理学部の新山雅之准教授らが、中間子を束縛した原子核についての実験結果を論文出版

2020.06.12

研究成果

理学部物理学科の新山雅之准教授が京都大学、大阪大学、東北大学等との共同研究でη’ 中間子を束縛した原子核の探査についての実験結果を論文出版しました。

PHYSICAL REVIEW LETTERS 124, 202501 (2020)

掲載論文

Title: Search for η’ Bound Nuclei in the 12C(γ,p) Reaction with Simultaneous Detection of Decay Products
Authors: N. Tomida, N. Muramatsu, M. Niiyama, et al.,

https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.124.202501

背景

我々の身の回りの物質は原子核と電子によって構成されています。電子はヒッグス機構によって質量を得ています。原子核を構成する陽子や中性子(核子)の中にあるクォークもヒッグス機構によって質量を与えられていますが、これだけでは核子の質量を説明することはできません。強い相互作用によるクォーク・反クォーク凝縮が質量生成の起源だと言われています。原子核中ではクォーク・反クォーク凝縮の量が変化するため、核中ではη’中間子(イータプライム中間子)の質量が軽くなり原子核中に準安定に束縛された状態(η’中間子原子核)を作ることが、近年理論的に予想されていました。η’ 中間子束縛原子核の束縛エネルギーを実験で測定できれば、我々の体重など身の回りの質量の起源について迫ることができます。

研究概要

実験は兵庫県にあるスプリングエイトの LEPS2 実験施設で行いました。高エネルギーのガンマ線を炭素標的に照射し、前方に散乱された陽子のエネルギーを高抵抗板検出器で測定しました。エネルギー保存則からη’中間子と原子核とで構成される系のエネルギーを測定しη’中間子原子核の信号を探査しました。さらに、η’中間子原子核の崩壊で生じると予想される粒子をBGO結晶で作られた電磁カロリメータで測定することによって、η’中間子原子核の生成とは無関係な反応を抑制することに成功しました。また、これまではガンマ線ビームによる原子核からのη’中間子の生成率は測定されておらず、η’中間子原子核の生成率の予想に理論的な不定性がありましたが、この実験ではη’中間子の生成率も同時に測定し不定性を抑えることができました。η’中間子原子核の信号は今回の実験では発見されませんでしたが、η’中間子と原子核の間に働く力についての重要な情報を得ることができました。

用語解説

中間子・・・クォークと反クォークが束縛してできた粒子。強い相互作用を受けるハドロンの一種。
スプリングエイト加速器・・・兵庫県西播磨にある電子加速器施設です。スプリングエイト内のLEPS2実験施設では原子核やハドロン、クォークの研究を行なっています。

新山准教授らのグループが開発した高抵抗版検出器
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