を馬が走り抜けて行く。〈平成26年5月5日撮影〉
勝った乗尻は禄[ろく](絹)を授かります。 乗尻は鞭で受け取った禄を頭上で大きく回し、観覧者たちに勝利を示します。引き分けの場合は、左方・右方ともに禄を授かります。
禄を授かった乗尻は御神霊が移された頓宮[とんぐう](仮設の神殿)へ勝利の報告のため参拝を行います。
⑨禄を鞭で回す左方〈平成27年5月5日撮影〉
⑩禄を鞭で回す右方〈令和元年5月5日撮影〉
⑪頓宮へ参拝する右方〈令和元年5月5日撮影〉

謝辞

全3回のweb展示をご覧いただきましたみなさま、ありがとうございました。来年5月には再び活気あふれる賀茂競馬が斎行されますこと、御祈り申し上げます。
また、最後となりましたが、この度web展示開催にご協力いただきました上賀茂神社、賀茂県主同族会をはじめとした関係者の皆様には重ねて心より御礼申し上げます。
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