経済学部 野田顕彦准教授の論文が,Applied Economics Letters誌に掲載されました。

2020.05.25

経済学部 野田顕彦准教授の論文がApplied Economics Letters誌に掲載されました。

学術誌名 Applied Economics Letters
DOI 10.1080/13504851.2020.1758617
論文名 On the Evolution of Cryptocurrency Market Efficiency


論文概要
2013年のノーベル経済学賞受賞者であるEugene Fama(シカゴ大学教授)が提唱した効率的市場仮説は,現代ファイナンスにおいて極めて重要な位置づけにあります.同仮説に基づけば,「市場における資産価格は利用可能な情報を常に正確に反映して形成」されるため(これを「情報効率的な価格形成」と呼びます),たとえ金融危機などによって大きな裁定機会が生じたとしても,市場参加者(投資家)の売買を通じて裁定機会が消滅するはずです.こうした考えは,ファイナンス研究者の間でも幅広く支持されてきましたが,2008年に生じた世界金融危機を契機に,同仮説の説明力に対する信頼が大きく揺らぐことになりました.そうした背景を受け,市場における資産価格の動向を説明するための新たな仮説として,Andrew Lo(マサチューセッツ工科大学教授)が提唱した適応的市場仮説に注目が集まるようになりました.進化生物学的見地から効率的市場仮説を見直した同仮説では,「市場における資産価格は,投資家の行動バイアス,市場の構造変化,外生的な出来事など,市場を取り巻く状況の変化などを反映して形成」されており,市場における価格形成が情報効率的かどうかもまた通時的に変化・進化する,と主張されています.
近年の計量ファイナンス研究の文脈では,株式市場を中心に様々な資産市場において適応的市場仮説の成否に関する様々な検証が試みられており,同仮説が成立している可能性が高いことが報告されています.本稿では,様々な資産市場の中でも世界的な注目を集めている主要仮想通貨市場(ビットコインおよびイーサリアム)に焦点を当て,同市場における適応的市場仮説の成否を検証しました.具体的には,一般化最小2乗法に基づく時変自己回帰モデルを用いることによって,サンプルサイズに依存しない通時的に変化する情報効率性の度合いを計測しました.分析の結果,(1)主要仮想通貨市場では適応的市場仮説が成立しており,それらの情報効率性は通時的に進化している,(2)ビットコインはイーサリアムと比較して情報効率的な価格付けがなされている,(3)ドミナンス(時価総額割合)や流動性の高さが仮想通貨市場の情報効率性に影響を及ぼしている可能性が高い,ということが明らかになりました.
また,本稿のOnline Appendixでは,最新のデータを用いて新型コロナウィルス感染症(以下,COVID-19と呼ぶ)の世界的流行が主要仮想通貨市場の情報効率性にどのような影響を与えたのかについて,追加的な分析を実施しています.分析の結果,COVID-19の世界的流行による価格急落によって,情報効率性が一時的に悪化したものの,程なくして,それらの情報を的確に反映した効率的な価格付けがなされていたことが明らかになりました.また,仮想通貨市場において過去に生じた様々なショック(たとえば,2014年に生じたビットコイン取引所「マウント・ゴックス」の破綻など)と比較したとき,COVID-19の世界的流行による仮想通貨市場の情報効率性への影響は極めて限定的であったことも明らかになりました.

掲載論文:https://doi.org/10.1080/13504851.2020.1758617
Online Appendix:https://at-noda.com/appendix/crypto_appendix.pdf

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